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開発研究の他業種転用も

花王、プラスチックボトルレスや廃棄物ゼロ化に取り組む

2019年09月26日 20時10分更新

花王が9月26日、本社で記者発表会を開催

花王がESG経営に大きく舵を切ると表明

 花王が9月26日、ESG(環境、社会、ガバナンス)戦略に関する新たな取り組みを発表するとして、本社で記者発表会を開催。

 気候変動や高齢化社会、資源枯渇、海洋プラスチックごみといった社会的課題が消費者ニーズにもたらす変化を見据え、「商品設計の段階からESG視点を念頭に置いたものづくりを進めていく」と、登壇した代表取締役社長 執行役員の澤田 道隆氏が表明した。

持続可能な暮らしを実現する「Kirei Lifestyle Plan」

 花王では、2019年の4月に消費者が求める持続可能な暮らしを「Kirei Lifestyle」と定義し、それを実現するためのESG戦略を「Kirei Lifestyle Plan」として取り組みを進めてきた。

 だが、澤田 道隆氏は「これまでも取り組んできたことですが、これまでのレベルではいけない」と話す。

 「プラスチックは便利で安価なことから、発明以来、私たちの生活を大きく変えてきた。しかし、時代が移って、いまは大問題になってしまった。自然環境や社会環境が変化していく中で、変わっていかない企業は、かならず取り残されてしまうと考えている」(澤田 道隆氏)。

Kirei Lifestyle Plan

 Kirei Lifestyle Planは「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「より健やかな社会のために」という3つのテーマに「正道を歩む」という企業としての基本的な考え方を組み合わせたもの。それぞれのテーマに「QOLの向上」「責任ある原材料調達」など、より具体的なスローガンが組み込まれており、全部で19のスローガンから構成されている。

 今回の発表から、同社が4月に表明したこのKirei Lifestyle Planを、本格的に始動させていく。

取り組みの第一弾を発表
プラスチックボトルレス化、廃棄物ゼロ化など

 取り組みの第一弾として発表したのは「リデュースイノベーション」「リサイクルイノベーション」「ソーシャルイノベーション」の3つ。

 リデュースイノベーションは、製品に使う資源や、物流にかかる手間を減らすことを意味する。プラスチックボトルレス化の加速や、プラスチックアイキャッチシールの撤廃、廃棄物ゼロ化、「ホワイト物流」推進などが含まれる。

従来の詰め替え用パッケージに透明フィルムの層を追加し、空気で芯を作った試作品。プラスチックボトルと比べて、86%ほどの薄肉化を実現できる

 プラスチックボトルレス化の加速のための施策として、従来の詰め替え用パッケージに透明フィルムの層を追加し、空気で芯を作った試作品が紹介された。プラスチックボトルと比べて、86%ほどの薄肉化を実現できるという。プラスチックアイキャッチシールの撤廃については、「消費者とのコミュニケーションとして重要だが、購入された時点で役目を終えてしまう。売り上げが落ちない別の工夫を考える必要はあるが、完全に撤廃し、どうしても必要な場合は、再生紙を活用する」とした。

 また「これまでは、欠品を防ぐことを最優先にしていたが、返品が多いと、最終的には廃棄することになってしまう。販促物も同様で、店頭でごく短い期間のみ展示するために作られて、すぐに捨てられる販促物も多い。これらもゼロにしていきたい」と、廃棄物にも言及。合わせて、サプライチェーンも見直し、配送過程の「ムダ・ムリ・ムラ」をなくしていくとした。

おなじみのプラスチックアイキャッチシールも廃止する

 リサイクルイノベーションは、より業界全体に影響を与える理念と言えるかもしれない。

 澤田 道隆氏は、リサイクルの必要性が叫ばれつつも、マテリアルリサイクル(回収した資源を再度製品のかたちで再利用)される国内の資源の割合は8%程度、サーマルリサイクル(焼却して、エネルギーとして再利用)でも4%程度にとどまっていることに言及。

 「使用済みプラスチック容器の革新的リサイクル技術の構築」「高品質、低価格な再生プラスチック化と活用」「リサイクリエーションの推進」「プラスチックごみの産業用途への利用」など、資源が循環し、ロスなく再利用される社会の実現を目指していくとし、「自分たちのためというより、業界全体として取り組んでいくべきこと」と、他社と協力していく可能性についても示唆した。

 ソーシャルイノベーションは、開発研究の成果を、同社がこれまで取り組んでこなかった領域に活用していくことを表す。

 例として挙げられたのは、同社が昨年発表した「Fine Fiber(ファインファイバー)」だ。

 Fine Fiberは、小型の専用装置にセットした化粧品用のポリマー溶液を、装置のノズルを通して肌に直接噴射することで、肌表面に極細繊維からなる積層型極薄膜を形成する技術。同社ではこれをスキンケアやメイクといった「美」だけでなく、治療領域へも応用していきたいという。

2020年には新ブランド展開も予定

代表取締役社長 執行役員の澤田 道隆氏

 発表会の最後には、同社が2020年から展開することを予定している新ブランドにも触れた。

 ブランドの名称といった詳細は明かされなかったものの「今、最終段階の調整をしているところ。ひとつのジャンルではなく、清潔、美、健康に関する商品すべてに横串で入るブランド。まずはESGに対する意識が特に高まっている欧米で展開する予定」(澤田 道隆氏)と、ブランドの概要を明かした。このブランドは「Kirei Lifestyleを体現するもの」とのこと。

 これらの取り組みに関して、澤田 道隆氏は「これからの花王は、ESG戦略を経営の根幹に据え、企業姿勢、モノづくりのあり方、目線を大きく変える。『突き抜けるレベル』で、抜本的に視点を変えていく必要がある」とコメント。「プラスチックごみに関する取り組みは、一緒にやりたいと言ってくれる企業もたくさんある」とも話した。

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