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【ロングインタビュー】砂原良徳氏にニューアルバム『liminal』について伺いました!

2011年05月10日 16時45分更新

無意識的な音をいかに取り入れていくか

――ちなみにシングル『subliminal』発表の際に、アルバムとの関連性を示唆していましたが、新作にはどう関係しているのでしょうか?

砂原 実はもっと兄弟っぽい感じになるかと思っていたんですが、意外にも次のことがやりたくなっちゃったんですよね。

――次の段階?

砂原 人間から出てくる意識的なフレーズってものに興味がなくなってきて。そうじゃないところから音をつくっていきたいと強く思ったんです。人間の出すありふれた音に飽きたというか、どうせ想像どおりだろうという気持ちが強かったんですよ。たとえば、シンセでジャンジャン弾いたり、ギターをウィィィーンとやったというのは全部人間が意識して、人間に対して送ってコミュニケーションをするために出す音だと思うんです。でも風の吹く音やエンジンがウーって鳴る音って、音楽として人を楽しませようとして出している音とは違うじゃないですか。そういう音のほうが聴いていておもしろいなと思ってきたんです。

――だからそこ、雑踏的な音だとかが作品から聴こえるんですね。

砂原 『subliminal』のときも無意識的な手法で音楽をつくろうとトライしたんですよ。雨上がりにしずくが落ちる音を自分で弾いて再現してみたり。でもやればやるほど意識的になることに気づいて。そうなると「もう人間が出す音じゃないな」って。機械の音のサンプリングやPCで乱数を使って生成した音をちょっとずつ取り込んで編集する作業をしました。無意識的なフレーズをいかに取り入れていくか。それが当面の制作の課題なんだと思いますね。

――地球規模な音が聴こえるのですが、そこも関係していますか?

砂原 地球規模だとか、そういう物の捉え方は前作以降ずっとあって。やっぱり色んなことが無視できないし、物事を地球規模で考えないといけないことが増えてきていますよね。不都合なことは無視して、音楽には持ち込まないという考えはまったくないです。現実を前提として音楽をつくるというのがありますよ。

音質に関しては理想的ですね

――サウンドに関しても伺いたいのですが。今回は今まで以上に音に吸引力があり、思わずスピーカーのほうを向いてしまったのですが。

砂原 音に関してはひとつの到達点だと思います。音質は。来るところまで来たなというのはあるかもしれない。音質に関しては理想的ですよね。

――その理想的というのは具体的には?

砂原 たとえば音が鳴って、消えますよね。消えたときにアナログで録った場合、鳴っているときはワァ~ってなってて、消えるとパッと真ん中に点になるんです。けど、それがゆらゆら~となってる。でも僕らが今やっている音楽は消えるとピタッと止まるんです。全然動かない。止まるときには止まって、動くときには動く。今回は極端にそうなっていますね。明らかに精度が上がっているんですよね。今まではPCとそれ以外の楽器を使っていたんですが、今回はほぼ内部だけで処理をしていて。PCのクロックの正確さというか、処理能力のスピードだとか、そういうのが音に反映されていると思います。音の甘さみたいなのがだいぶなくなっているんです。

 

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