週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

モムチャンもビックリな新VAIO Zの極限ダイエットとは?【インタビュー前編】

2011年07月06日 17時00分更新

新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー

新VAIO Zの開発コンセプトやこだわりのポイントについて、開発に携わったソニー 井口昭氏、金森伽野氏、只野順一氏の3名にお話を伺った。
(聞き手 週刊アスキー編集部ジャイアン鈴木、桑野朋子)

新Zは先代ZとXシリーズのハイブリッド

ジャイアン鈴木(以下、鈴木) 新VAIO Zシリーズは、従来のZシリーズはもちろんですが、それよりもXシリーズの影響を強く感じますが、具体的にどのシリーズの後継として開発がスタートしたのでしょうか?

井口昭氏(以下、井口) 今回、実は特定の機種の後継として考え始めたのではなくて、3月に発売されたSシリーズと同時に、モバイルの商品群としてどのような提案をしていくのかというところからスタートしています。先代Zシリーズが世に出る前の2009年暮れぐらいからスタートしているので、その時点では具体的にどれがなにの後継とは決めておらず、モバイル商品群全体をどのように作っていくかというところからスタートしています。

金森伽野氏(以下、金森) この機種に特に与えられたミッションとしては、最先端の技術を取り込んで、よりプレミアムモバイルを追求するという命題がありました。いろいろ話していくなかで、今まであったX、Z、そしてSシリーズがあって、先代のZがいたポジションをカバーできるという副題のもと、この新しいZがどこまで進化できるかということについて議論して、少しずつ商品像が固まってきたという感じです。

鈴木 開発がスタートしたときからコンセプトはまったく変わっていないのですか?

金森 我々のモバイルのブランドを引っ張るプレミアムモデルとして、この機種を作ろうということが決まって、ある程度コンセプトが定まってからは、基本的にそれほど大きな変化はありません。

桑野朋子(以下、桑野) 前のZシリーズが発売されるタイミングぐらいから、もう開発が始まっていたのですか?

井口 検討はもうスタートしていました。本当にコンセプトが固まったのは、先代Zが発売されたあとぐらいですけど、その前からモヤモヤとできあがりつつありました。

鈴木 新Zシリーズを開発するにあたって、ライバルに想定していた他社製品はありますか?

金森 正直、先代Zのタイミングでそれに値する商品はないと思っていました。軽さで言えば同等のものはあったんですけど、同じ軽さとサイズで同じパフォーマンスのものはなかったので、明確にライバルという機種はなかったです。

井口 特に今回の機種に関しては、他社製品を明確にライバルと位置づけてはなかったですね。逆に言うと、いかに先代Zをしのぐものにできるかというのが目標でした。

ベンチマーク記事は8日公開予定!
新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー

開発にあたってのライバルはMacBook Air?

鈴木 新ZシリーズはOS起動速度の高速化をアピールしていますが、『MacBook Air』などを意識されなかったのでしょうか?

井口 正直あれを見たときには、素直に「いいな」とは思いましたね(笑)。ただし、我々もそれ以前から(OS起動速度は)課題と認識してすでに取り組んでおり、今回の発売タイミングで我々ができるベストを尽くしています。ウィンドウズを搭載するシステムとして、ベストに近い起動速度になっていると自負しています。

金森 以前からつねにお客様の声を聞いたり、独自に調査などして、パソコンの起動時間の遅さというのは課題として認識していました。この点は、VAIOでは継続的に内部で検討してきたテーマです。実際、弊社だけでなく、他社さんも取り組んでいる課題なので、注目されてきているのだと思います。

桑野 起動時間を早くするというのは、最初からあったコンセプトなのですか?

井口 ありました。コンセプトというよりもテーマのひとつだったんです。バッテリーライフとか、起動・終了時間とか基本的な部分はできるかぎりいいものにしていこうと。そのなかでも起動時間の高速化というのはかなり前からあったテーマですね。

鈴木 ソニーを始めとする大手メーカーのパソコンは常駐ソフトが多いですね。今回起動時間を早くするために、常駐ソフトを減らしたりしたのですか?

金森 常駐ソフトと起動時間の関連性については、前々からいろいろと調査していました。具体的にどれをはずしたとかは別として、たとえばソニー内製のアプリケーションなどで、起動時の常駐スピードの改善は地道に行なっています。

鈴木 新Zシリーズの開発にあたって、サイズ、重量、構成パーツなど、最初に決まった要素はなんでしょうか?

井口 今回最初に決めたのは、ULV(超低電圧)を採用しないことと、薄くするためだけにパフォーマンスを犠牲にすることはやめようということです。とにかくStandard voltage(標準電圧)品のCPUを使って、なおかつその範囲で最薄・最軽量のものを作ろうと。とにかく性能面では一切妥協しないというのがスタートです。
 

Standard voltageだからこそのハイパフォーマンス
新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー

究極のモビリティーとはなにか?

桑野 やはり最薄っていうのは大事なんですね。

井口 我々はプライオリティーを上げてますね。やはり持ち運ぶときは、カバンへの出し入れがすっとしてるほうがいいじゃないですか。中でガタついたりもしませんし。あと、なんと言っても薄いとかっこいいです!(笑)

金森 単なる薄さだけではなく、フルフラットでどこまで薄くできるかというところに注力しました。

鈴木 新Zシリーズの魅力を伝える際にどういった形で伝えますか?

金森 まったく新しい提案なので、まず本体自体の性能のよさ。そして、ドックを付けたときにどのように使うのかというのはわかりやすくお伝えしようと思っています。たとえばドックの使い方ビデオを用意したり、実際に操作したときにどれぐらい速いのかをお伝えするコンテンツをできるだけ用意します。

桑野 前のZシリーズはある意味完成形で、評判もよかったし、後継モデルはどうなるんだろうって思っていました。そこからこういうまったく新しい形に変えるのってチャレンジだったと思うのですが、ここまで変えなきゃいけない理由はあったんですか?

