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南信州の廃村「大平宿」で昔の生活体験をした

大平宿に泊まるということはどういうことか

 大平宿に泊まるということ、それは「当時のままの山村生活を体験する」こと。現代の便利な生活から少しのあいだ離れて、江戸末期から昭和初期にかけての生活を体験し、建物の維持につとめて村の保存に協力するってことなのだ。宿泊費ではなく「保存協力費」という名目になっているのは、そういう想いが含まれてのこと。

 だから、ガスがないから調理もお風呂もすべて薪で焚かなきゃだし、蛇口の水も谷川のそれだから、そのまま飲むのはいただけない。多くの建物では照明用しか電気はないし、そもそも携帯の電波は届いていない。下水もそのまま川に流れ込むから、環境を守るために石鹸や洗剤の使用は一切禁止されている。まさに昔の山村での生活をそのまま体験できるテーマパーク、それが大平宿という場所なのだ。

山村の夕暮れは早い。さっさと準備をしなければあっという間に暗闇だ。持ってきた飲み物は、そのまま井戸川に放り込んで冷やしておく

今回は薪を3束も買い込んだけれど、一晩だけなら1束で充分だった

焚きつけに使えるような細いものが無かったので、持参してきた鉈で適当な太さに割いておく

まずは火付きの良いかまどから火を入れていく

細く割いた薪を下にして、徐々に太い薪を上にのせる。新聞紙などに火をつけて下に押し込めば、火はだんだんと太い薪へと移っていく。ちなみに着火材の使用は禁止されている

いい感じに火を起こすことができた

白状するけど、今回は少しだけズルさせてもらった。だってこの方が簡単に火がつくんだよ!

羽釜をつかったかまどでのご飯の炊き方はネット情報を参照すべし。ご飯が炊けたら、燃えさしの薪をお風呂のボイラーと囲炉裏に移す。水の配管へよく熱が伝わるように、薪はなるべく奥のほうへ敷いていく

煙突から煙が立ちのぼって、なんとなく生活感が出てきた

 山向こうに初秋の太陽が落ち、あたりはいよいよ真っ暗に。かまどで炊いた白いご飯と囲炉裏の鍋で夕食をとれば、あとは酒を飲みながら仲間と語り明かすだけ。昔の人も陽が落ちたら早々に寝床についたそうだから、こういうところも江戸時代の生活体験……と言えなくもない?

陽が落ちるとあたりは真っ暗になり、家から漏れ出る柔らかくてあたたかい光だけが村の中を照らし出す

吹き寄せる風も一気に冷たくなってきた

夕食は囲炉裏の鍋と昼間に釣ったニジマスの塩焼き

鍋は豚肉と鶏肉、適当に切った白菜やネギ等々を出汁入り液体味噌で煮ただけ。これが意外とうまいのだ

夕食を食べたら、あとはお風呂に入って、井戸川で冷やしておいた酒を飲みながら業界話に花を咲かせる。こうして夜はとろとろ更けていく……

真夜中の廊下は座敷わらしが出そうな雰囲気……。今回は3人で利用なので、寝床は2間と板の間に分かれて広々使えた。寝具は寝袋持ち込みだけど、部屋は畳敷きなので何なら布団を持ち込んだっていい。ただし囲炉裏の煙で室内は相当に煙たくなるので、焦げ臭くなってしまうのだけはお覚悟を

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