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エンタープライズ前提に進化するSlack Enterprise Grid

14万人がSlackを使うオラクル、メールでもチャットでもない魅力を語る

2019年05月07日 09時00分更新

 Slackが大企業向けの機能強化を進めている。4月末、米サンフランシスコで開催された「Frontiers 2019」では、モバイル向け管理機能で、リモートワイプ、FaceIDなど他要素認証サポートなどの強化が発表された。Slack顧客のオラクルでは、営業を中心に約14万人が使っているという。

メールは溜まる、チャットは永続性がない

「メールは受信ボックスに溜まる一方、チャットは永続性がない」――オラクルのコーポレートアプリケーションサービス担当バイスプレジデントのPaul Donnelly氏は、Slack導入前の状況をこのように表現する。オラクルが社内で進めている”Make Oracle Cool Again(MOCA)”の下、Donnelly氏らは社員がどこに不便さやイライラを感じているのかを調べた。すると浮かび上がったのは、メール、チャットなどコミュニケーションでの問題だったという。

オラクルのPaul Donnelly氏(左)とSujith Abraham氏(中央)

 グローバルに拠点を持つオラクルにとって、時差があってもストレスなくコミュニケーションできるという点は重要だ。メールは記録が残るというメリットがあるが、コラボレーションのツールではない。社員はすでにWhatsAppやWeChatなどのメッセージサービスを使っているが、これらのメッセージサービスには検索機能がなく、リッチメディアのサポートもないため、業務では使えない。「メールの受信ボックスにはたくさんのメールが溜まっており、チャットも永続性がないので検索やデータを探すことができない。チームがコラボレーションするにあたって、大きな問題を抱えていた」とDonnelly氏は振り返る。

 Slackを選んだ決め手は複数あるというが、中でもSlackが企業顧客向けに用意する「Slack Enterprise Grid」は重要だった。Enterprise Gridでは中央からの管理ができ、さらにSlack上のインテグレーションにより様々なアプリケーションをスムーズに利用できる、とDonnelly氏はメリットを説明する。

 導入は2017年に開始し、現在では13万9000人が使っている。毎日160万件のメッセージが飛び交い、1万8000件のファイルがアップロードされているという。

 香港を拠点とするオラクルのEMEA & JAPA 戦略とオペレーション担当グループバイスプレジデントのSujith Abraham氏がユースケースの1つとして紹介したのが、営業担当の成功例の共有だ。ある地区の営業担当が顧客とのエンゲージなど優れた取り組みにより成果を出したなど、営業担当のサクセスストーリーを共有するというもの。コンテンツ、クリエイティブは簡単に揃うが、Slackという配信のチャネルを得ることで簡単に届けることができるようになったという。また大企業顧客を担当するアカウントはチームで動くことが多いが、Slackを利用してチーム間で取引のレビューなどを行なうことで、内部プロセスを効率化できた、とAbraham氏。

 Donnelly氏はさらに、新しくチームに人が加わった場合もチャンネルの履歴を見ながらすぐに状況を把握できるという点も評価した。それだけでなく、「わからないことを書けば、一人ではなく複数が回答する。これはコミュニティの感覚を育んでいる」とも。Abraham氏も「メールの場合は固くなるが、Slackなら社員同士が気軽に話しかけることができる」と続ける。Abraham氏のお気に入りのチャネルは”HongKong Happy Hour”――社員同士が勤務後に気軽に一杯出かけようと誘い合う文化が生まれ、社風にもいい影響を与えているという。

 Slack利用をどうやって促進したか――「メールは普及し固定化されており、禁止するわけにはいかない。そこで、段階的にSlackを動かすという計画を進めた」とAbraham氏は語る。Slackとは何か、どんな使い方があるのか、メリットは何かなどをチャンネルで紹介し、「気持ちよく移動してもらった」と振り返った。実装を主導したDonnelly氏は、成功のポイントとして「リーダーの関与とコミット」「啓蒙を楽しく・迅速にして急速に普及させる」の2点を挙げた。

オラクルではコーポレート、リージョンの営業チームとのコラボレーションでSlackを活用している

実装は大きく3つのフェイス(準備(Get Ready)、目標設定(Get Set)、開始(Go!))で進めた。Slackのカスタマーサクセスチームが大きな支援になったとDonnelley氏はいう

funマンガのようなコンテンツも用意して、Slack利用を推奨した

oracle3 Slack導入から少しして、メールとの比率が逆転した

大企業での利用を前提としたSlack Enterprise Gridの進化

 このように大企業でSlackを利用している例は、オラクルだけではない。Slackでエンタープライズプロダクト担当トップを務めるIlan Frank氏によると、有料顧客は8万8000社、このうち65社はFortune 100に名を連ねる大企業だ。

SlackのIlan Frank氏

 オラクルも利用している企業向けの「Slack Enterprise Grid」は、無制限のワークスペース、中央の管理、高度なセキュリティ企業を備えるが、Frontiersでは最新の機能強化も発表された。

 モバイルからのSlack利用を管理できる「Slack for Enterprise Mobility Management」では、Slack上にあるメッセージやドキュメントなどのコンテンツのダウンロードや複製の管理機能が加わり、ダウンロードや複製を阻止できるようになった。また、SlackアプリのログインにあたってFace ID、Touch IDやパスコードによる認証を加えられるようになった。セッション管理ではリモートワイプが可能になった。

モバイルアプリの管理を強化、リモートワイプ、コンテンツのダウンロードと複製を禁止するなどの設定が加わった

 規制順守ではHIPPAのサポートを強化し、保護すべきPHI(Protected Health Information)をファイルだけでなく、Slackメッセージでもサポートした。Frank氏によると、暗号鍵を自社で管理できる「Slack Enterprise Key Management」が2019年に発表されたことにより、財務など規制の厳しい業界でも使われるようになったという。

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