IEEEが50年間の人々の生活にインパクトを与えた
50の家電製品を発表
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会)は、「Back to Consumer Electronics Hall of Fame」というページを公開し、ここ50年間で我々の生活にインパクトを与えたコンシューマーエレクトロニクス製品50を選出しました(https://spectrum.ieee.org/static/consumer-electronics-hall-of-fame)。
日本勢は13製品が選ばれていますが、本当に多岐に渡ります。1983年、初めて「ファジー」を組み込んだマイコンを使った象印の炊飯ジャー。文句なしなのは1979年のソニーウォークマン。1994年のエプソンのカラーインクジェットプリンタ(←持ってた……)も選ばれています。
ソニーは今回の発表の中で最多の4製品が選出されており、ウォークマンの他にはトリニトロンテレビ、PSP、そしてビデオカメラのDRC-VX1000が選ばれていました。個人的には、このVX1000は憧れの懐かしいカメラでした。デジタル(MiniDV)で録画でき、比較的軽く、カメラワークについてきてくれる、そんなカメラです。
筆者は、せいぜい大学の課題で使った程度ではありましたが、それでも思い出深い製品でした。大学に貸し出し用で数台用意してありましたが、人気があってなかなか使うことができなかったのです。
もちろん現在のスマートフォンの方が4Kも取れて画質も良さそうなものですし、スマホで撮影した4K動画を有り余るプロセッサ性能を生かしてスマホの中で編集し、音楽までつけてYouTubeにアップ、なんてお手軽です。しかし2000年頃であっても、まだまだ当時は大変でした。
まずMacのPremiereに取り込むため、i.LINK(FireWire)ケーブルでVX1000をつないで、テープに記録したビデオを再生しなければなりません。もし60分ビデオを撮ったら、60分かけて取り込まなければならなかったのです。
そして編集もまた過酷です。ちょっといじっただけでもレンダリングを待たなければならず、編集してレンダリングして、また編集してという繰り返しのために、学校に泊まり込まなければなりませんでした。懐かしい記憶が蘇ってきますが、確かにVX1000でビデオを撮りたいと思えるほどにその仕上がりからして違っていたのを覚えています。
ソニーとAppleの基本戦略も透けて見えてくる面白さ
ソニーから選出された製品はテレビとビデオカメラ、ウォークマンとPSPという2つのグループに分けられます。前者は途方もなく高額だった製品を、より多くの人々が手に取れる価格に下げるインパクトを与えたこと。後者はそうした大きくて固定されているモノが当たり前だったものを、持ち出せるようにしたことです。
そう分類しながら、選出されたApple製品を見てみると、基本的にはテクノロジーのポータブル性を次々に達成している製品が入っています。iPhone/Apple Watch/AirPodsの3製品選出はソニーに次いで2位ですが、ソニーと異なり、いずれも持ち出せる製品の再定義が続きます。
iPhoneはモバイル、Apple Watchはウェアラブル、AirPodsはヒアラブル。携帯電話としてはモトローラやノキアの製品が入っているし、腕時計なら(最近もチプカシと呼ばれて人気の)カシオF-91Wという防水デジタル時計が入っています。Appleはこれらを高度化しながらデザインを与え大衆化する戦略にこだわって、ここまで成功してきた様子が見えてきます。
だとすれば、今後も、「○○able」を探しながら、新しい製品ラインが増えていくことになるのではないでしょうか。しかし当面はiPhoneにぶら下がるデバイス、ということになるはずです。 面白いのは、主たるデバイスもまた、Appleが変化させている点です。
Appleは当初Macを旗艦としてiPodやデジタルカメラなどをぶら下げる「デジタルハブ構想」を打ち立てました。その後iPhoneが普及すると、この構想の旗艦をMacからiPhoneへと置き換え、クラウドを絡めながら現在のエコシステムを強力に作り出しました。
このパラダイムシフトも踏襲するなら、あるいは旗艦がApple Watch、AirPodsなどへと時代とともに映っていくかも知れませんが、それはさすがに読み過ぎ、といったところでしょうか。
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