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成功から生まれた勘違いから仲間を見つけ、現場の要望に応えるまで

地盤改良を生業とするケミカルグラウトは業務も改良し始めた

2019年10月01日 09時00分更新

逃げるように参加したCybozu Daysで志を同じくするパートナーを得る

 初回の取り組みで成功体験を得た小野氏は、業務改良の第2弾に挑戦した。当初の考察から、独自のExcelファイルや個人のノートに工事に関する記録が散在していることに問題があることはわかっていた。小野氏はツールを導入することでこれらの情報のフォーマットを統一すれば、業務を効率化できると考えた。

「ところがその案を現場の担当者たちに打診したところ、思いもよらぬ言葉が返ってきたのです。『ひな形を統一するのは無理だと思う』『そもそもひな形が統一されていないことで困ってはいない』というのが現場の反応でした。ツールを入れることしか頭になかった私は、非常に悩みました」(小野氏)

現場担当者に提案したら、現場は困ってなかった

 頭を悩ませていた小野氏が見つけたのは、オフィスに届いていたCybozu Daysの招待状だった。目の前の課題から逃げるような思いで、Cybozu Daysに参加したという小野氏。しかしそこには、サイボウズ製品を使って課題解決に取り組む多くの同志が集っていたという。現在の開発パートナーであるMUTUAL GROWTHと倉林工房とも、Cybozu Daysで出会ったとのこと。

「彼ら新しいパートナーと出会い、まず実施したのは、現場担当者を集めてのワークショップです。各人が業務中に困っていることを付箋にすべて書き出してもらい、それを業務の段階ごとに分類しました。同時に、どうすれば解決できるのか、業務のあるべき姿を管理職、実務者を含めた全員で議論しました」(小野氏)

 そこで浮かび上がった本当の課題。それは、蓄積されているはずのデータを活用できていないということだった。過去のデータが整理されておらず、情報がまとまって管理されていない。社内サーバにあるはずの情報が、なかなか見つからない。フォーマットも各人各様なので、読み解くのに時間がかかる。その結果、過去のデータを流用すれば済むことであっても、同じ情報を再度入力することになる。

ワークショップの結果

「過去のデータが整理されていないなど、フォーマットの統一も課題のひとつだということがわかりました。しかし現場担当者は情報を入力することよりも、過去の情報の活用に課題を感じていたことがワークショップでわかりました。登録したデータを簡単に検索できて、それを活用できる環境を整えることが重要だとわかったのです」(小野氏)

 こうした課題感の共有から生まれたのが、現場実績データベースという考え方だ。たとえば現場でトラブルが発生した場合、以前なら経験者と若手社員で対応時間に大きな差が生じていた。経験者は解決ノウハウを持っているが、若手社員はどうしていいか右往左往することになる。トラブル経験者に指示を仰げればスムーズに解決するが、誰がノウハウを持つ経験者なのかわからず、誰に聞けばいいのかもわからない。

「データベースがあれば、キーワードで検索し、似たようなトラブルを経験した人の名前がすぐに見つかります。その場で電話などで相談し、全員のノウハウで現場のトラブルをクリアできるのです。現場作業を止めるリスクも小さくなります」(小野氏)

現場の真の要望にKintoneで応え、長時間労働や若手離職率などの課題を解決

 ワークショップで得られた現場の要望に応じて、「現場検査」アプリと「日報」アプリが作成された。現場検査アプリは、以前なら個別のExcelファイルや紙のノートに書かれていた情報を全て紐付けている。過去の情報を探したいときの、データ検索用アプリだ。もうひとつの日報アプリでは、その日の現場で作業員が何人、何時間働いたのか、材料を何トン入荷して何トン使用したのかなど、150項目にも及ぶ入力項目が並ぶ。入力や閲覧のしやすさを考え、ボタンを置いてカテゴリ別に表示されるよう工夫されている。

「過去のデータを検索してうまく課題を解決できた場合には、いいね!をクリックしてもらうことにしました。これにより、有効なデータを目立たせることができます」(小野氏)

 アプリ開発自体は、基本的にアジャイル開発を取り入れた。画面をユーザーに見せながらフィードバックをもらい、作成途中に思いついたアイデアも盛り込みながらアプリを作り込んでいく。そして最後に、機能性ではなく操作性を向上するためにテストランを行なう。このテストランにつきあってもらうユーザーが、のちにアプリを社内展開する際に強い味方になってくれると小野氏は言う。

テストランまでに実施したこと

「テストランに協力してくれたユーザーは、自分の意見で改良されていく画面を見て満足感を持ってくれます。すると、自発的にアプリの有用性を現場で発信してくれるようになり、開発中のアプリについてクチコミで聞いた社員から、早く使いたいという声が上がるようになりました」(小野氏)

 そうして作成したアプリの効果だが、これまためざましいものだった。かつては残業しても1現場あたり3日から4日かかっていた報告書の作成が、写真整理まで含めて半日に短縮された。昼間のすき間時間に日々の記録をkintoneに記録できるようになったことと合わせ、残業時間は大幅に削減。定時退社できるようになったという。

 効果を得たのは現場サイドだけではない。本社側でも、手戻りや再入力が多かったデータ整理の時間から解放された。現場との情報共有のリアルタイム性が上がり検索性も高まったことで、早い段階で間違いを見つけ、それを本社側で修正可能になった。現場の情報整理という業務を、現場と本社でうまく分担できるようになったのだ。

削減効果は日数にすると24日に相当

 かつては悩みの種だった若手の離職にも、効果は表れた。長時間労働がなくなり、2016年以降若手の離職率0%をキープできているという。今後もkintoneをつ買って業務を改善し、写真アプリやストレージとAPIで接続して情報検索性も高めて行きたいと小野氏は展望を語った。もちろん、その視野にあるのは施工管理業務だけではない。他の分野、労務や経理などにもkintone活用を広めていきたいと語る。

「こうした成功を得るために、一人で悩むことなく、kintone hiveで仲間を見つけて、業務改善を進めて行ってください」(小野氏)

 最後に、参加者にそう訴えかけ、小野さんはセッションを締めくくった。

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