2019年10月3日、AWSジャパンはAWSのユーザー企業コミュニティである「E-JAWS」に関する説明会を開催した。2013年の発足以来、順調に会員社数を増やしているE-JAWSだが、非公開を前提として業界を超えたディープな議論が進んでいるという。
クラウドを推進するための悩みを解消するE-JAWS
2013年11月に発足したE-JAWS(Enterprise-JAWS)はエンドユーザーに限定したAWSのユーザーグループ。参加資格はAWSを本番環境で利用してるユーザー企業で、SIベンダーは参加できない。新規入会企業は、年に2回ある総会でのプレゼンテーションが必要。説明会の後に行なわれる総会でも20社以上が登壇するという。
E-JAWSの事務局長を務めるAWSジャパン 技術統括本部長 執行役員の岡嵜 禎氏は、「クラウドを推進していくために、どうやって上司を説得できるのか、セキュリティの扱いはどうしたらよいか、クラウドに必要な人材をどうやって拡げていくのか、本音を交えてディスカッションしたいという声に応えた」と設立の経緯について語る。
E-JAWSの活動概要としては、企業システムにおけるAWSの活用事例や構築・運用、改善に向けた情報共有、ITとビジネス部門の協働に向けたディスカッションのほか、分科会での個別テーマ研究などが挙げられる。具体的には、年に2回の総会のほか、担当者向けの部会、セキュリティや金融などの分科会、既存会員からの事例を外部の潜在会員ユーザーに披露する「E-JAWSカンファレンス」、意思決定者向けのディスカッションなど多岐に渡り、業界を超えた懇親会も大いに盛り上がるという。
コミッティメンバーが語るE-JAWSへの期待
E-JAWSの最大の特徴は、主催するイベントや活動が完全にクローズドなこと。あまねく多くのユーザーに知見をシェアするJAWS-UGと対称的に、E-JAWSは会員同士がイベントのみで情報共有やディスカッションを行なっている。コミッティメンバーズ以外は非公開で、資料もなければ、討議内容も明らかにされてないという“秘密結社的な運営体制”だが、情報の扱いにセンシティブなエンタープライズユーザーでも安心して深い議論に没頭できるのが大きなメリット。E-JAWS現会長である京王電鉄の虻川勝彦氏は、「基本はどんどん深いことを話してくださいとお願いしていて、公開しないことを前提としている。クローズドな会なので、普段外で話せないという方も安心して話してもらえる」とアピールする。
2013年、44社からスタートしたE-JAWSだが、順調に会員数を伸ばしており、2019年10月現在、会員社数は184社、433名に上るという。発表会に参加したコミッティメンバーにE-JAWSに参加した背景と意義を語ってもらうと、以下のような答えが戻ってきた。
「鉄道業界はクラウドユーザーが少なかったので、他の業界での使い方が知りたかった。今回、初めて別の鉄道会社が入ってくれることになった」(虻川氏)
「私自身がクラウド利用のファーストピンだったので、周囲をどのように巻き込んでいくかが課題だった。JAWS-UGは個人的な成長、E-JAWSは組織としてクラウドのパワーを取り込んでいくのかを学ぶためという位置づけ」(本田技研工業 IT本部 システム基盤部HG 栃木ITインフラ課 主任 多田歩美氏)
「クラウド利用においては乗り越えるのが大変な壁がいっぱいあった。でも、壁を乗り越える方法は業界問わず不変だと思ったので、議論してみたら有意義なフィードバックが得られた」(住信SBIネット銀行 IT・業務統括部長 浦 輝征氏)
「グローバル共通でAWS基盤を統一することになったので、運用ノウハウやインフラとアプリの区分けなどを得たいと思った。私たちより先んじている会社にノウハウをいただいるので、自らも積極的にアウトプットしていきたい」(サントリーシステムテクノロジー 基盤サービス部 主査 小山 知岐氏)
「前職でE-JAWSに参加していたが、今の転職先でAWSを立ち上げるときも同じ組織の壁があり、乗り越える必要があった。こうした経験を金融業界だけではなく、他の業界にも共有し、ディスカッションできている。これは企業間でのコミュニティのE-JAWSの存在意義だと思う」(みずほフィナンシャルグループ リテール事業法人業務部/ITシステム企画部 参事役 シニアマネージャー(CCoE) 黒須義一氏)
前会長であるフジテックの友岡賢二氏は、発足直前にE-JAWSを知り、入ったとたんに会長になった(された)という経験を持つが、2年間を振り返り「やってよかった」と感想を語る。「今までクラウドにまったく縁のなかった金融業界が、Fintechの流行とともに積極的に入ってきた」(友岡氏)とのことで、独立した部会でデジタルトランスフォーメーションのための組織論や人材育成まで議論している。
また、JAWS-UGに参加している立場として、「デベロッパーを活かす情シスをいかに作るかはE-JAWSの大きなテーマ。だから、僕らもJAWS-UGに参加してデベロッパーのリアルティを感じる必要がある」とオープンなJAWS-UGとの連携も意識しているという。
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