リアルな操作感と、実車さながらのエンジン音などサウンド面にこだわったXbox360のレーシングシミュレータ、Forzaシリーズに10月13日、最新作『Forza Motorsport 4』が登場する。
Forza4の開発を手がけるスタジオ、Turn10の日本人スタッフである谷口氏に、Forza4の魅力とこだわりについて語ってもらった。
↑Forza Motorsport 4の開発スタジオ、Turn10のシニアゲームデザイナー谷口潤氏。1時間以上のインタビュー時間があったが、「それでも説明し足りない」というのは、Forza4に込めた熱意と、何より収録コンテンツや新機能が大ボリュームであるためだ。 |
●スーパーカーをまるで所有しているかのように感じられる『オートビスタモード』
谷口「2005年にForza1を出してから2年ごとに新作を出してきましたが、2011年10月13日、ついに『Forza Motorsport 4』に発売することになりました。あらゆる角度で車を楽しんで頂けるゲームになったと自負してます。
マイクロソフトが新たに打ち出した新しいゲームへのアプローチとして“コントローラーを使わずに体でゲームとインタラクティブに楽しめる”ハード、『Kinect』。それを車のゲームでどのように取り入れるのかが、Forza4の大きな取り組みの1つでした。
それが2010年のE3から紹介しているオートビスターモードです。Kinectを使うことで、(まるで実車を眺めるかのように)下や横から見たり、車の内部に乗り込めるようになっています。ブレーキディスクの穴が何個あるのか、タイヤのサイドウォールの曲線までもが、洗練されたグラフィックにより、リアルに再現することができました。車がどんなスペックを持っているのかなども説明してくれるので、全体的に車を体験する喜びを見いだせる作りになっています。」
このモードは、E3 2011でもデモされていたもの。Kinectを使うことで、テレビに近づくと車両がアップになったり、横を覗き込むようにするとクルマの側面に回り込めたりといったように、体の動きを捉えて、ガレージに置いたクルマを隅々まで楽しめる。
グラフィックへのこだわりはすさまじく、上記のようなブレーキディスクの穴が見えるほどまで近づいても、粗いビットマップが見えるようなことがなく、破綻なく描写されていることがわかる。
オートビスタモードではカメラ撮影もでき、forzamotorsport.net経由でダウンロードして、PCの壁紙などに使うこともできる。ちなみに、何車種でオートビスタが楽しめるか、ということについては、現時点では未公表とのことだ。
↑オートビスタモードのデモ。このように、かがむようにすると、カメラの目線自体も低くなる。精度の高い動き認識は、Kinectのモーションキャプチャ機能によるものだ。 |
↑さらに側面を覗き込むようにしたあと、屈んで画面に近づくと、ここまでのアップになる。この状態でブレーキディスクを見ると、ディスクに穴が空いていることまで見える。 |
↑そして「あ! エンジンがない!」というフェラーリの持ちネタを披露する谷口氏。フェラーリ 458Italiaはミッドシップなので、後部にエンジンがある。もちろん、リアのエンジンフードを開けて、美麗なエンジンを眺めることもできる。 |
●Kinectで音声認識。空中ハンドルでドライブ
谷口「Kinect本体が、コントローラーにもなります。まるで見えないステアリングを握ったような感覚で楽しめる“バーチャルハンドル”モードです。
ブレーキ、アクセルは自動アシストなので、今までForzaを触ったことがない人たちでも簡単に遊べることを狙っています。実はこのモードではバックギアすらありません。(前方に走れなくなった場合は)自動的にコースに戻してくれるわけです。
もっとハードにゲームをしたい方は、従来どおりコントローラーやハンドル型コントローラーでやって頂く形になります。
Kinectでできることを4点言うと、首や体を任意の方向に向けるだけで視点が変わるヘッドトラッキング。ボイスによるハイパーリンクによって多数の機能に一発で飛べるようになっている音声認識機能。そして、オートビスモードとバーチャルハンドルです。」
このバーチャルハンドルは、TGS2011のマイクロソフトブースでも実演されていたモード。ブレーキやアクセルは自動アシストで、繊細なハンドル操作も要求されない、お気楽モードだ。レーシングシミュレーター好きの人には、Kinectを使ったヘッドトラッキングが注目。
