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スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性

2011年10月18日 09時30分更新

スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性

●スマホ向け放送サービスがCEATECでお披露目

 7月の地上アナログ放送停波により、いよいよ、その“空き地”に新しい放送メディアが誕生する準備が整った。モバイルマルチメディア放送、いわゆる“モバキャス”と言われるスマートフォン向けの放送サービスだ。
 かつてモバイル放送(モバホ)という衛星放送があったが、小型化が難しく普及しなかった。対してモバキャスは全国に設置された放送アンテナを使った“スマホ向けの放送サービス”だ。「それってワンセグじゃないの?」と思うかもしれないが、これがまったく違う。
 ではどんなサービスなのだろうか? 2012年4月からモバキャスを開始するmmbiがCEATECで新サービスの全貌を発表した。その名も“NOTTV(ノッティーヴィー)”。「これまでのテレビとは違う」「ビデオ・オン・デマンドとも違う」と掲げるNOTTVとは、どんなサービスだろう?

 取材をする前、NOTTVには大きな疑問を抱いていた。スマホのもつネットとの一体感のようなものは、高速データ通信で実現するほうがいいんじゃないかな? と思っていたからだ。 mmbiの小牧次郎常務は言う。「通信には通信の、放送には放送の良いところがあるんですよ」。なるほど、では“放送の良さ”とは何だろうか?

mmbi 常務取締役 小牧次郎氏
スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性
1983年、フジテレビジョン入社、編成部などを経て2010年、クリエイティブ事業局統括担当局長。同年、mmbiに常務として出向。Twitterアカウントは、@mmbi_JIROKOMAKI。

●なんで放送? なんで通信じゃないの?

 小牧氏は「通信じゃないNOTTVは、ネット利用の観点から考えると欠点も多い」とした上で、「でもひっくり返して放送じゃなければできない楽しみ方もありますよね」と話した。
 放送で届けられる情報は周波数帯域と時間で決まる。全員が同じ内容しか受信できないのだから、クラウドの中に無限に溜め込まれていくコンテンツには到底かなわない。
 しかし、一方でモバキャスには放送ならではの特徴もある。
「たとえばサッカースタジアムのハーフタイム、みんなが同じ場所で通信を始めると帯域が埋まってしまい、他の試合経過をチェックできません。同じ場所で使える人の数や通信データ量が有限だからです。でも放送波は何百万人、何千万人が同時に受信できる。端的に言うと、これが放送の良さなんですよ」。

●SNS参加で番組を共有。これがNOTTVの魅力

 小牧氏は「レコーダーで録画して好きな時間に観るのは確かに便利です。でも同じ時間を共有することの楽しさも、それとは別に存在します。スポーツ中継なんてその典型例ですね。同じ試合をみんなで見ながら、ツイッターでつながった仲間と試合の経過に合わせて一喜一憂する。そんな“場の共有”を視聴者全員が楽しめます」。それがNOTTVの最大の魅力だと話す。
 スポーツ中継はもちろん、典型的な例といえるだろうが、ドラマやアニメだって同じことが言えるだろう。放送波の規模でこれができれば、バーチャルな巨大空間でライブを観るような新しい感覚になるはずだ。
 小牧氏によると、NOTTVはサービス開始時にツイッターにまず対応、その後は代表的なSNSにも対応予定という。何人集まってもコミュニケーションができることを追求していく。

番組を観ながらツイッターでつぶやける!
スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性
放送中の番組を画面上部に、下部分にはツイッターを表示できる。番組を観ながら仲間どうしでつぶやいて、視聴体験を共有できる。

 テレビ番組をみんなで観る楽しさに加え、ワンセグとの違いでも、小牧氏はクリアな答えをもっている。地デジ放送を、そのまま放送するのがワンセグ。NOTTVは放送されるすべての番組が、双方向でのコミュニケーションを前提に、いかに双方向で楽しむかを追求している点が違うという。
 しかも使い方はとても簡単。何の設定もなく、NOTTV対応のスマホでアプリを立ち上げれば、すぐにテレビが映る。地域設定が必要なワンセグよりも簡単なほどだ。SNSに接続したい場合はアカウントを追加するだけで済む。この手軽さは、通信系サービスとの大きな違いと言えるだろう。

すぐにテレビが観られる
スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性
アプリをクリックするとすぐ番組画面になるのがテレビっぽい。
番組表をスクロール
スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性
番組表の画面はスクロールで動かして知りたい情報に移動できる。

●蓄積型コンテンツは放送連動データも配信

 さらにNOTTVには、従来の放送やネット動画サービスにはない特徴がある。それが“蓄積型コンテンツ”と言われるもの。放送局側から端末にコンテンツを“プッシュ”、すなわち自動的に送り込んでおく機能だ。
 NOTTVの場合、2つの映像放送チャンネルに加えて、データをプッシュする蓄積型コンテンツ用のチャンネルがひとつ用意されている。ここではデジタル放送の映像データの代わりにデータが端末に降ってきて、SDカード内に蓄積されていく。
 放送した映像コンテンツを生で観ることができない人向けに、メモリカードの中に送り込むといった使い方もあるが、それではダウンロード型、ストリーミング型の映像配信と大きく変わらない。小牧氏は“放送”という特性を活かしたコンテンツ配信を考えているそうだ。
 たとえば旅番組を観ている裏側で、紹介されている旅館やレストランのクーポン券がプッシュされてきたり、番組と連動した電子雑誌が配信されてくるといった仕掛けがあるという。
 また定期刊行の新聞や雑誌は、NOTTVを通じて購読でき、ある時間になるとバックグラウンドで自動的にコンテンツを受信したりすることも可能だ。

デモアプリによるコンテンツ一覧画面
スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性
“蓄積型”放送の番組なら、スマホ内に保存しておいていつでも観られる。

NOTTVの放送形態
●ライブ放送
放送中に通信回線を使ってSNSと連携できる。画質はDVD並み。
●蓄積型コンテンツ
番組のデータ配信のほか雑誌・新聞データなども配信。HD画質。

●ネット接続率が100パーセントになることで、新しい双方向番組ができる

 さて最後に小牧氏にNOTTVの未来について、このプラットフォームをどう発展させていきたいかを聞いてみた。
「今はメディアの激動期。クラウドの登場で映像配信は劇的に安くなったし、楽しめるコンテンツ数も驚くほど増えています。しかし、放送の“無制限に一斉同報”できる良さは失われません。NOTTVはワンセグの画質に比べるとかなり高画質。蓄積型はHD画質にもできますし、放送もDVD並みです。しかもスマホだから最初から視聴者が100パーセント、ネットでつながっている。今までこんなメディアはありませんでした」
「今までとは番組制作のしかたがまったく変わります。視聴者とのコミュニケーション制限がない番組が企画できる。これまでアイデアは出ても、コミュニケーションの制限があって実現できなかった双方向番組が、NOTTVならできる。長い間、放送事業にかかわってきて、その部分には特に自信が生まれてきています」
 ここまで言われて、どんな番組が登場するのか。放送業界が見せる“本気のインタラクティブ映像コンテンツ”が詰まったNOTTVが始まるのは来春。楽しみに待ちたい。

●関連ページはこちら
NOTTVスペシャルサイト
小牧次郎常務のツイッターアカウント @mmbi_JIROKOMAKI
mmbiの公式ツイッターアカウント @mmbi_PR

 

スマホ向け放送局“NOTTV(ノッティーヴィー)”の可能性
NOTTVの番組イメージがわかる特別サイトが、10月31日までの期間限定で公開中。Twitterアカウントは、@mmbi_PR。
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