週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

SXSWやCESだけじゃない!スタートアップなら欧州を目指せ

「欧州のイベントに出るべき理由」ジェトロとスタートアップが語る

2019年04月05日 07時00分更新

スタートアップのフェーズによってイベントは異なる

 これら欧米のスタートアップイベントにはどういった違いがあるのか? 萩原氏は「CESはプロダクト寄りだし、MWCは商談の場所。MWCは参加費も高いので、本気の企業が集まっている感じ。一方で、SXSWは完全にフェスティバル」と語る。

MWCと併設されるスタートアップイベント4YFN

 山崎氏は「資金調達」「提携」「採用」など目的別でイベントを分類する。「資金調達であれば4YFNとか、Slush(ヘルシンキ)の方がいい。最近ではCESのEureka Parkが完全にスタートアップ祭り状態になっているので、投資家が集まっている」(山崎氏)。一方で、オープンイノベーションに関しては、課題共有型のVIVA TECHNOLOGYがユニークだという。「大企業がスタートアップに対して課題を提示し、それをクリアしないとそもそも出展できない。でも、受かると事業提携の可能性が出てくる」と山崎氏は説明する。

 実際、音声感情認識AIを展開するEmpathは、フランスの通信事業者であるOrangeのAIエージェントとうまく連携できそうということで、VIVA TECHNOLOGYでの共同展示が実現した。とはいえ、「もちろん、事業提携が進むわけではないし、VIVA TECHNOLOGYは1業種に対して1事業者しか出られないので、これで地元の地政学がすべてわかるわけではない」というのも事実。一方、ロンドンのTech Dayに関しては完全に採用目的で、AI分野に強いリサーチャーのいるケンブリッジとつながるべく参加しているという。「資金調達、提携、採用など目的に合わせて、こちらの表情も変えている」と山崎氏は語る。

 古川氏は、土地柄の違いとして「北米はスーツだと場違いな雰囲気だけど、日本や欧州はまだ背広も多い。意思決定のスピードは北米の企業は速くて、次にヨーロッパ。日本はやっぱり遅い感じがする」と語る。

 スタートアップメディア「THE BRIDGE」の池田氏は、「もともとスタートアップのイベントは投資家からの支援を求める目的が強かったのですが、一方でオープンイノベーションの隆盛とともにスタートアップイベントの大きめのブースを出して、スタートアップとの共創プロジェクトを披露するところも増えてきた」と指摘。オープンイノベーションを前提にしたイベントも登場しており、スタートアップイベント自体が分化している状態だという。

スタートアップメディア「THE BRIDGE」 池田将氏

 一方で、ソニーなど一部をのぞいて、日本ではこうした動きが低調。古川氏は、「日本でも大企業のベンチャー投資は増えており、CVC(Corporate Venture Capital)の中の人たちはすごく熱いけど、事業部に話を持っていくと、温度感の差を感じざるをえない。ベンチャーの技術を真剣に取り入れようと思っていないような気がする」と指摘。とはいえ、これは日本だけでなく、ヨーロッパも似たような傾向があり、長谷場氏も「ドイツでもPoCだけ作って、そこから先に進むのに時間だけが過ぎていくというスタートアップのぼやきを聞いた。日本と似てるなと思った」とフォローした。

「4YFN(4 Years From Now)」の名前が意味するスピード感

 今年ジェトロとして初めて20社の日本企業の出展を実現した4YFNだが、もちろん来年もそれ以上の規模を狙うという。モデレーターの長谷場氏は改めてパネラーに4YFNの魅力を聞く。

ジェトロ イノベーション促進課 課長代理 長谷場 純一郎氏

 魅力の1つ目は4YFNの主催者であるヨッシー・バルディ氏。1990年代、メッセンジャーの起源とも言えるICQを開発したのが、スタートアップ大国イスラエルのヨッシー・バルディ氏。「とてもキュートなおじいちゃんで、ファンは多いと思う」と池田氏は語る。

 萩原氏にとっては、ピッチ登壇のきっかけとなったイスラエルのスタートアップとの出会いが4YFNでのメモリアルな出来事だった。また、4年前に出会ったスタートアップのメンバーがすでに別のスタートアップで出展していたエピソードを披露。「4YFNって、4 Years From Nowの略。彼は自分が以前所属していたスタートアップを指して、あいつらまだあのブースにいるんだぜと言われて、今年3年目の僕はドキッとした。つまり、今後の4年間での成長を期待されているから、人も集まるし、お金も集まる」と語る。「今から4年」というイベント名の通りのスピード感で成長が求められ、そこにつぎ込まれる熱量があるという。

 木地谷氏は、「4YFNは2014年にスタートし、もう10倍くらいに参加者が増えています。とにかく熱量が高いんです。今年からMWCとオーガナイザーが同じになったので、来てくれる人の質がさらに多様になっている」と語る。そんな中、中国や韓国に対して、日本からは全然参加や出展がなく、残念に感じていたのが木地谷氏がジェトロのジャパンパビリオン誘致に関わったきっかけだったという。

 最後、長谷場氏はジェトロが参加する予定のイベントを披露。近々では6月27・28日のInnovfest(シンガポール)を募集しており、その後もSlush Shanghai(上海)、IFA NEXT(ドイツ)、Disrupt SF 2019(サンフランシスコ)、GITEX Future Stars(ドバイ)など、さまざまなイベントが目白押し。もちろん、websummit(リスボン)、4YFN(バルセロナ)など欧州のイベントも募集する。長谷場氏は、「ご興味あれば、われわれにコンタクトをとってほしい」と語り、セッションを締めた。

2020年度に参加予定のイベント

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事