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【Thanks a lot, Steve. 追悼スティーブ・ジョブズ】ありがとう、スティーブ。そして、スティーブに負けるな!

2011年10月11日 09時00分更新

この追悼記事は週刊アスキー10月25日号(10月11日発売)に掲載される内容を再構成したものです。
【Thanks a lot, Steve. 追悼スティーブ・ジョブズ】ありがとう、スティーブ。そして、スティーブに負けるな!

 あなたにいちばん最初に会ったのは、マーケティングVP(副社長)としてアップルに入社するときでした。ティム・クックやフィル・シラーとの面接を終えて、最終面接がスティーブ。当時の日本は、銀座のアップルストアがオープンした直後でiPodもそこまで知名度を得てなかった。「日本をどうしたらいい?」と聞かれたときに、iPod miniを使ってファッションアイテムとして提案していくと話したことを今でも覚えています。一点集中突破で日本におけるアップル・ブランドを再構築するべきだと。

 そのときプレゼンに使っていたのは、ソニーの超薄型ノート『VAIO X505』でした。「日本市場でも同じ薄いのを出しなよ」と話したら、「ドライブも付いてないそんなマシンはダメだ」とむげに返された。でも、その4年後にMacBook Airを出しましたよね。普通、アップルが他社のパソコンを比較に出す場合、デルやHPが多いんですが、そのときだけVAIOを例に出していた。昔、僕が話したことが頭の中に入っていて、そのヒントになったんじゃないかと今でも思っています。

 あなたは明確で、無駄なことを話さない人でしたね。入社後、スティーブを囲んで行なう毎月定例のマーケティングのエグゼクティブ・ミーティングに出席した際、フィルは「本社以外の人間でこの会議に出るのは世界でお前が初めてだ」と言ってました。各製品、市場のアップデートをした後に、人数を絞ったクリエイティブ・ミーティングにも出席していましたが、あなたはその場で広告のクリエイティブから製品のパッケージまで、多岐に渡って細かく指示を出していましたね。会議ではいつも鋭く指摘してきて、答えられないと「ダメだな」と返す。そのくせ、人をその気にさせるのが上手。iMac G5のときは、確か『Mr.インクレディブル』のポスターを持ってきて、「この主人公のような感じで」と指示していた。iPodでは「シンプルがいい」と強調して、すごくシンプルなシルエットCMができ上がった。

 思えば、僕が最初に買ったパソコンは、Macintosh SEでした。もう20年前の話。そこからあなたの成し遂げた仕事はすごくて、疑う余地がない。亡くなられたのはたいへん残念なことですが、今は悲しいというより悔しい気持ちでいっぱいです。もちろん尊敬もしてます。でも、僕はやっぱりあなたのライバルで、負けないようにイノベーションを生み出していかなければいけない。

 僕は元々ソニーに勤めていました。その創業者である井深大さんが記した設立意趣書には、「他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行なう」という文があります。僕もそのDNAを色濃く受け継いだひとり。そして、スティーブが育てたアップルも、その境地を体現した企業です。翻って日本を見てみれば、焼き直しの製品やサービスが目立っています。まさに今、日本人は奮い立ってイノベーションを起こしていかなければいけない。ぜひあなたをライバルとする挑戦者が世界を変えていくところを、天国で見ていてください。

前刀禎明
元アップルコンピュータ代表取締役 兼 米アップルコンピュータ マーケティング担当バイスプレジデント

 

 

●関連サイト
【追悼】「スティーブ・ジョブズ」の軌跡(ASCII.jp特集)

CEO スティーブ・ジョブズ - MacPeople Web
Mac People12月号増刊 CEOスティーブ・ジョブズ

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