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価格据え置きでDolby Atmos Height VietualizerやBluetooth送信機能を装備

マランツ、高さ105mmの薄型AVレシーバーを刷新 「NR1710」

2019年05月17日 11時00分更新

 マランツは5月16日、高さ105mmとスリムなAVレシーバー「NR1710」を発表した。「NR1609」の後継機種で、価格は9万7200円で据え置き。6月中旬に発売する。

リビングすべてのエンターメイントをマランツサウンドに

 “先進技術の投入”と“ライフスタイル”の両立をテーマに、「Dolby Atmos Height Vietualizer」「Bluetooth送信機能」「eARC/ALLM」「HDMIマルチインプット」「HDMIインプットオートリネーム」といった新機能を追加した。

 Dolby Atmos Height Vietualizerは、ドルビー公式のバーチャルサラウンド技術で、国内ではすでに、パイオニアなどが投入をアナウンスしている。天井スピーカーを設置できない環境でも、三次元的な(高さ方向の広がりを意識した)音場の再現ができる。専用のデコーダーを通じて、ドルビーアトモスで制作されたコンテンツの本領を発揮できるほか、高さ(ハイト)情報を持たない、それ以外のコンテンツもアップミックスにより、3Dバーチャルサラウンド化ができる。近い技術としてこれまで、DTSの「DTS Virtual:X」があったが、アトモス制作コンテンツには対応していなかった。秋をめどに後日アップデートする。

 eARC(enhanced Audio Return Channel)は、最新のHDMI 2.1規格にも含まれている技術で、テレビ側から出力されたドルビーアトモス/DTS:Xなどのデータを伝送できる。マーケティング担当の高山氏によると、「NetflixやAmazon Prime Video、iTunes Storeなど、テレビ側でドルビーアトモスコンテンツの再生に対応できる機種が増えているが、その再生をHDMIケーブル1本でつないだ、AVアンプでまかなえる点がメリットだ」という。

 eARCは、同社ミドルクラス以下のAVアンプでは初の対応。一方、ALLM(Auto Low Lanency Mode)は低遅延の伝送を行う技術で、ゲーム機との組み合わせにも適している。

従来機種からの進化ポイント

 HDMIマルチインプットアサインは、HDMI入力端子を選択した際に、映像はそのHDMI端子に接続している機器のものを流すが、音声は別のものに切り替えられる機能だ。例えば、映像はBDプレーヤーやHDDレコーダーのものを流しながら、音声はアナログ入力端子に接続したCDプレーヤーや内蔵チューナーなどに変えることができる。

 もともと米国サイドから要望があった機能で「フットボール中継を観戦する際、映像は全国中継されているものを見たいが、音声は地元のラジオ局などで提供されているもののほうがいい」といったニーズに応えられるという。また、仕事場やスポーツバーなどの場所で、テレビ画面には、長丁場のライブ放送などを流したままにしておき、音声はCDなどで再生中のBGMにしておくこともできる。重要なシーンになった際にはすぐ、迫力あるライブ音声に戻せる。また、紅白歌合戦などでお目当ての歌手の出番を待っているとき、スポーツ番組で得点が入ったら際にプレイバックする……といった用途にも便利だという。

 Bluetooth送信機能は、AVアンプで再生中の音を、ヘッドホンだけでなく、スピーカーとBluetooth機器の両方に出力できるというもの。スピーカーの音量はAVアンプ側で調節、ヘッドホン音量はヘッドホン側で調節する。つまり両者は異なる音量にできる。耳の聴こえが悪くなった家族と一緒にリビングでテレビを見る際や、少し離れた場所で家事や作業をしている人ともコンテンツを通じてアクティビティを共有できる点(つながっている感覚が得られる)がメリットになるという。

4K HDRやネットワークなど豊富な機能を継承

 4K Ultra HD/HDCP 2.3などにも対応。デノンとマランツグループで開発しているネットワーク再生用モジュール「HEOS」を利用することで、家庭内のNASに保存したハイレゾ音源やインターネット上の定額ストリーミングサービス(Amazon Music、Spotify、AWA)の再生、Alexa対応スピーカーとの連携もできる。また、HEOSモジュールを使いNASに保存したハイレゾ音源や、インターネット上の定額ストリーミングサイト(Amazon Music、Spotify、AWA)の再生、Alexa対応スピーカーとの連携ができる。AirPlay 2、ドルビービジョン/HDR10/HLGのパススルーに対応。