この機能は、首を左右にひねる or 体を傾ける(両方の設定が選べるとのこと)ことで、カメラをパンしてサイドウィンドウの様子を見られる機能だ。
↑バーチャルハンドルを操作中。谷口氏の手の角度と、画面上のハンドルを握る手の角度がシンクロしていることに注目。 |
●ゲームの端々に散りばめられたテレビ番組“TopGear”とのコラボ要素
Forza4では、海外の人気カーレビュー番組“TopGear”とのコラボが端々に散りばめられていることも特徴だ。
谷口「TopGearのジェレミー・クラークソンの声で、クルマの毒舌紹介コメントをテレビ番組さながらに話してもらったり、TopGearテストコースをゲーム中にも導入するなどのコラボレーションも実現しました。」
TopGearとは、英国BBC放送の人気自動車番組で、日本で言えば(歴史が長いという意味でも)カーグラフィックTVが近いだろうか。ただし、カーグラの上品なテイストとは180度違って、毒舌コメントにクルマを極限までいたぶるバカ企画にと、なんともアメリカン人好みなテレビ番組だ(ただし放送はイギリス)。
TopGearコラボ企画の数々は、ゲーム内に特設コーナーなどがあるわけではなく、ゲームを彩るさまざまな要素として散らばっている。番組をまったく知らない人でも、違和感なくゲームとして楽しめるつくりになっている。
↑TopGearコラボ機能のひとつ、“TopGearライバル”。TopGearのテストコースを使い、TopGearチョイスの車種で仲間うち最速タイムを競う。 |
●仲間と遊び尽くせるコミュニティ機能
谷口「Forzaはひとりでプレイするだけでなくて、たくさんの人達と楽しんで欲しいんです。コミュニティーのメニューにあるのがすべて人とつながるソーシャライズの機能になります。
オンラインモードもここからプレイできます。オンラインで出来ることは、従来のForzaは8人対戦でしたが今回は16人対戦になってます。ちなみに、TopGearでもあった“カーサッカー”もあります(笑)。
ほかにはユーザー作成のレースですね。友達同士で楽しむのが目的ですが、今回からは、プライベートロビーを一発でパブリックに変えて、世界中の人を呼んで遊ぶこともべます。Forza2にあったロビー機能(Forza3では仕様が変わってなくなった)を、パワーアップさせて導入したイメージです。ロビーには、名前も付けられるようになりました。
コミュニティーの新機能“マイクラブ”は同好会のようにクルマ好きの人たちが集まって楽しむものです。クラブのタグが設定できるようになっていて自分たちだけのタグを作って名乗ることができます。
Forza4にはプレイヤーカード(編集部注:モンハンで言うところのギルドカード)を用意してまして、実績を解除するとバッチをもらえるような形にしています。どのクラブに入ってるのか、誰がクラブのリーダーなのかがわかったり、どんな車が好きなのかが一発でわかるようになっています。
クラブに参加すると共有ガレージを持て、他の人が獲得したクルマをクラブの車両として共有できます。クラブに所属している人全員が同時に使用できます。ただし、車を登録した人がクラブからいなくなった場合には、その車両は使えなくなります。
ライバルと言う新しいモードは、自分の仲間うち(フレンド)たちと成果を競うモードです。チャンネルを7個用意しました。10個のイベントがあり、ドリフトやオートクロスなどのテーマが設けられています。TopGear番組で芸能人がチューニングなしでひとつの車を運転してタイムを競い合う、人気のコーナーを模したものもあります。
1回走ると自分のゴーストデータが登録されて1番タイムが近い友達とマッチングされ、勝ったら懸賞金がもらえます。もちろん、世界中の猛者をピックアップし対戦することも可能です。ランキングの相手が早ければ早いほど、もらえる懸賞金も高くなります。
車の種類はチャンネルによって変わります。参加条件がそれぞれにあり、自分のチューニングした車が持ち込むことも特定の車のみで走らせることも可能です。」
↑コミュニティのトップ画面。ゲーム中で、おそらくもっとも頻繁に目にする画面の1つになるはず。“マイクラブ”機能もココからアクセスできる。 |
●ペイントや物理演算の強化は?
