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製造業者との意識やスピード感の違いから生じるトラブルを防止

スタートアップの鬼門「量産化の壁」を破る、経産省Startup Factory構築事業早分かり

2019年02月18日 11時00分更新

Startup Factoryの基本スキーム

量産化プロセスに必要な拠点・設備・事業者を連携

 経済産業省が進めるStartup Factory構築事業ではスムーズな量産化を目指すため、工程をワンストップで行なえるようにStartup Factoryへの参加事業者の募集とその連携を重視している。

 具体的には、ものづくり拠点にできる場所や設備の提供、ノウハウやリソースの提供、生産プロセスにおける相談窓口、小ロット製品の量産に対する工場間の連携支援が挙げられる。製品開発にあたり、まず何をどの会社と打ち合わせすればいいのかわからないスタートアップにとって、事業者や工場探しを支援してもらえるのは非常に助かるはずだ。

 このようなStartup Factoryの活動により、スタートアップは様々な事業者との対話・連携がスムーズになり、これまでボトルネックとなっていた量産化の壁も乗り越えやすくなるというわけだ。

量産に向けた試作・設計の支援拠点「Startup Factory」としておよそ40社が登録されている

From 経済産業省~この事業を創設した背景 その2

河野孝史氏〈経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐(総括)〉
 「これまでのベンチャー支援策というと、分野としてはWebサービスなどソフトウェア系の事業者を対象にしたものが先行していました。
 そんな事情もあって、モノづくりに関するアイデアがあってもうまくビジネスにできなかったという方や、どこに相談していいのかすらわからずに悶々とし続けているという方が少なくないのではと思っています。そういう方々にも、ぜひStartup Factoryを利用していただきたいですね」

スタートアップと製造業者、それぞれの事情

 Startup Factory構築事業では、これまでスタートアップと既存事業者の間で起こりがちだったトラブルについても調査し、参加事業者や有識者のノウハウを集め、スタートアップが安心して製品を作っていくための契約ガイドラインを作成中だ。

 よくありがちな例としては、スタートアップと製造業者のスピード感の差によるトラブルだ。

 スタートアップ側は、良いと思うことを次々と盛り込んで仕様を変えていくことが多い。例えばIoTは単にモノを作っているわけではなく、データやネットがモノとつながったその先にあることを、新たなビジネスとして考えているので、どうしてもスピードを重視して試作・検証したい。もちろんその結果、よりよい方策があればさらに改良を加えていきたいと考えるのが普通だ。

 しかし製造業者側には当然、技術的な裏付けの確認など手順をきちんと踏まえて進めたいという思いがある。そうしたギャップが最終的に折り合わず、協業が頓挫することも少なくない。

 また、スタートアップが量産試作品のイメージが違うために制作を担当している製造業者に修正を求めたところ、想像以上の期間と予算が必要になったという例も枚挙に暇がない。製造業者は量産向けのラインを想定した設備を作りながら試作するため、スタートアップにとっては小さな変更であっても、設備変更が必要になる場合はおいそれと対応できないからだ。

 こうした両者の知識や意識の違いから生じるトラブルがスタートアップのものづくりの妨げとなる。

スタートアップと事業者がスムーズに連携できる
契約ガイドラインを作成

 そこで、上記ようなトラブルを回避するべく、Startup Factory構築事業の一環として作成が進められているのが契約ガイドライン。企画・開発時の要件定義、原理試作、量産化試作、量産の各プロセスについて、そこで行なわれる内容の整理、よく起こる問題事例、それを予防する対策についてまとめている。

 さらに、知的財産権の取り扱いといったトラブルについても、弁護士をはじめとする専門家の意見が取り入れられており、事業全体がスムーズに進むガイドラインとなっている。

 この契約ガイドラインでは、ひな形として使える契約書フォーマットも付いているので、契約内容の作り方がわからないスタートアップでも有効に活用できるだろう。なお、契約ガイドラインは2019年3月の公開を予定している(執筆現在)。

From 経済産業省~この事業を創設した背景 その3

河野孝史氏〈経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐(総括)〉
 「Startup Factory構築事業によって、ベンチャーはものづくりがわかり、大企業はイノベーションを実現させ、町工場は再び活性化する。その中心となるプレイヤーは、これまでの意見交換や先行事例などに基づくと、『モノづくりで日本をもう一回立ち上がらせる!』という強烈な熱意を持った人であることが必要と感じています。
 そういう意味で、ベンチャーも大企業もなく、ソフトもハードもなく、わけへだてなくさまざまな人たちとコミュニケーションをとりながら周囲を牽引していけるような人に、ぜひ本事業を活用いただきたいですね」

 以上、スタートアップの側から見たStartup Factory構築事業のメリットをまとめてみた。クラウドファンディングの隆盛などもあり、スタートアップによるものづくりは盛り上がりを見せている一方、前述した通り、量産時に起こるトラブルも目立つ。「スタートアップならではの量産トラブル」に悩む企業は、本事業を上手く使いこなしてほしい。

 次回は、現在作成中の「契約ガイドライン」の概要、そして作成に携わっている専門家の意図・思いをお伝えしたい。

Startup Factory構築事業の成果報告イベントが3/14(木)に決定

スタートアップ、支援者が集まる交流会も同時開催
詳細は下記をご参照ください!

〈スタートアップファクトリー構築事業 成果報告イベント〉

■関連サイト

(提供:環境共創イニシアチブ)

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