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映像とドルビーアトモスの相乗効果は驚くべき体験

全米のプロたちも評価した、映画『スパイダーバース』のスゴイ音、日本語吹替版の音響監督・岩浪美和氏に聞く

2019年03月13日 20時00分更新

アトモスの効果はアクションだけではない、セリフと音楽に注目

── 『スパイダーマン:スパイダーバース』は、第91回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞して話題を集めています。ストーリーや映像はもちろんですが、今日ドルビーアトモス版の試写を拝見して、音響にもかなりのこだわりを持って制作した作品という印象を持ちました。プロの目線では、いかがだったでしょうか?

岩浪 ドルビーアトモスの音声に、とても向いた作品だと思います。

 『スパイダーマン:スパイダーバース』は、アカデミー賞のほかにも、 “ゴールデン・リール賞”の長編アニメーション部門を受賞しています。日本の方にはあまりなじみがない賞かもしれませんが、アメリカ映画界で音響編集・音楽編集をするプロフェッショナルが所属する「MPSE」(Motion Picture Sound Editors)という団体が主催しているアワードです。つまり、アメリカの最前線にいるプロの音響マンが「いい音だ」と認めている作品なんです。

 スパイダーマンは、空間(今回は時空も)を縦横無尽に動き回りますよね、ドルビーアトモスの技術を使えば、そういった動きに合った音を「ピンポイント」かつ「自由に」配置できるんです。これこそが見たかったスパイダーマンの音だという気持ちになりましたし、音楽を含めた、サウンドデザインも緻密です。僕も、音響に携わる人間のひとりとして、大いに感心させられましたし、とても勉強になりました。

── 近年のハリウッド映画では「アトモスらしさ」をアピールするものが、徐々に少なくなってきていると感じていました。しかし、今作はいい意味で「アトモスらしさ」が全開ですし、その魅力がとことん味わえますよね。

岩浪 サウンドデザインという意味では、選曲もそうですが、セリフと歌が被っているところはセリフの間だけ歌声が劇場中央に移動、セリフが終わるとまた自然に戻っていきます。あれだけ音を動かしているのに、音楽の聴こえ方がとても安定している点にすごさを感じました。

 アクションシーンが多い作品ですし、音楽もヒップポップを多用しています。だから迫力はあるのですが、バイオレンスな音じゃないんです。だから子供にも安心してみせられる作品になっていると思います。

 高度な音作りのノウハウがあるというか、やはり歴史が違うのでしょうね。映画音楽にヒップホップを使うのも、30年からの蓄積があります。この音を聞かされてしまうと個人的には、ちょっと悔しい思いをしています。もっと頑張らないと、と思いました(笑)

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