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放送業界を事例としてデータ基盤と管理のあるべき姿を語る

テレビ東京、スペクティ、ネットアップが語るデータ活用とDXの課題

2019年10月24日 07時00分更新

途中からでもデータアセスメントを進めるべき

 データアセスメントとは「データ活動を客観的に評価(アセスメント)すること」だ。データ専門家の団体DAMA(Data Management Association)が策定したデータマネジメントの知識体系である「DMBOK(Data Management Body Of Knowledge)」では、11の主要機能からデータマネジメントを評価し、ベストプラクティスを用意。エンタープライズデータ戦略を実現するための組織作りに役立てることができるという。DAMA DMBOKを体系的に学べる本「データマネジメント知識体系ガイド」(日経BP社)も刊行されており、1万2000円(税別)と高価だが、十分元が取れる内容だという。「内容は真新しくないが、これに沿えば信頼できるマネジメントができる。ゼロベースのところからやるより、圧倒的に実行スピードは早くなる」(段野氏)。

 データは活用されづらいと、まったく活用されなくなる。そのため、ツールや分析基盤を導入する前にDMBOKをベースにしたデータマネジメントを適用するのが理想だが、途中からでもデータに向き合い、将来の目指すべき姿と現状とのギャップを客観的に確認し、評価することが大切だという。実際、多くの組織はデータを最大限に活用したいと考えるが、その達成すべきゴールは基礎の上にのったピラミッドの頂点でしかなく、データマネジメントの戦略を決めてからデータ管理するような余裕はない。データベースやアプリケーションを利用開始してから、データの品質に問題があり、データマネジメント活動の重要さに気がつくという。

 DMBOKでのデータガバメントとは「データ資産の管理を職務権限を通して統制し意思決定を共有する」と定義されており、組織がデータを資産として管理するというデータマネジメントに対し、データ資産を管理するルールを設定するいわば監査人に近い役割を持つという。「データ活用したいという観点はみんな持つが、正しく管理ができないといけない。不正確なデータだと間違った判断を犯すので、データは正しく管理されることが重要」(段野氏)。そしてこのデータガバナンスの基礎を支えるのが、データの活用を可能にするためのデータライフサイクル管理で、時間の経過とともにデータの利用価値が変わることを前提にデータ管理の要件を決めていく必要がある。ここで初めて、ネットアップにも関わってくるストレージのパフォーマンス、オペレーション、コストの最適化などがさまざまな観点がある。

 では、インフラとしてオンプレミスとクラウドを比較すると、一般的なメリットとデメリットのほか、事業継続性、データ要件・価値、運用要件に加え、自社の習熟度とスキルなどを総合的に判断する必要があるという。オンプレミスとクラウドのいいとこ取りを目指したハイブリッド利用の事例も増えているが、「管理できないテクノロジーほど怖いものはない。自社の知識や習熟度を総合的に考えなければならない」(段野氏)と指摘。データマネジメントとスキルを磨きながら、システムを見直していくことが必要になるという。

 まとめとして段野氏はデータ活用を行なっていくと、データマネジメントとデータガバナンスの課題に行き着くが、そのときには全社的にデータを主導できる体制やガバナンスが必須になると指摘。そして、データマネジメントのフレームワークとしてDMBOKを推奨するとともに、自社の成熟度やスキル、ビジネス環境にあわせて適切なデータライフサイクル管理が必要だと提言した。

SNSの画像や動画を高精度にピックアップできるスペクティ

 3番手として放送業界を前提としたデータの利活用について語ったのは、スペクティ(Spectee)代表取締役の村上建治郎氏だ。スペクティは災害や事件・事故などのSNSをAIでリアルタイムに検出し、放送機関に提供するサービスを展開している。国内だけではなく、海外の災害や事故・事件もSNSから検出でき、放送局は、これらピックアップされたSNSを見ながら、取材先を特定したり、視聴者動画として利用することができる。

Spectee 代表取締役 CEO 村上建治郎氏

 スペクティは災害時にTwitterから情報収集を行なうサービスとして東日本大震災の起こった2011年に生まれ、最近ではSNSだけではなくカメラの動画やセンサーなどから、危機管理や災害対策の情報を収集し、解析している。もちろん、SNSから報道に必要な情報を探すという試みは古くから行なわれていたが、なにしろTwitterだけでも1日5億ツイートなので、24時間人力で探すのは現実的ではない。

 その点、スペクティでは機械学習(ML)によって災害や事件・事故のSNSを高い精度で選定できる。具体的には、動画や写真内の「炎」や「消防車」だけではなく、複数の投稿のテキストを分析し、総合的に火事と判断したものだけピックアップしている。最近ではSNSのプライバシーポリシーも厳しくなり、場所の特定が難しくなったが、画像内に映り込む看板や標識などから場所を特定できることもあるという。

 また、SNSのデマやフェイクニュースは、過去のSNSを解析したり、データベース化した過去の画像とのマッチングをおこなうことで検出できるという。大量の画像を解析したり、検索するのはやはりAIが便利だが、最終的には人間がチェックすることもある。Twitterだけではなく、FacebookやInstagramなど幅広いSNSにも対応。村上氏は、「いままでもTwitterの解析サービスはいろいろあったが、情報の精度に問題があった。当然、メディアではなかなか利用できなかったが、AIにより正確な判断ができるようになり、公式ではない、SNSのようなオルタナティブデータから、正確な情報を届けることが可能になってきた」と語る。

 現在、国内の放送局にはほとんど導入されているほか、自治体の災害対策本部や警察、消防、鉄道・電力などインフラ系事業者での導入が増えている。さらにAIによる画像解析も加速させている。交差点を歩く人の様子を撮影した定点カメラの映像からコートや半袖の着用率を割り出す「AI天気」のほか、災害時を想定した実証実験としてドローンで人を検知したり、自動運転や自治体での利用を前提に天候や路面の状態を判定する実証実験を本格化させているという。村上氏は、「AIやクラウドなどの技術が発展したことで、初めてこうしたビジネスが展開できている。特に日本では危機管理の市場が大きく、膨大な防災データもAIを使うことで解析できる」と語り、AIの将来性についてアピールした。

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