BSC設定で大きく変わるマルチスレッド性能
続いては「PCMark10」で、ゲーミング性能を除いたPCの総合性能をチェックする。総合スコアー(Standardテスト)では差異がわかりづらいので、テストグループ別のスコアーも比較する。
アーキテクチャーが基本同じで、動作クロックが若干伸びただけであるため、各テストグループのスコアーもクロックの増分だけ伸びている(若干ブレているのはいつものこと)。By Specific Coreを有効にすると、マルチスレッドをガンガン使うようなテストグループ(DCC: Digital Contents Creation)よりも、そうでないテストグループ(EssentialsやProductivity)で大きく伸びている点が面白い。
最後にシステム全体の消費電力をラトックシステムの電力計「REX-BTWATTCH1」を利用して計測する。システム起動10分後の安定値を「アイドル時」、「Prime95」のSmallFFTテストを10分動かした時の最高値を「SmallFFT」、そして「Blender」で「barbershop_interior_cpu」をレンダリングさせた時(レンダリング時間は次回紹介する)の最高値を「Blender」として比較する。
Intel製のCPUはPower Limitの限界までアクセルを踏みまくるような設計になっているが、Core i9-10980XEは倍率関係の設定を「Auto」にした時に消費電力がCore i9-9980XEに対して圧倒的に低くなる、という点が面白い。By Specific Coreを有効にすると、その枷が外れ電力を相応に消費するようになる。
ただし、Core i9-9980XEも10980XEも、By Specific Coreを有効にするとSmallFFTでBSODが出てしまった。このあたりがASUS製マザーボードのデフォルト設定ではCPUがフルパフォーマンスにならない理由かもしれない。By Specific Core設定の細部を詰めれば通るのかもしれないが、残念ながらそこまでの時間は確保できず断念せざるを得なかった。
まとめ:Intel製CPUの強みとは何かを考えさせるCPU
以上で、基本的なベンチマークを通じてのCore i9-10980XEの性能概観は終了となる。現行のCore Xシリーズが登場した頃の価格と比べれば、ほぼ半額になっているため、コストパフォーマンスはかなり高くなっている印象だ。しかし、その抜本的な価格変更は競合であるAMDの第3世代Ryzen Threadripperに対する恐れの表われでもある。7nmプロセスでゲーミング以外の弱点を克服してきた第3世代Ryzenの脅威が、HEDT市場にもやってくるのだ。保険をかけるに越したことはないだろう。
また、By Specific Coreを有効にすればガンガン回るものの、消費電力もそれなりに増える。SmallFFTのような極限の超高負荷状態は現実的にはほぼないので、ゲーミングなど普通に使うぶんにはそこまで気にする必要はないかもしれない。しかし、動画エンコードなどクリエイティブな作業の途中で落ちる可能性を考えると、デフォルトのまま使うのが安全だろう。
逆に、By Specific Core設定で使う場合は、さらなる詳細設定で電圧まわりなどをいじらないと、扱いづらいだけのじゃじゃ馬になってしまう。フルパフォーマンス状態で使うにはそれなりのノウハウが求められるだろう。そういった意味では、Core i9-10980XEは上級者向けのCPUとも言える。そこのところをどこまで詰められるかわからないが、次回はクリエイティブ系アプリを中心に、Core i9-10980XEの使い勝手を検証してみたい。
お詫びと訂正:検証環境の表組みで、Intel「Core i9-10980XE Extreme Edition」(18C/32T、3~4.8GHz)となっていましたが、正しくはIntel「Core i9-10980XE Extreme Edition」(18C/36T、3~4.8GHz)でした。該当部分を訂正し、お詫びします。(2019年11月28日16:02)
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