新VAIO Zの開発コンセプトやこだわりのポイントについて、開発に携わったソニー 井口昭氏、金森伽野氏、只野順一氏の3名にお話を伺った。
(聞き手 週刊アスキー編集部ジャイアン鈴木、桑野朋子)
DIMMスロットすら入らない驚異の集積度!
桑野朋子(以下、桑野) メモリーも特別で、最初に選んだものから換えられないですよね?
井口昭氏(以下、井口) 薄型化のためです。通常のSO-DIMMスロットは入る場所がないので、まずSO-DIMMの採用は見送りました。その上で、限られたスペースの中で、かつ最大8GBまでのメモリーを搭載するため、今回の専用メモリー基板を起こしています。別基板とすることで、その表裏を有効に利用して、最大8GBの搭載が可能になっています。また、デュアルチャンネル構成とするため、どのメモリーサイズを選択されても、必ず2枚のメモリー基板が入っています。ヘビーユーザーさんの中には、自分で増設できることを期待される方がいらっしゃるとは思いつつも、割り切らさせていただいたところです。
メモリーは完全専用品で増設不可 |
OS起動時間13秒を実現した秘策とは?
ジャイアン鈴木(以下、鈴木) バイオ史上最速の起動時間13秒を達成するにあたって、もっとも寄与したものはなんでしょう?
井口 BIOSそのものの高速化の寄与が大きいですが、ほかにもいろいろな常駐プログラムの遅延読み込みとか、総合的に効いているという表現が正しいと思います。
金森伽野氏(以下、金森) 補足しますと、一個一個積み上げている部分もありますし、ストレージの高速化も貢献しています。あと、高速起動化の設定による効果も期待できますね。
井口 高速起動化の設定を有効にすると最速で約13秒で起動します。BIOSは起動時にUSBのドライブから起動する機能を持っていますが、そのスキャンをはずしたり、起動時のVAIOロゴの表示をスキップしたりと、とにかく早く起動するためのオプションを今回追加しています。
桑野 デフォルトだとどのくらいなんですか?
井口 デフォルトだとプラス1、2秒ぐらいですね。
桑野 もっと短くできますか? 10秒切るとか(笑)。
井口 頑張ればできます(笑)。突き詰めれば、さらなる高速化の余地はまだ若干あるかと思いますが、今回できることをやりきった成果が13秒です。
鈴木 今回、Power Media Dockというソリューションがあって、内蔵GPUと外付けGPUがありますが、どのようにアプリケーションを使い分ければいいのかという指針はありますか?
金森 Fn+F7を押すと、各モードの切り替えウインドーが表示されるのですが、そこでこういう用途で使うときはこのモードが有効ですということをできるだけ記載しています。外部ディスプレーでゲームをするときにはPower Media Dock搭載のいいGPUを使うとか、プレゼンのときには本体だけで十分とか、そういう使い分けはある程度わかっていただけると思いますね。
桑野 ちなみにPower Media Dockの電源はなんであんなに大きいんですか? 一緒に持ち歩くのは若干厳しいと思うのですが。
井口 Power Media Dockに積んでいるGPUは、大変ハイパフォーマンスなもので、このクラスのGPUは、こんなに小さいノートパソコンには普通はいらないくらいです。Power Media DockにつなぐACアダプターは、このGPUに加えてPower Media Dock本体の電源も供給します。さらに、USB経由でPC本体の電源も供給するのです。そのため、全部カバーすることを考えると、やはり120ワットクラスのACアダプターが必要になってしまうんです。
ファンと排気口がハイパワーを物語る |
ハイパフォーマンスGPU選定の経緯
井口 使い方としましては、Power Media Dockはつねに机の上に置いていただき、大きいACアダプターもそれにつないだままにしていただきます。そうすれば、外から帰ったときにケーブル一本をポンッとつないでいただくだけでパワフルな環境に変身しますし、逆にはずしていただくとモバイルの状態になるわけです。
金森 そうです。ですが、そうなると、持ち歩きの時に困るので、もう一個小さいACアダプターを同梱して、本体と一緒に使っていただくというソリューションを用意しているわけですね。
桑野 GPUに『RADEON HD6650M』を選んだ理由は?
