ダイナミック型イヤホンを覚醒させるパワー
複数のイヤホンを使って試聴したが、驚くほど音質に変化があったのが「DITA Dream」を聞いた時だ。インピーダンスは16Ωなのでスマホでも音量はとれるのだが、音量が出せるのとドライブできるかどうかは別問題である。
KANN CUBEの2.5mm端子を使ってバランス駆動すると、低域から高域までのタイミングが揃った、タイトな音を聞かせる。解像度も非常に高く、音の細部をどこまで見通せるイメージだ。
Dreamは、シングルダイナミック構成で、左右の特性を厳密に揃えているため、“音場感がいい”という特徴がある。KANN CUBEに接続すると、空間が立体的で奥行きも深い。
これまでのAstell&Kernのプレーヤーは、繊細な音まで再現する、圧倒的な情報量の多さで空間を表現するイメージだった。本機の場合は、厚みと実在感のある音だが、平面的にならず空間を感じさせる音だ。音場型か音像型かなど、古くから議論されていたが、油絵のような骨太のタッチで立体感のある音を描く、それがKANN CUBEが到達した世界である。
鳴らしにくいヘッドホン用のハイゲインではなく、あらゆるヘッドホンの実力を引き出すためのデュアルDAC+ハイパワーアンプであることを実感できた。
携帯プレーヤーの高性能化も限界に近づいたと思ったのだが、サイズや重さの制限を取り去れば、まだまだ音は進化することが実証された。その一方で、500g近い重さのプレーヤーをポータブルと呼ぶことに抵抗を感じるのも確かだが……。
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