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LoTで、いかにして世界から探し物をゼロにできるか?:Tile CEOインタビュー

2019年05月30日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

ストーリーがあふれる「LoT=Location of Things」

 いよいよ次世代通信の5G時代が訪れ、モノのインターネット「Internet of Things」、IoTが更に発展することに期待がかかります。5Gは同時接続数が膨大に増え、また低遅延と高速化は、小さなバッテリーしか備えないIoTデバイスに非常に有利になるからです。

 このIoTをもじって、Tileは「LoT」と呼ばれることがあります。「Location of Things」の略で、モノの場所という意味です。IoTはインターネットにつながってデータが上がってくることを意味しますが、LoTはそのものの場所がわかることを意味します。

 インターネットがなければ場所が送信されないので、IoTを前提としたLoTサービス、という関係性になるのではないでしょうか。ただ、デバイスごとにインターネットに接続されるのを待たずにLoTの世界を構築しているのがTileです。そして、日々、世界中で、LoTにまつわるストーリーが生まれている、とProber氏は語ります。

 筆者は昨年末、バークレーで財布を盗まれる事件に遭遇し、「iPhoneを探す」機能を使って奪われたiPhoneと財布を取り戻しました。しかしこの話には続きがあります。

 後を追われていることを察知した容疑者であるホームレスは、キーホルダー付きの財布の中身を取り出して捨て、iPhoneとカード類のみをポケットに入れて移動していました。ホームレスの場所は「iPhoneを探す」機能で発見できましたが、財布はその場では確保できなかったのです。

 しかし財布のキーチェーンにはTileがついており、Tileアプリの位置情報検索で、カフェの裏にあるゴミ箱から回収することに成功しました。

 そのことをProber氏に話すと、より切迫した体験があったことを話してくれました。Prober氏は子供がいるにも関わらず家に強盗に入られ、盗まれた財布をTileの位置情報を頼りに警察に通報し、その強盗の逮捕によって取り返した経験があるそうです。

 筆者の探偵ごっこよりも更に危機的な状況に陥っていたわけですが、結果的にTileによって財布を取り戻しました。その他にも空港の手荷物を受け取る回転台でスムーズに荷物を受け取ったり、バゲッジロストで押しかけたカウンターで、「あなたの荷物はない」の一点張りをする係員の後ろでTileの音を鳴らしてしたり顔をしたり、日々の生活に密接に関わるなくしものとその発見のストーリーは我々が想像する以上に量産されています。

日本市場でも順調な成長を築いている

 現在2500万個のTileが販売されており、サードパーティーのデバイスへの組み込みも含めて、点での拡がりを加速させています。日本市場には2017年12月に参入しており、直近でマーケットは10倍に膨らんでいるといいます。

 たとえば都心部でTileアプリを開くと、アクティブなユーザーは3万人と表示されています。エンゲージメントは90日間でユーザー数の7割に上り、世界でもトップ5のマーケットに入っているそうです。

 海外ではケーブルテレビ会社と提携し、家にフォーカスしたTileの面展開の戦略を進めていますが、日本ではソフトバンクとのパートナーシップを実現しました。そう聞いてパッと思い浮かぶのが、ケータイ各社が設置を進めている公衆Wi-Fiスポット。

 これがTile機能を持つようになると、駅やコンビニ、ホテル、飲食店など固定した場所がTileを検出できるエリアになります。同時に忘れ物をしやすい場所でもあるわけで、たとえTileにGPSやセルラー通信がなくても、都市における忘れ物をかなりの確率で防げるようになるかもしれません。

 個人的には、これからのシーズン、傘にTileが入っていれば、なくしたり持って行かれたりしても心配なさそうだな、と思ったり。

 ただ最近雨の降り方が激しいだけでなく、先週は風もすごくて傘が1日の雨で壊れたりするので、大切にしたい一方で若干消耗品のような位置づけになってしまうのかな、と悩ましい部分です。

 という話をProber氏に振ると、傘に着けられるアタッチがあれば良いのでは、とメモしていました。楽しみにしておきたいと思います。

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