井口 実はサンディーブリッジの内蔵GPUも相当性能が上がってきているので、エントリーからミドルクラスのGPUを搭載しても性能アップには寄与しません。GPUを外に出しているからこそ、ハイエンドクラスのGPUを搭載するキャパシティーがありますので、明確にその差を味わっていただこうと思いました。実際内蔵GPUよりも倍ぐらいのパフォーマンスが出ています。
桑野 もっとハイパフォーマンスなGPUを載せるとか?
井口 そうなると今度はもっとこれ(Power Media Dock)を大きくしないといけなくなってしまいます。今回、PC本体だけではなく、Power Media Dockもコンパクトにするということを狙いました。PC本体とPower Media Dockを並べていただくとわかりますが、高さは一緒です。すっきりと使っていただけることを考えました。
桑野 ZシリーズにGPUが載ってから、モバイルノートに外付けGPUが載るというのはトレンドになってきていると思いますが、大体GPUが若干残念な感じなんですよね。あってもなくても変わんないくらいって感じのGPUなので。
井口 そこは難しいところですね。説得力のあるGPUとなるとどうしてもモバイルの筐体には入りきらないものになってしまいます。
鈴木 今回本体と合わせて4画面に出力できますが、実際しないと思うんです。「Power Media DockにはHDMIとRGBの両方が必要だし、本体にもディスプレー出力必要だよね」……というふうに作っていったら、なんとなく4画面出力できるようになっちゃったんでしょうか?
井口 いや、そんなことないですよ!(笑) 最初の検討段階でこうゆうことも理屈上できるということがわかった時点から、使い勝手のいい機能になると思いましたので、ちゃんと作り込んで仕様に組み込んでいます。
金森 思っていた以上にこの機能に対する評価がありまして、実際利用される人は多いと考えます。画面切り替えのユーティリティーも作り込んでいますので、ぜひともこの機能を活用いただきたく思います。
ノートで4画面環境は驚異! |
新Z開発メンバーがお勧めの構成は?
鈴木 皆さん自身が新VAIO Zを購入するなら、どのような構成にしますか? 私はPower Media Dockを買うかどうか悩んでいます。ぶっちゃけますと、VAIO Xの後継マシンとして使うなら、Power Media Dockはいらないかなーと(笑)。
井口 Power Media Dockはコンセプト的には間違いなく必要不可欠なものです。とは言えあえてCTOで選ばないという選択肢を用意しているのは、そういったお客様の要望も想定しています。単体でもZは自信を持ってお勧めできるモデルであることは間違いないんです。
金森 私は外部ディスプレーを結構使うので、ほしいなぁと思っています。ただ、ブルーレイにするかどうかは予算との兼ね合いですね。お客様によっても違うでしょう。個人的にはノイズキャンセリングヘッドホンも結構便利でお勧めです。ノイズキャンセリングヘッドホンは最初から選んでおかないと、この機能が入ったセットになりません。
鈴木 最後の質問です。新VAIO Zシリーズを購入するのは、どのようなユーザーだとイメージしていますか?
金森 PCをすごくハードに使う人。やはりいいパーツを使っているだけに、どうしても値段としては市場の平均価格より高いものになってしまいますが、そのよさを考えると十分お客さんにも投資に見合うと感じていただけると思います。Zは外にいるときは真のモビリティー、机にいるときは真のパフォーマンスを実現でき、外でも中でもそれぞれの状況に応じて最高の環境を提供します。そこを評価していただけて、いつでもどこでも使ってくれる方に購入していただけると考えています。
井口 モバイルのヘビーユーザーであることは大前提だと思いますね。本当につねに持ち運んで、オフィスでも外でも移動中でもヘビーに使う方。平均的なPCよりどうしても高くなってしまう部分があるんですけど、自分の使い方でこれだけ払っても十分価値があると理解して使ってくれるお客様を想定しているし、そういう人に使ってもらうと嬉しいですよね。
VAIO Zシリーズ
●ソニー
●予想実売価格 約25万円(店頭モデル『VPCZ219FJ/B』の場合、直販モデルの最小構成価格は14万4800円)
●発売日 7月30日
VAIO公式サイト
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります