製造業者との意識やスピード感の違いから生じるトラブルを防止
スタートアップの鬼門「量産化の壁」を破る、経産省Startup Factory構築事業早分かり
スタートアップにとってハードウェア量産は鬼門
スタートアップと聞けば、ITをベースとした新しいビジネスモデルの開発と、スピード感を持った事業展開をイメージするだろう。しかし、ものづくり系のスタートアップの場合、ハードウェアの試作や量産を担当する企業との間で、スピード感や考え方を共有できない、あるいは相手先の業界セオリーを知らない、といった理由を原因とするトラブルが絶えない。
そこでコネクテッドインダストリーの実現をスローガンとして掲げる経済産業省が、そうした問題に悩むスタートアップを支援する「Startup Factory構築事業」を展開中だ。
このStartup Factoryは、スタートアップがその持ち味を損ねることなく事業を推進できるようサポートするため、それぞれの強みを持った事業者が集まり、支援拠点の構築や事業者の連携支援などを行なっている。
ものづくり系スタートアップの最大の課題は「量産化」
これまでの市場では大手事業者による大量生産品が中心だったが、現在は多種多様な嗜好が反映され、多品種・少量生産が求められる傾向にあり、AIやビッグデータとの連係などを用いて、より付加価値の高いサービスを作っていく必要がある。その実現を担う事業者こそスタートアップだ。
しかし、スタートアップがハードウェア開発を進めていく上で問題となるのが量産化。製品を市場に投入するまでには、企画・開発から原理試作(プロトタイプ作成)、量産化のための設計と試作、そして量産し、その効率化を図っていくというプロセスがあるが、ここで最も大きな障害となるのは量産化設計・試作の前後にある「量産化の壁」だ。
製品を量産するためには試作や検証を繰り返しながら、部材調達、そして生産ラインの確保などの工程が必要となるが、スタートアップはこうした工程についての経験やノウハウが少ない。さらに量産化試作では様々な課題があり、それに対応できる生産技術や生産設備を持つ製造事業者との連携が必要不可欠だ。
しかし、そんな頼もしい事業者をどう探すか、あるいは候補が見つかっても交渉が不調に終わることも少なくないため、量産化試作のステップでつまづくスタートアップが多い。
こうした問題に対し、スタートアップが量産化に向けた工程を円滑に進めることができるように様々な支援を行なう仕組みこそStartup Factoryなのだ。
From 経済産業省~この事業を創設した背景 その1
河野孝史氏〈経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐(総括)〉
「現在の日本には、新たにモノづくりにチャレンジできる環境や支援者が不足しており、Startup Factory構築事業を通じて2つのコネクトを実現させ、事態を打開したいと考えています。
1つは、ハードとソフトのコネクト。複雑で高度なモノづくりの知見・ノウハウがない人に、必要な環境や専門家を提供することで、優れた着想の製品化をサポートすることが重要と考えています。
もう1つはベンチャー企業と大企業、あるいはアイデアがある人と町工場の職人とのコネクトです。大企業や町工場には多種多様なモノづくりのノウハウが蓄積しています。アイデアはあるがリソースがないという人たちとうまくマッチングすることが大事だと思っています。
この2つのコネクトを実現するプレイヤーを、“Startup Factory”として支援します」
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