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【ABC2011夏】Palmの神様×アスキー総研所長の対談にスマホの歴史とAndroidの弱点を見た!

2011年07月19日 13時15分更新

ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演

  Androidのお祭り『ABC2011 Summer』(Android Bazaar and Conference)の講演の1つでありながら、『Palm → BlackBerry → iPhone → Androidの次はドレだ?』という野心的なタイトルで始まったこの講演。
 アスキー総研遠藤諭とともに登壇した山田達司氏といえば、'90年代後半〜'00年代前半に一世を風靡したPDA『Palm』で独自解析による日本語化OSや、ハックを多様したさまざまな支援環境開発で、Palmの神様と呼ばれた人物だ(私自身もその節は大変お世話になりました)。

 Palmというプラットフォームが栄華を極めたのはもう10年以上前の話。ということで、まずはPalmを含めて、スマホ以前の“PDA”(電話機能がないスマホのようなもの)の歴史を紐解くところから講演はスタート。
 山田氏のスライドでは、“栄光の歴史”と呼べるのは'96年に登場した初のPalm機『Pilot 1000』を皮切りに、2000年のソニーCLIEシリーズ発売あたりまでの6年ほど。
 その後2002年のIBMの撤退以降、さらなる身売りの繰り返しと、パートナー企業の離脱、製品ラインナップの縮小を繰り返す“凋落の歴史”は、輝かしい成功とのコントラストとあいまって、改めて見ても印象深い。

Palmプラットフォームの特徴まとめ
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
Palmの栄光と凋落の歴史 '96-'11
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演

  確かに、'00年当時のPalmの勢いはまさに今のAndroidのように希望とパワーに満ちていた。当時Palmを買い求め、あるいは憧れていた人たちは、もちろん私も含めて「Palmはこのまま行っちゃう(成功する)んじゃないかと思った」(山田氏)ものです。

 ちなみに、Androidの市場属性について、アスキー総研の大規模調査レポート『Media & ContentsSurvey』(MCS2011)では、次のような年齢分布になっている。2010年11月時点と少し古く、人口における世代構成比率を適用していない数値ではある点に注意して比較していただきたい。

ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演

  おそらく'11年春モデル以降は大きく変化しているはずで今月のMCS調査では違った結果が出ると思われるが、iPhoneとAndroidの購入意向は、男女比に明らかな差異が見られる。
 Androidは30台後半の男性が突出していること、購入意向者の好きなコンテンツのトップは“ガンダム”など、昨年末時点では男性中心のコア層、ガジェット好きたちから強く支持されている印象が強い。

 Androidの本格的な立ち上がりは今、2011年からなんだと思わせられる(ちなみにこのグラフと分析に来場者は爆笑していた)。


●Androidが時代遅れになるかもしれない弱点は“ネットとの同期”!?

  講演はこの後、遠藤所長が「昨晩つくってみた」という『モバイルの進化系統樹』(写真)などを交えつつ、会場を爆笑に巻き込みながら、脱線を繰り返しつつ進行していった。

モバイルの進化系統図Ver.0.01
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
↑かなり細かく書かれている。ちなみに、遠藤所長曰く、精度を上げた改変版を制作中とのこと。完成次第、ここでも図版を差し替えの予定。どう変わるのでしょうか。
PDAという概念をつくったApple『Newton』
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
↑「PDAの先駆け。・・・・・・なんですが実際のモノは結構悲惨で。新しいメモをつくるのに、だいたい5秒くらい。それも何回に1回成功すればの話で、結局、メモ1つつくるのに何十秒かかる、という世界。左にあるのはシャープ製のバージョン」(山田)
Newtonはギャラタブとサイズがほぼ同じ!?
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
↑遠藤所長が本番直前に気づいたこと。画面サイズはまったく違うが、NewtonとGalaxy Tabは、実はサイズが結構近い。iPadの7インチが発売されることがあれば、Newtonステッカーを貼るガジェット好きは結構いるかも!?

  楽しくも微笑ましい脱線の具合についてはUstream放送のアーカイブで確認していただくとして、モバイルの進化系統樹のトークの中で言及されて印象的だったことがいくつかある。

 まず、PDAの歴史を俯瞰して見たときに、結果的に消えてしまったとはいえ、Palmの重要性はやはり高い。それどころか、結構イイ線までは行っていた。
 Palm Pilot→Workpad→'00年ごろのVisorなどの互換機系発売はまさに“Palmのピーク”だったわけだが、この時期すでに、拡張モジュールの形でGSM通信(含む電話)機能を追加する『Visor Phone』を発売している('00年12月。価格は本体250ドル、モジュールだけで500ドルの計750ドル!)。「早い時期にスマートフォン、PDAを“クラシックPDA”にならしめたのは、Palm」(遠藤)。
 この流れを組むPalm社の『Treo』なども北米ではそこそこ人気があったと記憶している。つまり、Palmは進化の方向感としては本質的には正しかった。

Palm Treo
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
↑シリーズとしては2008年まで存続。ただし、最終年の2008年にはWindowsMobile搭載版も登場するなど、端末の方向性が相当混乱していた印象を受ける。

  また懐かし系のデバイスには、いくつかゲーム機型の機種(Palm OS搭載機の『Zodiac』や、Windows CEベースの『Gizmond』など)がある。これらの存在にもある種の必然があるという。
 山田氏曰く、「PDAの使い方に困ると、必ずこれはゲーム機だ!とか(メーカーは)言っちゃうんです。」その理由は、「(略)歴史的に言うと、こういったモノをどういう名前で売るのかというのは、非常に難しい。昔はPDAと呼んで個人の情報を管理しましょう、と言っていた。でも“PDA”って直感的にわかりにくい。通話機能が入って“携帯電話だ”というのはわかりやすいけど、“PDA”ではどう人生が変わるのか、生活が便利になるのかわかりにくい」。

Windowc CEベース『Gizmondo』
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
↑ゲーム機として、2005年3月発売。400MHzのARM9プロセッサ、GeForce 3D 4500搭載。RAMは64MBだった。
Danger社 『Hiptop』=『T-Moile Sidekick
ABC2011s 山田達司×遠藤諭講演
↑「Android系の方々に見て頂きたいのは、この時点ですでに“Back”ボタンがあること。これをつくっていた会社(Danger社)をマイクロソフトが買収し、CEOであったアンディ・ルービン氏(現Google副社長、Android担当)がやめて、Android社をつくったわけです」(遠藤)

 トークの終盤には、Androidの弱点にも言及している。可能性として考えられるのは、“同期”という点にあるという。
 Palmに見られるように昔のPDAは、PCとの同期が前提だった。そして今のAndroidは“ネットとの同期”が前提になっている。
 PCとの同期が古臭くなったように「ネットとの同期という概念が古臭くなる時代が来るのではないか」というのが山田氏の指摘だ。「同期というのは、そもそもネットワークがプアであるとか、端末が完全に切り離されて動かなきゃいけないといったことは、あくまで現在の技術とのバランスの上で存在しているもの」。

 なお、講演の模様のアーカイブは、1時間15分ごろから。懐かしのガジェットの数々を楽しんでください。

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