相手のリテラシーに合わせた丁寧な説明で、ITアレルギーをなくす
ドアの開施錠や勤怠管理に関わるAkerunは、担当窓口は総務部など非IT部門になるケースが多く、テクノロジー用語を多用したメッセージは伝わりにくい。そこで、顧客とのコミュニケーションでは、担当者のリテラシーに合わせた平たい言葉を選び、ITアレルギーを払拭することに最も気を遣う。
マニュアルやサポートページを用意しても読んでもらえるとは限らない。たいていの人は、使い勝手が悪くてもサポートに問い合わせをする前に解約してしまう。カスタマーサクセスでは、クラウドのデータから顧客の利用状況を常に確認し、利用頻度が低ければ、顧客のオフィスへおもむき、原因を探り、勉強会を開いて使い方をレクチャーすることもあるという。
大手企業向けには、専任のエンジニア、営業担当、サポートメンバーの3人で構成するテクニカルアカウントマネジメントチームを設置し、顧客の課題の管理、定例会の実施、導入を支援する体制を整えている。
サービス品質とスピード感を大切に、長期的な視野で地道にシェアを拡げる
そのほか既存顧客へのケアとしては、導入事例を切り口にしたウェブコンテンツやユーザー会などで、徐々に認知度を広げていくという手法をとっている。
「サポートをウェブ上のみに完結させて投資する手法は、そろそろ飽きられている。そこで、あえてアナログを大切にしたい。まずは相手の抱えている課題を聞き、その解決策として、我々のサービスの利用の仕方を具体的に届ける、ということを丁寧にしています」(服部氏)
スタートアップにとって、早い段階で多くのユーザーを獲得することにとらわれがちだが、いきなりスケールすると、サービス品質やスピード感が損なわれる危険が伴う。服部氏は、市場に届けられる品質を維持したいという考えだ。
鍵や錠は、オフィスにあって当たり前。だからこそ、API連携によって、空調や勤怠管理などバックオフィスの課題解決などにも拡張できる。勤怠管理との連携は、すでに提供済み。予約管理システムと入退室管理システムを連動させて鍵を発行する、といった使い方も可能だ。今後は、連携したサービスを広げていき、オフィスになくてはならないソリューションにしていくのが目標だそう。
現在の顧客層は、中小企業が中心で大企業への導入はまだまだ少ないが、フォトシンスでは、既存顧客の事例を収集し、大企業獲得へ向けたマーケティング施策にも力を入れているという。数千人規模の社員を抱える大企業は、ベンチャーにセキュリティを任せることに不安があり、技術の先進性や堅牢性をどんなにアピールしてもそれを払しょくするのは困難だ。カスタマーサクセスチームが地道に活動していくことが高い信頼へとつながり、いずれは大企業に受け入れられるIoTサービスへと進化していくだろう。
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