Forzaシリーズは、レーシングシミュレーターとしてイトーが個人的にも大変気に入っているゲームの1つ。リアル指向のコンシューマーレースゲーとして、本分の“リアリティの追求”につてのブラッシュアップはどうなっているのだろうか。
谷口「パーツのアップグレードでは、ドラッグレースのタイヤが追加されています。具体的には、タイヤのコンパウンドにストック、スポーツ、レース、ストリート、ドラッグの5種類を用意しました。
前作まではミシュランさんやトーヨータイヤさんなどからデータを貰っていたのですが、今回はタイヤのデータをピレリタイヤ1社にし、我々が欲しいデータを、欲しい形で頂くことができました。これを、そのまま物理エンジンに組み込んでいます。
コンパウンドを変更したときの生のデータを貰ってるわけで、タイヤのグリップ感の挙動を前作よりもさらに追求しています。
ペイント機能はおなじみのバイナル(ペイントをつくるための基本図形)があり、色々なものを組み合わせて絵を描けるのは従来どおりです。
今回の注目は、Forza3のプレイヤーさんたちから要望をもらった、新しい形のバイナルを複数取り入れたことです。これは、“コミュニティーバイナル”としてリストに加えてます。
ちなみに、Forza3で皆さんが一生懸命つくって下さったステッカータイプのバイナルデータに関しては、Forza4へと引き継げるようにしました。ただし、クルマ全体をペイントしたデータについては、これはクルマ自体のディテールが向上しているため、どうしてもうまく再現できず、採用を見送りました。」
――ピレリから提供されたタイヤの挙動再現以外の部分で、物理演算まわりでブラッシュアップされた部分は?
谷口「PI(パフォーマンスインデックス=クルマの速さの指標値)の再調整で、よりフェアなレースができるようになったことがまず1つです。500台以上のクルマを収録してますが、忠実な物理シミュレーションでブラッシュアップして、より整合性のとれたデータをお届けします。
また、コースの路面に細かな凸凹の概念を導入したことも、リアルさを追求する上での変更点ですね。ラグナ・セカのような実在のコースは、プロのレーサーからアドバイスを聞いて、それをもとに制作しています。
対して、富士見街道のような模範とするものがないオリジナルのコースについては、スピード感や恐怖感を強調するというブラッシュアップが効果的に働いています。」
――リプレイのカメラワークについてはどうですか?
谷口「もちろん、Forza3よりもさらに良くなっていますよ」
レースゲー好きにとっては、新しいタイヤ挙動と、路面の細かな凹凸の概念やスピード感の演出が気になるところだ。インタビューの終盤で、スピード感演出とリプレイについては実機の動きを見ることができた。
Forza4の新しいコースである“アルプス”(このグラフィックもすばらしい)での走行デモだったが、ル・マンカーでロングストレートを疾走すると、ある速度域を超えたところでフロントフェンダー周辺が小刻みにゆれる、視界が狭まる、という演出をしているようだ。
フェンダーの揺れは、見たところ単純に揺れてるのではなく、物理演算と連動した自然な揺れのように見え、良好な臨場感の演出に一役買っていた。
リプレイについては、Forza2、3と徐々によくなっているものの、シリーズ通しての課題ともいえる。こちらについても、遠景からのダイナミックなカットが多くなるなど、実際のテレビ中継に近い感覚のカメラワークになっている。
さて、Forza4では、Fanatec社から高級仕様のハンドルコントローラーの日本発売が決定しており、レースシミュ好きの人はその操作感も気になっているハズ。イトーは個人的にもElite Wheelを買うべきか(6万円!!)ずいぶん悩んでいる。こちらについては時期を改めて、発売日までにレポートするつもりだ。お楽しみに!
↑基本的に、この画像で名前がついているものはすべて別売。最高級仕様の『CSR Elite Wheel』は6万2990円、ノーマル版の『CSR Wheel』は3万1490円。これに高級仕様のペダル『CSR Elite Pedal』(1万3650円)もしくは、ノーマル版の『CSR Pedal』(6825円)を組み合わせて使うことになる。シフトも別売で、5250円を予定。 |
↑E3 2011のプレス向けForza4イベント展示されていたCSR Elite Wheelの実物。上部が透明なのは展示用ではなく実機もこうなるようだ。ハンドル部分の造形はノーマル版もElite版もあまり変わらないように見えるが、Elite版では内蔵モーターが2機になるなど、中身は別モノらしい。 |
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