熱とクロック推移も見てみる
では最後に今回使用したASRock製カードの冷却力をチェックしてみたい。室温26度前後の環境において、アイドル時から計測をスタートし、MHWを起動し約30分集会エリアで放置した時のGPU温度とGPUクロックの推移を追跡する。温度情報などの取得には「HWiNFO」を使用した。
ゲーム中のGPU温度は66~67度あたりでほぼ安定となり、GPUのクロックは1815MHz~1825MHzあたりで細かく変動しつつも、全体的には非常に安定している。今回試したASRock製カードはデュアルファン仕様ではあるものの、ゲーム中でも温度がさほど高くならず、非常に使いよいという印象を受けた。
今回使用したRX 590カードは、同じASRockのPhantom Gamingシリーズのものだが、TBPが高いGPUのOCモデルだけあって冷却ファンが非常に耳障りな音を立てる。しかしRX 5500 XTはRX 590カードよりも小ぶりであるにも関わらず、ファンノイズはずっと小さい。もちろん他メーカーの製品ではどうかは分からないが、静音性も欲しいなら今RX 580や590の値下がり品を買うなら、RX 5500 XTを選ぶ方が幸せになれるだろう。
まとめ:フルHD&負荷控えめで使うなら優秀な選択。あとは価格次第
以上がRX 5500 XTのレビューとなる。7nmプロセスによるワットパフォーマンス向上効果は極めて優秀で、Polaris世代のミドルクラスが支配するアンダー3万円ビデオカードの柱のひとつになれるだけの実力はある。VRAM 8GB版の初値が3万円前後だとRX 590やGTX 1660などに比べてやや厳しい印象があるが、価格が落ち着きドライバーの熟成が進めば手も出しやすくなるだろう。
下のグラフは今回使用した実ゲーム系ベンチマークの平均fpsにフォーカスし、RX 5500 XTは既存のGPUに対しどの程度速い/遅いかの平均値を出したものだ(100%より上=RX 5500 XTの方が速い)。
今回の結果からはRX 590よりもRX 5500XTの方がフルHD時で2%速いとあるが、その差の源泉はBordlerlands 3とGhost Recon Breakpointであり、軽量系ゲームに絞ればRX 590の5%程度下あたりに落ち着く。RX 590よりも若干性能は落ちるが、ワットパフォーマンスや新しい動画エンコーダー(Radeon Media Engine)などの付加価値を考えると総合的には優秀、といったところだ。
ただ3万円以下のビデオカード全体を考えると、AMDはRX 5500 XTを投入するタイミングを遅らせすぎたのではないか、と筆者は考える。ライバルNVIDIAはRX 5500 XTが競合しそうなのはGTX 1660だろうと的確に予想し、それを挟み込むようにGTX 1650 SUPERと1660 SUPERという刺客を放ってきたからだ。
GTX 1660や1660 SUPERは実売3万円台前半の製品も多く存在するが、売れ筋ラインの製品は3万円を割り込んでおり、この時点でRX 5500 XTと強烈にバッティングする。RX 5500 XTがこの先3万円以下のミドルクラスビデオカード市場に足場を築くには、もう少し価格設定を見直す必要がありそうだ。
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