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デロイト トーマツ グループ 里崎慎氏インタビュー後編

スポーツ×スタートアップの可能性は大 スポンサーシップ 3.0の考え方

スタートアップのソリューションでスポーツの潜在価値を見える化

 とはいえ、資金力のないスタートアップが有名クラブをスポンサードするのは難しい。そこで、スポンサー料の代わりに自社のもつ技術を提供する、というコラボレーションの方法もある。

 デロイト トーマツは、埼玉県が主催する起業家育成プログラム「埼玉 Sports Start-up」を支援している。

「埼玉 Sports Start-up」(参考リンク)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-and-industrial-products/articles/sb/saitama-sports-startup-1.html

「スポーツ×ベンチャー×地方創生で何が生まれるのか」(参考記事)
https://ascii.jp/elem/000/001/747/1747578/

 「プロ野球の各球団の試合数は年間70試合で、毎回3、4万人もの観客が集まります。Jリーグも2週に1度は試合があり、2、3万人が集まります。これだけの大きな動員できるイベントはそうそうない。しかし、運営しているクラブは、集まっている観客がどのような母集団であるかをクリアに説明できないのが現状。ITの技術を使えば、年齢、男女比、興味・関心といった属性情報を見える化し、マーケティングに活用できる。ここはスタートアップの力が役立つ領域です」

 実際に、2018年度の「埼玉 Sports Start-up」の採択スタートアップから、スタジアムの来場者の属性を収集する電子チケットのアイデアが出ているそうだ。

 「クラブ側は、マーケットを大きくしていくための起爆剤として、スタートアップの持っているソリューションを大いに活用すべきです。スタートアップ側は、スポーツと組むことで、知名度の向上につながる。ツールの導入によってクラブの売り上げが伸びた際には還元してもらう、といった契約の形にすれば、クラブとスタートアップがWin-Winの関係も築けます」

 もちろん、スポーツで培われた技術は、ほかの分野にも応用できる。また、別のクラブチームや種目へ横展開してビジネスを拡げる手もある。

 「埼玉 Sports Start-up」は、2019年度も実施され、7月22日から募集を開始している。スポーツとコラボレーションできるという魅力からか、一般のアクセラレーションプログラムに比べて、応募者のモチベーションが高いそうだ。

 スポーツビジネスのポテンシャルはまだまだ未知数だ。スポーツへの貢献や自社の事業をアピールするだけでなく、新しいネットワークや次のビジネスの展開へとつながる面白さもある。スタートアップには縁遠かったが、新しいスポンサードの形だ。今のうちに参入してみてはいかがだろうか。

<プロフィール>

里崎 慎氏
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(DTFA) 公認会計士 スポーツビジネスグループ/シニアヴァイスプレジデント

 2009年に有限責任監査法人トーマツよりDTFAに転籍し、主に非営利法人の運営アドバイザリー業務に従事。2015年4月より立ち上がったデロイト トーマツ内のスポーツビジネスグループの設立発起人。一般社団法人日本野球機構(NPB)の業務改革支援や、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の組織再編支援業務にプロジェクトマネージャーとして関与。公益財団法人日本サッカー協会(JFA)のガバナンス・コンプライアンス体制検討支援業務にも関与。

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