最初はラブ・ストーリーだった
── ディズニーとピクサーの作品の製作総指揮などを務めるジョン・ラセターさんが休業および退社されました。作品には影響はありましたか?
彼が辞めたのは1年半ほど前です。確かに、彼がいなくなったのは難しいことだったと思います。でも、(ジョン・ラセターの後を継ぎ、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任した)ピート・ドクターとか、(『ウォーリー』や『ファインディング・ドリー』の監督を務めた)アンドリュー・スタントンとか、(『トイ・ストーリー3』や『リメンバー・ミー』の監督である)リー・アンクリッチとか、以前の作品から中心的なメンバーとして関わってきた人たちがいました。移行期であったとしても、私たちには頼れる人たちがいたので、きちんとまとまったと思います。
── 日本では、ラセターさんの退社で、今作のストーリーが大きく変わったと報じられています。もとはラブ・ストーリーだったんですよね?
そうですね。最初はラブ・ストーリーとして企画してました。しかし、作品は5年とか7年とか、長い時間をかけて話をどんどん作り上げていきます。ピクサーの場合は、1番最初にテーマがあったとしても、話を書いていくなかで、別の方向に行くことはめずらしくありません。今回は「冒険の物語のなかに、ちょっと愛情の要素がある」という形になりました。たとえば、『インサイド・ヘッド』や『カールじいさんの空飛ぶ家』のときも、方向性が変わりました。今回の作品に限ったことではなく、よくあることなんですよね。
── ちなみに、現在のピクサーはどんな感じですか?
ピート・ドクターは、新しいチーフ・クリエイティブ・オフィサーとしても、エグゼクティブ・プロデューサーとしても、皆から尊敬されています。これから製作が続けられる状況があるので、私たちはとても楽観的で、希望を持っています。ピートが監督をする『トイ・ストーリー4』の次の作品も、今どんどん進んでいるところです。
『トイ・ストーリー4』が泣ける理由
── 『トイ・ストーリー』シリーズは、「泣ける映画」というイメージが定着していると思います。私自身も今作を試写で観させていただきましたが、劇中で何度もうるうるきて、ラストで一気に涙が止まらなくなりました。何か気にかけていることってありますか?
私たちは『トイ・ストーリー』に出てくるキャラクターと、ものすごく長い繋がりを持っています。最初から数えると、おそらく25年ぐらいになると思います。すごくなじみのあるキャラクターがストーリーの最終章を迎えるのは、観客としても、とても感動することです。ピクサーは映画を作るとき、楽しいのもそうだし、冒険の面白さもそうだし、作品にはたくさんの魅力を持たせています。でも、やっぱり心に響くような作品を作りたい。今回も楽しんでもらいながらも、心を動かすようなストーリーを作りたいと思いました。うるうるとして、涙が止まらなかったと聞いて、とてもうれしいです。
── 『トイ・ストーリー3』や『インサイド・ヘッド』はラストが泣けるという感じでしたが、『トイ・ストーリー4』は途中で少しずつうるうる来て、ラストに一気に号泣するという構成だと思いました。これは意図的なものですか?
私たちは「自分たちが本当に観たい映画を作りたい」という気持ちで作品を作っている人が多いです。そもそも、キャラクターに強いノスタルジーはあると思います。アニメーターの中には、子供の頃に初めて観た映画が『トイ・ストーリー』で、アニメーション作品を作りたいと心に決めた人もいます。実際に何10年か後に、自分がまさにウッディやバズを作る側の立場になっているのは、すごく感動的なことです。子供の頃から本当にやりたいと思っていた人も製作に関わっているので、オープニングから感動が伝わるのかなと思います。
── では、最後に。今作で伝えたかったメッセージは何ですか?
『トイ・ストーリー4』には『You've Got A Friend In Me(君はともだち)』という歌が再び登場しています。やっぱり、中心となるのはバスとウッディの非常に固い友情です。最後には「バスとウッディの友情がどれほどちゃんとしているのか」という試練のような場面があります。観ている方に驚きを与えるようなエンディングでしょう。
もとはラブ・ストーリーから始まった大人気シリーズの最新作。しかし、今作には恋愛要素はほんの少しで、子供のことを第1に考える主人公たちの親心や、仲間のことを大切に思う強い友情劇も描かれている。『トイ・ストーリー4』が泣けるのは、ピクサーの人々がキャラクターに強い愛情を持ち、自分自身が本当に観たい映画を作っていることが理由なのかもしれない。
●公開情報
・トイ・ストーリー4(原題:Toy Story 4)
・2019年7月12日 全国ロードショー
・監督:ジョシュ・クーリー
・製作:ジョナス・リヴェラ
・製作:マーク・ニールセン
・脚本:ステファニー・フォルソム
・脚本・製作総指揮:アンドリュー・スタントン
・製作総指揮:ピート・ドクター
・音楽:ランディ・ニューマン
・エフェクト・テクニカル・ディレクター:成田裕明
・アニメーター:原島朋幸
・キャラクター・テーラリング・アーティスト:小西園子
・配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
・公式サイト
あらすじ:「おもちゃにとって大切なことは子供のそばにいること」—— 新たな持ち主のボニーを見守るウッディ、バズら仲間たちの前に現れたのは、彼女の1番のお気に入りで手作りおもちゃのフォーキー。しかし、彼は自分をゴミだと思い込み、逃げ出してしまう。ボニーのためにフォーキーを探す冒険に出たウッディは、1度も愛されたことのないおもちゃや、かつての仲間ボーと運命的な出会いを果たす。そして、たどり着いたのは見たことのない新しい世界だった。最後にウッディが選んだ〝驚くべき決断〟とは…?
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