トマトを入れたのが効いている
親子丼のリソルジメントや~
親子丼+イタリアンという組み合わせには面食らうかもしれませんが、玉子とトマトという組み合わせは、中華料理にもありますし、突飛なものではありません。さらに、玉子とチーズ、トマトとチーズ……一つ一つ考えていけば、足し算としてはおかしくはない。
では、それらが一緒になるとどうなるか? 割り下の甘辛さ、チーズの塩気、バジルソースのコクと、それぞれの要素が強いので、味としては濃い目。ですが、白米と一緒に食べることを考えれば、意外とバランスは取れています。
チーズのコクとトマトの甘味、そしてバジルの香りを入れつつも、あくまで親子丼の味わいを維持しています。親子丼要素とイタリアン要素が「7:3」ぐらいの割合でしょうか。けっして破綻していません。
褒めるべきはトマトを入れたことでしょう。甘味と酸味が、ちょっとしつこくなりそうなチーズと玉子と合わさることで、しっかりとアクセントになっています。バジルソースも開発に苦心したというだけあり、香りが新鮮な印象を与える、よい組み合わせだと思います。
ノーマルな親子丼を大胆にアレンジしつつ、キワモノではない味のまとまりを作り上げているところに、「看板メニューの親子丼で失敗はできない」という、なか卯の気概を感じました。よくできています。ただ、トマトの香りも存在感もなかなかのものなので、苦手な人には勧めづらいということはいえましょうか。
外見と名前ですこしおののくかもしれませんが、なか卯の「伝統」と「革新」のリソルジメント(Risorgimento)である親子丼イタリアン、全然アリ。食べてみる価値はあると感じます。トマトがお嫌いでなければ、ぜひどうぞ。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。
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