2019年7月8日、ドローンによるインフラ点検をサービスとして手がけるジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)は、マレーシアのエアロダイングループと業務提携した。JIWのオペレーション能力とエアロダインの技術ノウハウを結集し、今後拡大する送配電線の点検に向けた商品開発を進める。
老朽化する社会インフラの点検業務をドローンで効率化
2019年4月に設立されたばかりのジャパン・インフラ・ウェイマークはNTT西日本の100%子会社として、ドローンによる公共インフラの点検事業を請け負う。NTT西日本が自社保有する鉄塔や橋梁などの点検、太陽光パネルの点検や道路状態の診断などのサービスで培ってきたドローンによる点検業務や画像解析のノウハウを元に、インフラ点検をトータルに提供する。
発表会で登壇したジャパン・インフラ・ウェイマーク代表取締役社長の柴田巧氏は、説くべき社会課題として「社会インフラの老朽化」を挙げる。道路や橋梁、鉄塔などの社会インフラの過半数が、2033年に建設から50年経過するにも関わらず、建設業への就業者の減少で建て直しが難しく、保守や点検の人材も不足している点を指摘した。こうした課題からジャパン・インフラ・ウェイマークはドローンによる橋梁点検、法面点検、鉄塔点検を手がけており、数々の実績を上げている。
具体的には、西日本30府県にまたがる2500橋梁や200もの鉄塔を対象とする点検において、プロジェクト管理、パイロットアサイン、国/自治体への申請、安全計画、リスクアセスメントまでをワンストップで提供し、実績を重ねてきた。柴田氏は、「強みはオペレーションエクセレンス。段取り8分と呼ばれるドローン点検において、現場のオペレーション力を培ってきた」と語る。
電力会社の送配電線点検を阻む3つの課題とは?
NTT西日本時代も含め、これまでジャパン・インフラ・ウェイマークは通信設備の鉄塔や橋梁などの点検を中心に手がけてきたが、今後は電力会社の設備や高速道路・鉄道への点検需要に応えていく。特に送配電線の点検の効率化が必要な電力会社はドローンの導入に向け、法規制への対応、オペレーションや技術面でのノウハウの欠如などが課題になっているという。
ドローンの商用利用に関しては、目視外飛行や操縦者および操縦者の関係者以外の第三者上飛行に規制のかかっている状態。「たとえば、過去にNTT西日本がやってきたように個別申請も可能だが、多くの電力会社はノウハウがないため、官公庁からのガイドラインを待っている状態」とのことで、PoCから本格運用に進まないのが現状だという。しかし、「空の産業革命」に向け、今年は具体的なルールや制度作りがスタートしており、2022年までには有人地帯での目視外飛行を実現する環境が整備される見込みだという。
2番目のオペレーションに関してはまさにジャパン・インフラ・ウェイマークの十八番だが、3番目の技術的なノウハウに関しては課題があった。この課題を克服するには単独でノウハウを蓄積するという道もあったが、今回ジャパン・インフラ・ウェイマークはパートナーを探すという道を選択した。そこで選んだパートナーがマレーシアのエアロダインになる。
期待するのはエアロダインのベストプラクティス
エアロダイン(Aerodyne Group)は、ドローンを活用したインフラ点検のリーディングカンパニー。ドローンによる点検やクラウド型のデータ解析サービスを提供しており、2014年の設立以来、サービス提供国は25カ国に拡がっている。マルチコプターやVTOLなどさまざまな機体を用いており、30チームが1回につき10~50Kmの点検プロジェクトを連日こなしているとのこと。
エアロダイングループ CEOのカマルール・ムハンマド氏は、「5年間業務を続けているが、時間的なロスはない。すべて想定通りに点検を終えている」とアピールした。同社がこれまで点検を手がけてきたインフラ設備は26万5000設備、年間の総飛行時間は6万2500時間におよぶ。ムハンマド氏は、「顧客のデジタルトランスフォーメーションに寄与している。(日本語で言えば)『早い、安い、うまい、安全』な点検で、既存の手段をリプレースしている」と語る。
今回、ジャパン・インフラ・ウェイマークはエアロダインと業務提携することで、世界各国で培ってきた送電設備や鉄塔などの空撮や点検プロセスのノウハウ提供を受け、電力関連のサービスの共同開発・販売で連携していくという。柴田氏は、「インフラ点検は現場ごとにオペレーションが違うし、万が一にも事故を起こせない。その点、期待しているのは、やはりエアロダインのベストプラクティス」と語る。
柴田氏が「世界もうらやむ業務提携」と語る今回の提携。今回は日本市場での送配電線や鉄塔が対象だが、2020年以降は対象サービスを洋上構造物やプラント、管路などに拡げつつ、海外展開も視野に入れる。さらにマレーシアの留学生などを受け入れた空撮・点検センターの開設などを通じて、技術者の育成も進めていく予定。2022年には国内電力設備点検のシェア30%を狙うとともに、2025年までに海外の売上比率も20%に引き上げる目標を掲げている。
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