2019年4月18日に開催されたkintone hive fukuoka vol.4には、佐世保の広告・印刷・Web相談所を謳う有限会社エスケイ・アイ・コーポレーション 総務部 永尾好美氏が登壇した。手書きのデジタル化やエクセル管理の情報をkintoneアプリ化しまくった永尾氏は、業務改善に明け暮れた7年間を振り返った。
kintoneアプリで業務効率とキャッシュフローを同時に改善!
「kintoneで実践した『見える化』と『見せる化』」というテーマでプレゼンが行なわれた。有限会社エスケイ・アイ・コーポレーションは、長崎県佐世保市で創業70周年を迎える老舗で従業員数は30名前後。印刷や出版、ウェブサイト、フリーペーパーの制作などを手掛けている。永尾好美氏は総務部で、会社では電話当番をしているとのこと。同時に、3人の子供を持つお母さんだ。
2012年2月、PTA活動中に「サイボウズLive」を知って活用。同年6月、会社のお得意様からkintoneを教えてもらい、簡単そうで維持費が安いと言うことで興味を持った。しかも、サイボウズLiveと同じ会社の製品だと気が付いて、とりあえずチャレンジしてみることにしたという。
まずは、kintone導入の決済をもらうための稟議書を作成した。永尾氏は手書きで行なっている作業伝票の発行に課題を感じていたので、それをアプリ化する内容を提案。3枚複写の紙に手書きしており、それを受注簿に手書きで転記するなど、手間がかかっていたのだ。ちなみに白は現場、ピンクは受注簿転記用、黄色は営業保管用と使い分けていた。
ほかにも頭の中で管理していた納期スケジュール、壁に張り出している印刷スケジュール、工場の棚に保管している紙在庫管理といった内容をてんこ盛りにすることで社内稟議が通り、kintoneを導入することができた。
早速、永尾氏はアプリを作りまくった。アプリを作る際は、盲目的に作りまくるのではなく、手書きで何をしたいのかを書き出したそう。永尾氏は総務部に属しているため、管理するものが多かった。そこでエクセルで管理しているものは、どんどんkintoneアプリ化していったという。
工場の紙在庫アプリでは、実際に棚を見に行かなくても在庫をわかるようにできた。編集部の得意先アプリ&受注表アプリでは、経理に確認しないとわからなかった入金の有無を誰でも確認できるようになった。問題だった作業伝票もアプリ化。操作時に違和感がないように紙の伝票と同じ配置で作成した。「文字が小さいとか、書きたい項目が書けない、どこに何があるのかわからない、などといろいろな部署からいろいろな声をもらいます。その対応と改変を7年間ずっと回し続けています」と永尾氏。
同時にアプリに手を入れたのに何も知らせないと、「あれ?」と思う人がいるので、すぐにスペース内で告知しているそう。画面キャプチャと変更点を投稿し、関係部署に通知を出す。そして、見てくれた人はいいねを押す。7年経ち、このサイクルが周知できてきたという。
ポータル画面には、総務からのお知らせも出している。エスケイ・アイ・コーポレーションは毎日誰かしらが休んでいるそうで、その人の名前や、その日が誕生日の人、懇親会の場所などを共有しているという。最初は、通知を出しても誰も見てくれていないと感じていたそうだが、続けていることでポータルを見れば最新の情報が書いてあるんだなと認知されてきた。「見られていないからやめるのではなくて、続けることが大事だと思っています」と永尾氏。
3人目が誕生しても仕事を続けられたのはkintoneのおかげ
kintoneアプリ化することで、作業伝票を作る手間が大きく削減できた。従来は、ほとんど同じ内容のものを作るときも、最初から手書きする必要があった。kintoneだとコピーできるので、作成時間が半減したそう。さらに、受注簿への転記も自動化できるので、この手間はゼロになった。毎日1~3時間かけていた転記作業がなくなり、「これだけで本当に万々歳でした」と永尾氏。
紙在庫管理アプリを導入することで、ムダな在庫を減らすことができた。眠っていた価値を現金化するという直接的なメリットを得られたのだ。受注票アプリで管理することで、フリーペーパー部門の売掛金の回収漏れも格段に減った。その結果、キャッシュフローがよくなったそうで、経営陣としては、とても費用対効果の大きい投資だったと満足していることだろう。
「キャッシュフローがよくなったら、会社がきれいになりました。空いた時間を別の時間に充てられるようになり、整理整頓できるようになったのです。お金をかけて会社の外壁を塗り直したりしました。以前の総務メンバーは私服だったのですが、制服を買ってもらうこともできました」(永尾氏)
さらに個人的に助かったこともあったそう。子供が小さいと、熱を出して急に会社を休むこともある。そんな時、顧客とのやりとりなどはkintoneにすべて記録されているので、他のメンバーが対応できる。対応できない場合でも、永尾氏が自宅でkintoneにアクセスし、顧客と直接やりとりをすることも可能になった。「3人目の子どもは今5歳ですが、3人目が誕生しても仕事を続けられたのは、kintoneがあったからです」と永尾氏は断言する。
kintoneを使い続けていると、社内にも変化があった。周囲のスタッフから、いろいろなアイデアが出てくるようになったのだ。「こんなアプリを作りたい」とか「もっと使いやすくするために一緒に考えませんか」という声が上がってくるそうだ。さらに7年間の運用でデータも蓄積された。簡単に、実績を分析できるようになり、管理部門がとても喜んでいるという。もちろん、デジタル化できたのでデータを探す時間も圧倒的に短縮できた。
今後の目標は「佐世保にkintoneを広めること」
永尾氏の改革はとどまるところを知らない。社内でいろいろ使えるようになったので、今度は社外ともkintoneを活用したくなった。3年前から、顧客にもゲストアカウントを発行し、一緒にプロジェクトを管理しているそう。それまでは、エクセルで情報を管理しており、メールで送っていた。先方で内容が書き換えられればメールで返ってきて、エクセルファイルが増殖していた。kintoneアプリで管理することで、つねに新しい情報にアクセスできるようになった。
「佐世保ではkintoneという言葉をほとんど聞きません。3~4年前にサイボウズさんが佐世保に来て講演されたときも、サイボウズさんのことを知っている人はほとんどいませんでした。私の今後の目標は、佐世保にkintoneを広めることです」と永尾氏は意気込んだ。
kintoneを広げるため佐世保で旗を掲げる永尾氏の熱量は大きい。今後も、エスケイ・アイ・コーポレーションはkintoneを使い倒していくことだろう。
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