テクノロジーが陣営間で分割されるのが
いい時代なのだろうか?
みなさんは、テクノロジーによって発展する社会に、どんな期待を抱いているでしょうか? 不可能を可能にしたり、よりパフォーマンスを高めたり、異なる世界が見られるようになったり……。
もちろんテクノロジーやデバイスは道具ですが、人類はそうした道具を作り出し、それを日常に取り入れることで進歩してきた歴史を考えれば、あらゆるテクノロジーに対してまずポジティブに捉えることが重要だと考えています。
しかし特に国同士の争いの局面では、そのテクノロジーが雌雄を決することになります。あるいはテクノロジーが等しく利用されることによって、パワーバランスが保たれ、秩序が生まれ、交渉が生まれ、我々が暮らす現在があるのではないでしょうか。 通信は現在は平和的に、我々が毎日利用するテクノロジーとなっており、これが間もなくアップグレードされようとしています。しかし米国は、中国の通信機器は危ないと喧伝している。同盟国に使うなと言うのです。正直なところ、危ないと証明することも、危なくないことを証明することも難しいとは思いますが……。
米国にも確実にダメージがある
中国の警戒感は、中国がテクノロジーの製造を担う現場であるだけでなく、テクノロジー発展の現場になってしまったことにもあるのでしょう。
そして、その問題を表面化する米中の覇権争いによって、米国の5Gインフラ普及は欧州や他のアジア各国よりも遅れる可能性すらあります。ダメージは米国にもあるはずです。
現在次々とファーウェイとの取引を取りやめ、関税も高くさせられている現状がありますが、中国には関税に対抗する策が十分にありません。しかし中国が、米国がファーウェイにしたように、Appleの中国での活動を制限すれば、むしろ影響が大きいのは米国でしょう。
Appleは中国を米国に次ぐ市場に成長させた一方で、ほとんどすべての製品を製造する国にもなっています。iPhoneを中国国外に輸出できなくするあからさまな制限でなくても、中国企業がAppleとの取引を中断させるだけで、Apple製品は作れなくなり、世界に供給されなくなります。
貿易関係において中国は「米国に非がある」と主張しているため、むしろ避けたい施策かもしれませんが、そうした決定はApple株が崩れ、テクノロジー株が売られ、米国の株式市場に大きなダメージを与えることになるでしょう。これは経済政策で牽引してきたトランプ政権に打撃になります。
個人的には、オープンを重視しながらのテクノロジーの発展を信奉しており、米国にしても中国にしても、早く妥協点を見つけて競争による解決に転換してほしいと思っています。ただ、すでに話はそう簡単なものではなくなっているのもまた事実です。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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