電話やSMS、FAX、メールまで包括したTwilioとKDDIウェブコミュニケーションズ
最後に登壇したのはTwilioエバンジェリストのKDDIウェブコミュニケーションズ 高橋克己氏。Twilio(トゥイリオ)の発音や間違いの多いスペルからはじめ、Twilioの説明や用途、最後にはBoxの機能を活かしたデモを披露した。
2008年にサンフランシスコで創業したTwilioは、現在世界24拠点を展開しており、今年の8月に日本法人も設立されている。2016年6月にはニューヨーク証券取引所に上場しており、投資家には認知度も高いが、会社やサービスの認知度はまだ低い。「立ち上げから11年も経っていて、上場までしているのに、なぜ認知度が低いか? それは提供しているのがAPIだから」と高橋氏は語る。BoxやSendGridのようなプロダクトがあるわけではなく、エンジニアや開発者がシステムに組み込む「部品」を提供しているという点が、Twilioが認知されない最大の理由だという。
Twilioのミッションは「コミュニケーション」だ。フェイスツーフェイスで会って話すのはもちろん、電話やチャット、メール、SNSなど今はさまざまなコミュニケーションツールを使い分ける時代、Twilioが提供するのはツールよりも機能だ。「僕らにとって電話をするのは、コードを書くということ。コミュニケーションの手段をすべてプログラムからAPI経由で扱えるようにすることで、新しいコミュニケーションを生み出すのがわれわれのミッション」と高橋氏は語る。
もともとは電話(ボイス)とSMSから始まったTwilioだが、SendGridの買収によりメールというコミュニケーションツールまでラインナップされた。こうした膨大なAPIを支えるのがグローバルに張り巡らせたTwilioの「スーパーネットワーク」。世界中の電話会社とつないだ同社のスーパーネットワークにおいて、昨年取り扱った電話番号はなんと28億におよぶ。「28億の電話番号を取り扱っている通信事業者は世の中にはいない。いわば世界最大の通信事業者のインフラを持ちながら、APIを提供してサービスを開発できるようにしている」(高橋氏)。
KDDIウェブコミュニケーションズは2013年4月からTwilioを国内展開しており、順調にビジネスを伸ばしてきた。高橋氏は、「国内の総販売代理店として6年間に渡ってTwilioを販売しており、すでにサポートチケットは1万5000件になりました。だから、日本のお客様がTwilioを使って、どこで悩まれているのか知見が溜まっている」とアピールする。
現在、日本での案件の6割はボイス、3割はSMSになる。ボイスはコールセンターやコンタクトセンターの利用が多く、ブラウザからの電話やオンプレのIP-PBXとも連携する。キューイングやACD、IVR、録音などの機能も利用でき、コンタクトセンターの「Twilio Flex」を使えば、最大5万席までスケールできるという。
具体的な活用例としては、システム障害通知時にユーザーに荷電する異常通知が挙げられる。障害が起こると、夜中でも自動的に電話がかけられ、とられないと別の担当に転送されるというもの。また、音声による自動応答(IVR)の仕組みも簡単に作れる。
一方、SMSは「Authy」というサービスを用いた二要素認証が多い。「こんなものは作れるという声もあるでしょうが、米国では二要素認証はアウトソーシングするのが主流。みなさんはログインしてもらって、なにを売るかに集中してほしい」とのことで、認証のみならずユーザー管理までカバーするため、端末の紛失や電話番号の変更まで対応できる。さらにSMSを用いたURLの通知やマーケティングにも用いることができ、SendGridのメールとあわせて高い投資対効果を実現するという。
アナログの業務処理をTwilioでDXしてみたら
後半はDXの話にフォーカス。もちろん、単にTwilioを導入すれば、DXが実現できるわけではない。電話やFAXなどいまだにアナログなことが多いコミュニケーションをTwilioで変革し、効率化や自動化し、付加価値などを実現するのがDXの本筋だと高橋氏は説く。
たとえば、今のコンタクトセンターでも呼数や待呼の数は表示できるが、グラフを見るだけでは効率化や付加価値にはつながらない。しかし、顧客とオペレーターのやりとりデータを分析すれば、たとえば両者が同時に話す「クロストーク」を抑制することも可能だという。もちろん、録音すればオペレーターが抑えるべきクロストークを検出することも可能だが、Twilio Flexではこうした分析やその先の効率化まで実現できる。
このようにTwilioでは、TV会議、IVR、音声認識、ボット、着信通知、OCRなどさまざまな機能により、アナログなコミュニケーションをデジタル化できる。具体的なデモとして1つ目に高橋氏が披露したのが、「IVRを用いた資料請求の問い合わせを自動化し、安全に資料を送る」というシステムだ。これは資料請求の問い合わせに対して、IVRを使って自動応答し、資料のURLをSMSで送信するというもの。資料はBoxに保存されており、閲覧パスワードを付けることもできるという。
実際に電話をかけてみると、スマホにSMSが着信し、簡単に資料を見ることができた。システムの設計については、「Twilio Studio」というGUIのツールを用いることで、ドラッグ&ドロップで作成できる。また、資料を送る機能に関してはTwilio内のコードをサーバーレスで実行するFunctionsと使っており、Boxと連携してファイルを電話番号にひもづいたフォルダにコピーし、リンクを生成してSMSで送信している。「Box APIを学ぶのにちょっと時間かかりましたが、仕組みはシンプルなので、1日かかりませんでした」(高橋氏)。
2つ目のデモはTwilio FAX on BOXという仕組み。こちらは着信したFAXをBoxの指定したフォルダに自動格納し、SMSで通知できるほか、BoxからFAX送信できるというものだ。「FAXがなぜ嫌われるのか? まず紙が印刷されてしまうし、セキュリティ上の問題もある。トレイに置きっぱなしになるのは、FAX機が会社に数台しかないからです」と高橋氏は指摘する。そこで発想を転換し、自分のスマホをFAX機にする。Twilioを使えば、月々わずか110円で050番号が利用できるので、これを自分専用のFAX番号として使うわけだ。
FAX機は持ってこられないため、高橋氏はTwilioからBoxのファイルをFAXで送信し、Twilioで受信するというデモを披露。「Boxを操作するのであれば、ドラッグ&ドロップで移動すりゃいいだけの話を、わざわざ6~7円かけてこっちからあっちまでイリュージョンします(笑)」とのことで、プログラマブルなFAXを操作してみせた。
仕組み的にはFAXが受信したら、先ほどと同じくFunctionsを使って着信番号からFAXフォルダを検索し、受信データをフォルダにコピー。あとは共有リンクを作成し、SMSで送信するという流れだ。説明している間にFAXもきちんと受信できた。送信する場合は、BoxのWeb統合機能を使って、PDFファイルを指定したときに右クリックでFAX送信のメニューは出るように設計してある。WebページなどのリソースもTwilioの「Assets」というストレージサービスに格納しているほか、送信ボタンをトリガーにした送信もFunctionsで行なっている。
これらのシステムは外部のサービスは使っておらず、すべてがTwilioだけで完結するのが大きな特徴。しかも月額料金のない完全な従量課金なので、使った分だけ支払えばよいという。最後、高橋氏は「みなさんのサービスにTwilioを組み込み、今まで思ってもいなかったことをTwilioで実現してほしい。これがわれわれの願い」とアピールし、セッションを終えた。
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