井口 先ほど先代Zのときに競合となる他社製品がなかったって言いましたけど、なにも進化しなければすぐに追いつかれますよね。ただ、進化していくだけではかなり限界に来ていると考えていて、そこで非連続な進化をしないとすぐに追いつかれてしまうと思い、今回このような進化をしています。

金森 Sシリーズと一緒にコンセプトを練っていくなかで、あちらはZで培ったものをより広いお客様に使っていただくという、かなり正統なオールインワンタイプに進化しています。そこでこちらのZがオールインワンに固執しつつ究極にと言っても、やはり両機種の差はかなり詰まっているわけです。ある程度、一歩引いたところからもう一回究極のモビリティーってなんだろうというところから検討して導き出したのが、このソリューションということになります。

鈴木 光学ドライブをはずすというのはこれまでも数多くあったわけですが、GPUをはずすというのはすごく大きい決断だったと推察します。GPUをはずすかはずさないかということに関して、相当意見の衝突があったのではないかと想像するのですが?

井口 最初はたしかにあったんですけど、方向性がある程度見えてきたら、これでいけるねっていう感じで、めちゃめちゃバトルがあったかというとそうでもなかったですね。今回インテルさんと共同で検討を進めていた10Gbpsの光伝送技術“Light Peak(開発コードネーム)”を応用することで、GPUを外に出したとしても先代Zと比較してグラフィックの進化もかなり上を目指せる目処がつきました。そしてサンディーブリッジの内蔵GPUも以前と比べると性能が上がってきているので、そういった条件が揃うタイミングかなという判断は早くからありましたね。やるならこのタイミングかなと。
 

Power Media Dockのケーブルに光伝送技術を使用
新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー

新Zシリーズのサイズを決めたのは……

金森 先代Zを使っているお客さんの不満点は、やはり重さ・厚さとバッテリーライフが大きかったんですね。パフォーマンスに関しては、モバイルマシンとしては十分満足。人によってはもうスタミナモードでずっと使っている人もいるぐらいでした。薄さ・軽さ、そしてシートバッテリー(拡張バッテリー)のソリューションを用意して、しっかりと先代Zのお客さんの不満点を解消しつつ、Xのお客さんにとっても不満点をすべて解消できるようなセットというのを考えました。

鈴木 従来のZシリーズよりフットプリントが少し広くなっていますが、新Zシリーズのサイズを決めたのはなんだったのでしょうか?

井口 ひとつはキーボードのピッチですね。やはり実際に仕事でガンガン使っていただくことを前提としているので。キーボードピッチを縮めてしまうと、使い勝手が低下しますから。キーボードピッチを維持したまま、できるかぎり薄くしつつ、端子類とキーボード部分が重ならないように、端子類をキーボードから逃がしています。そのぶんだけ先代Zよりフットプリントが横方向に増えています。

金森 Standard voltage仕様で、フルフラット16.65ミリをキープしつつ、最小のフットプリントにした結果ですね。薄さは鞄に入れるときに絶対気になるポイントでプライオリティーが高いんです。(16.65ミリなら)実際に皆さんが持っているビジネスバッグで入らないバッグってほとんどないはずです。女性のバッグでは場合によってはあるでしょうけど、雑誌が入ればだいたい入ります。雑誌の奥行き210ミリというのは、ひとつの指標としてキープしたところです。
 

新VAIO Zがスマートに入るバッグも発売予定
新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー

専用部品を新規に多数開発!

鈴木 最も苦労した具体的な事例をお聞かせください

井口 薄さを実現するために、DCジャック、USB2.0、オーディオジャック、HDMI端子は新規で起こしています。それ以外にも、Power Media Dockを実現するための新規部品も多く起こしています。ごく普通のPCであれば、電気部品の多くはは既存品で使えるものを探すのですが、この薄さ・機能を実現するためには、当然新規専用部品が多くなり、それらの設計、評価を含めて、立ち上げには非常に苦労しました。また、この薄さを実現するためのレイアウト検討、剛性と薄さを両立するための機構検討など、苦労した点は、とても一言では語りきれません。

鈴木 標準バッテリーで9時間の長時間駆動はどのように達成したのでしょうか?

井口 これはホントに積み重ねです。電気回路ひとつひとつの消費電力を、ムダのないようにと積み重ねた結果です。もともとモバイル向けのVAIOは、スタミナに関してプライオリティーを高く開発しています。そのなかで培った電源回路のノウハウですとか、ソフトウェア上の設定とか、ドライバーの挙動などで無駄が発生しないようにしています。あとは、常駐するソフトウェアもバッテリーライフに影響を与えますので、そこも早い段階から無駄に裏で動くソフトがないか確認しつつ進めてきました。

後編は明日公開予定!

新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー
VAIO&Mobile事業本部 VAIO第1事業部 設計1部 1課 統括課長 井口昭氏
新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー
VAIO&Mobile事業本部 企画戦略部門 企画1部 PPM課 金森伽野氏
新VAIO Zシリーズ開発者インタビュー
VAIO事業本部 第1事業部 設計1部 1課 只野順一氏(※インタビュー中に“新VAIO Zシリーズ”を分解していたため、ほとんどインタビューに参加していただくことはできませんでしたが、製品写真撮影のために多大にご協力いただいた只野順一氏に感謝いたします)

VAIO Zシリーズ
●ソニー
●予想実売価格 約25万円(店頭モデル『VPCZ219FJ/B』の場合、直販モデルの最小構成価格は14万4800円)
●発売日 7月30日
VAIO公式サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります