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南信州の廃村「大平宿」に泊ろう!
南信州の深い山の中に、江戸時代にひらかれた小さな宿場町がある。現在では廃村となっているけれど、残された建物は地元の人々によって保存活動が続けられている。そこでは事前に申請すれば建物に泊まることが可能で、当時のままの生活体験ができる、らしい。その廃村の名は「大平宿」という──。
そんな話を聞きつけたのは、今からもう10年は昔のこと。とあるネットニュースで掲載された訪問記を読んだのがきっかけだった。歴史のある建物や街並みが大好きで、加えてアウトドアな趣味をもっていた筆者としては、大平宿は一度でいいから訪れてみたかった場所なんだけれど……。その頃はライターの仕事とモータースポーツの仕事が重なり、個人的な趣味へ割く時間が取れずに指をくわえて見送るばかりだったのだ。
あれから長い時間がたって少しは趣味の時間を持てるようになり、暇を見つけてはキャンプだ釣りだと遊びに出かけるようになってから、大平宿へ行ってみたい気持ちがムクムクと再燃……そこで8月のサマーシーズンを外したこの時期の平日に、念願の大平宿へ有志とともに訪問してきたわけだ。そのときの模様を、ちょっとしたお役立ち情報と共にレポートする!
大平宿で泊まるには事前に利用予約が必要。かつては大平宿の元住民を中心としたNPO法人「大平宿をまもる会」が建物の保全と利用管理をしていたが、現在は「南信州観光公社」が管理業務を担当している。
まずは南信州観光公社のウェブサイトにある専用フォームから仮予約をし、希望する日に空きがあるかを確認する。その後、宿泊の一週間前までに申込書類を郵送し、保存協力費(後述するが宿泊費ではない)を指定口座に振り込めば本予約の完了だ。送られてくる利用許可証は現地で鍵との引き換えに使うので、忘れずに持参しよう。
ちなみに参加者が1名では申し込みできない、ぼっちには厳しい仕様となっている。これは人里離れた場所だから、緊急事態が起こったときに1人では対応できない恐れがあるため。2019年9月現在、保存協力費は1人1泊2300円。これに薪代や貸し寝袋のレンタル費を加算していくことになる。
9月17日午前7時。都内の駅で待ち合わせをして、いよいよ現地へ向かって出発。今回の参加者は、漫画家の小だまたけしさん、同じく漫画家の高永浩平さん、それに筆者の合計3人。なにしろ平日の旅程なので、わりと時間を自由にできる人しか誘えなかったのだ。他と休みがかぶらないのは専業クリエイターの長所であり短所でもある……。
大平宿のある長野県飯田市までは、中央自動車道を使って約3時間半。途中、駒ヶ根インターチェンジで高速を降り、マス釣り場に立ち寄って今晩のオカズをゲットする。ちょうど餌やり直後だったらしく、これがなかなか針にかかってくれない……。
午後1時。飯田インターチェンジを降りてすぐそばにある農産物直売所「りんごの里」に到着。この中にある南信州観光公社の窓口で、鍵と事前に注文していた薪を受け取る。ここは裏手に大きなスーパーマーケットもあるので、足りない食材を買い足すにも便利な立地だ。すべての準備を整えてから、大平宿のある山の中へと向かって車を走らせる。
大平宿は、飯田から県道8号線、通称「大平街道」をずっと登っていった先にある。深い森のなかを曲がりくねりながら登っていく、1.5車線幅の狭い道だ。対向車に気をつけながらずんずん進んでいくと、道はやがて飯田峠のピークを越えた。唐突に森がひらけた先に、目的地の大平宿が静かにたたずんでいた。
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