第248回
Ryzen Threadripper 2990WXとエキシビジョンマッチ開催
Xeon W-3175X徹底検証!クリエイター向けIntel最強28コアCPUは32コアに勝つ?
まとめ:何をしても切れ味バツグン! 時間をお金で買いたいプロクリエイターにとっては最高のCPU
以上でXeon W-3175Xの検証は終了だ。巨大で重い機材、悲鳴を上げる筆者の腰、そして遠慮なく回る冷却ファンの咆哮に苦しめられた検証だったが、やはりHEDT向け製品はパワーが正義。エンコードだろうがCGレンダリングだろうが、どんなに重い処理を任せてもまったく苦にならないモンスターパワーは最高だ。
特に動画エンコード系処理に関しては、アプリを選ぶThreadripper 2990WXに対して、Xeon W-3175Xなら好き嫌いせず高速で処理を終えてくれる。プロクリエイターであれば、CPUをThreadripper 2990WXに替えたからといって、作業のワークフローまで簡単に切り替えられるわけではない。Xeon W-3175Xはプロが時間を節約するための最強CPUと言って差し支えない。
だが、あえてここまで言及を避けてきたがコスト面の話をさせてもらえれば、これは如何ともし難い。Xeon W-3175XはCPUだけで約38.9万円、マザーボードも20万円ぐらいになると考えると、Threadripper 2990WX(約21.7万円)+X399マザーボード(3~7万円)がなんともお買い得に見えてくる。乱暴な話をすると、処理時間が2倍かかるのなら単純に2台買ってしまうという手もある。
もちろん、プロ向けのアプリの場合、PCの台数単位でライセンス料がかかるものもある。そのため、1台で速いXeon W-3175Xのほうがトータルでお得、ということも考えられる。このあたりはワークフローに組み込まれたアプリのライセンス形態によって、コスパが変わってくるだろう。
また、そもそも今回のXeon W-3175Xに関しては、Threadripper 2990WXと比較すること自体が無茶だという気もする。価格ベースならEPYCと比較すべきだが、そのEPYCはサーバー用として売られているものでジャンルが異なる。Xeon W-3175Xは、子供(HEDT)の喧嘩に大人(サーバー向けXeon)が子供のふりをして乱入してきたようなもので、もとよりバランスのとれた勝負が成り立たない領域。だから今回の対決は「エキシビジョンマッチ」なのだ……。
なんとかインテルがHEDT最速の座を名目的に奪還したような感じではあるが、インテルの春はそう長く続かないかもしれない。CESでAMDが発表した通り、メモリーやPCI-EなどのコントローラーをIOダイに集約させ、マルチダイ構成でもコンピュートダイのような不遇なコアを作らないZen 2ベースのEPYCのローンチが迫っているからだ。
Zen 2の詳細は大原氏の記事に詳しく書かれているが、さらにスループットが上がると期待されている。当然、EPYCのあとには次世代Threadripperが続くわけで、コンピュートダイという泣きどころが解消されると、果たしてこの勝負、どう転がるかわからない。
まだZen 2ベースの製品が存在しないためここからは空想となるが、AMDの目論見がうまくいけば、Threadripperの弱点は解消されるだろう。そうなれば「コスパ!コスパ!」と呪文を唱えなくてもThreadripperがHEDTにおける疑いようのない真の最強CPUになる可能性もあるのだ。もちろん、それに対するインテルのさらなるカウンターもあるだろう。今年後半の展開も楽しみだ。
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