 実用最大出力100W(6Ω)、7chのディスクリートアンプを搭載(全チャンネル同一構成)。5.1.2chなど5通りのスピーカーは一に対応する。8系統のHDMI入力と1系統の出力、フロントとサブウーファー用に2.2chのプリアウト出力、MMカートリッジ対応のPHONO入力、ワイドFM対応のAM/FMチューナーなどを持つ。本体サイズは幅440×奥行き378×高さ110mm(アンテナを立てると高さは175mm)で、重量は8.4㎏。

地道な音質改善を継続

 音質面では、回路基板を全面的に見直して再設計した。周辺回路まで含む、膨大な音質関連パートをブラッシュアップしたという。サウンドマネージャーの尾形氏によると、「DAC回路とパワーアンプについては、構造・パーツのグレードアップを含む見直し、デジタル回路、プリアンプ、パワーアンプ、電源などについても基板の見直しを実施した」という。結果「S/N感が向上し、空間の見通し、透明感が改善」「音像定位、立体感の表現」「低域の量感とスピードのあるアタック感」などに違いが出るという。

 デジタル基板については、ノイズ対策/スペース効率なども考え、D/A変換部をHDMI基板から独立させたモジュールにし、ライザーカードのように縦向きにモジュールを差すことで、適切なレイアウト/パターンが得られるようにしている。

 透明感や空間表現などは、Hi-Fi機器の開発で培った技術を生かしたもの。また、フロントスピーカーのバイアンプ駆動などにも可能だ。マランツの調査によると、サラウンドアンプといってもすべてのユーザーが後方のスピーカーを利用しているわけではなく、25%が前方の2chのみ、9%がセンターを含んだ3chの利用となっており、4ch以上の利用割合は6割強にとどまる。スペースに制約があるリビングの事情を考慮し、センターがない4chのサラウンドやサブウーファーなどがない状態なども含め、柔軟性のある設置方法とその状態で最適な高音質を重視している。

 使用パーツという面では、プリアンプ部の電子ボリューム出力抵抗の変更、パワーアンプ部の帰還回路で電解コンデンサーの見直し、デジタル/プリ/パワーアンプ用の電源部では、プリアンプ用にデカップリングコンデンサーを使用、対設置用コンデンサーをフィルムコンデンサーにグレードアップ、ネットワーク電源の強化などを実施。そのほか、約200点使われている汎用電解コンデンサーのメーカー変更などの見直しも実施している。

 発表会ではフロア型のB&W「802 D3」を使った2ch再生のデモも聴けたが、従来機1609よりも余裕のある低域の再現を実感できた。また、特に低域と中高域に独立したアンプを使う、バイアンプ駆動では低域の明瞭さなどが増し、ピアノの音が歯切れよく明瞭になったり、休符など音の消えるべきところでは、ピッタリとユニットを止めるなど、静寂感の表現が向上しているのが分かる。結果、その上にある中音域、高音域の抜けの良さや音色の描き分けなども明確となり、AVアンプでは硬くなりがちな、高域も自然になる。ボーカルなども柔らかく透明感が出てきて好印象だ。

スリムさと高音質が受け、すべてのAVアンプでトップシェアを

  GfK Japanのデータでは、従来機種の「NR1609」はAVアンプ全カテゴリーで市場シェアNo1を獲得しているという(2018年6月の発売以降、2019年4月までの期間の累計出荷数で)。注目ポイントとしては、2chの使用率が25%と高い点だ。「映画のためだけのアンプではない」「リビングの生活を豊かにするマルチコントロールセンター」として、「スリムデザイン」「リビング機器のコントロール」「マランツサウンド」の3点を中心に訴求する考えだ。

 高さ105mmの薄型筐体は、リビングにも調和する。またリビングに置かれたテレビやプレーヤーだけでなく、ネットワーク経由あるいはゲームやタブレットで様々なソースを集中コントロールする機能が求められている。ブランドの目標である「純粋さの追求」、音質や機能に妥協を感じさせないつくりにしている。例えば、電源部のサイズは小さくてもクオリティを落とさない点を徹底しているそうだ。

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