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百年以上の歴史を持つ「プロダクト販売」は終焉を迎えつつある

サブスクとリカーリングの誤解、Zuora桑野社長が解きほぐす

製造業のサブスクリプション導入はいよいよ待ったなし

大谷:日本でもサブスクリプション型のビジネスが増えてきました。

桑野:ご存じの通り、国内でもサブスクリプションの導入は本格化しつつあります。以前、取材していただいたときは、国内のSaaSはfreeeやSansanくらいでしたが、この数年で一気に拡大してます。また、製造業においてもパナソニックのテレビやソフトバンク・トヨタの自動車でサブスクリプションの導入が始まり、小売りや飲食、ゲーム、メディアなど他業種にも拡がりつつあります。特に製造業のサブスクリプションの導入はいよいよ待ったなしになってきた感じです。

「特に製造業のサブスクリプションの導入はいよいよ待ったなしになってきた感じです」(桑野氏)

大谷:Zuoraの導入状況についても教えてください。

桑野:Zuoraに関しては、まずfreeeやSmartHRなどSaaS事業者の多くで採用されています。ライセンス販売やシステム販売から、クラウドやサブスクリプションへの移行するのをZuoraが支えており、国内でもデファクトスタンダートになってます。上場をきっかけに、Zuoraを使っていただくケースも増えてきました。最近では、製造業やメーカー、大手通信事業者、Webサービス事業者、IoT、スマートホーム、メディアなどの事例も増えています。

たとえば、コマツは建設機械の販売だけでは、将来的に成長は難しいという危機感から、「スマートコンストラクション」という新しい事業を立ち上げています。建設会社の困っていることを上流から下流まですべて解決しようという考え方です。

大谷:最近では大手メーカーでの導入も進んでいますね。

桑野:はい。先日、NECがサブスクリプションの基盤としてZuoraの導入を発表しました。彼らの持っているAIや生体認証などのテクノロジーをサブスクリプションで提供し、スピード感を出していこうという流れです。

また、リコーが1月に発表した新しい複合機は、いわば「複合機のテスラ」みたいなもので、どんどんバージョンアップします。しかも、彼らが持っているプラットフォーム上にいろいろなアプリケーションを載せることが可能です。グローバル展開でもわれわれのプラットフォームを使ってもらっています。

100年続いた「プロダクト販売」が終焉を迎えつつあるという認識

大谷:通信やインターネット系のサービスは、ある意味サブスクリプションサービスやりやすいと思うのですが。

桑野:通信事業者やWebサービス事業者は、もともと月額課金制で、確かにサービスやオプションもいろいろ持っているのですが、今まではこれらをうまく組み合わせられていませんでした。とはいえ、サブスクリプション向けのシステムを構築すると、とんでもないお金と時間がかかります。とある事業者に聞いたところ、新サービスは「初月無料」みたいなキャンペーンをやりますが、あれってシステム開発が追いつかないかららしいです(笑)。それくらいシステム開発の負荷は大きいんです。

その点、Zuoraを導入いただければ、さまざまなサブスクリプションに柔軟に対応できます。たとえば、うちのお客様であるDAZNさんは、もともとメニューに「解約」しかなかったのですが、「休止」を入れることで4割以上の人が多く戻ってくるようになりました。

大谷:確かに、解約が難しくて、意地でも辞めさせないみたいなサービスって、こちらも腹立ってきますよね(笑)。

桑野:そうです。「もう二度と使わない」という感情が生まれてくるんです。でも、NETFLIXもDAZNも簡単に辞められるって、簡単に戻って来られるということでもあるんです。そういったエキスペリエンスが重要なんですよね。

加えて、Zuoraが手がけたサブスクリプションの意向調査によると、グローバルに比べて日本は所有より利用を好む傾向にあります。日本人は気質としてサブスクリプションは受け入れやすいという傾向があるんです。

大谷:3年後はまた大きく変わっていそうです。

桑野:最近、百年以上続いたプロダクト販売が終焉にさしかかっているというお話をしています。そこを変えていかないと、企業の成長はないくらいの大転換期だと思っていますし、大転換期と捉えてくれるお客様が増えてきたというのが、われわれの認識です。

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