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日本市場にマッチしたカスタマーサクセスを構築

IoT×SaaSをカスタマーサクセスで変えたフォトシンス

2019年01月23日 07時00分更新

SaaSビジネスがスケールするには、顧客満足度を上げ、契約を継続し、新たなファンを獲得することが肝心。その役割を担うのがカスタマーサクセスだ。スマートロックを用いた「Akerun入退室管理システム」を提供する株式会社フォトシンスでは、約1年前からカスタマーサクセスチームを設置し、順調に解約率が下がってきているという。同社でカスタマーサクセス部の立ち上げを担当し、現在もチームを牽引している服部貴之氏にお話を伺った。

株式会社フォトシンス カスタマーサクセス部部長 服部 貴之氏。株式会社カスペルスキー、株式会社 HDE在籍中に米国でカスタマーサクセスを学び、帰国後にカスタマーサクセス室の設置を手掛ける。2016年に株式会社フォトシンスに入社し、カスタマーサクセスチームの立ち上げを担当

 「Akerun入退室管理システム(以下、Akerun)」は、後付けのスマートロックを使った法人向けのクラウドサービス。セキュリティに大きな費用がかけられない中小企業でも気軽に入退室の管理ができるのが特徴で、現在、2500社以上の企業が導入している。

 同社の強みは、顧客からのあらゆる要望に対して、いち早くサービスの改善や新機能を提供していること。

 IoTのような新しいソリューションは、実際に運用してから初めて課題が見つかることも少なくない。これまで顧客の声によって、開施錠の高速化、管理画面の改善、NFCの登録ユーザー数の上限を増やす、といった改善を重ねているが、いずれも短いスパンで新機能としてリリースしている。

Akerun

IoTスタートアップだからこそ、アナログ的なアプローチが重要

 こうしたスピード感のある対応を可能にしているのが、カスタマーサクセスの存在だ。

 「カスタマーサクセスとお客様との関係は、契約した瞬間から始まります。Akerunは初期費用ゼロで後付けできるので、『3ヵ月だけ試しに使ってみよう』というお客様が一定数いらっしゃいます。こうしたがお客様が使っている間に、費用対効果が高いと感じてもらえれば、追加の契約や継続につながります」と服部氏。

 カスタマーサクセスのミッションは、顧客体験の最大化にある。サービスをより長く使ってもらえるように、開発や営業と連携してあらゆる施策を打つのが役割だ。顧客からの声を吸い上げる仕組みをつくり、サポートにも従来のメールだけでなく、ビデオチャットを導入した。さらに、ユーザー会の開催、オンサイトでの現場訪問なども実施している。

 「実際のIoT機器導入では、初めて触る方が多い。まずはどんなサービスなのかを知ってもらうために、丁寧に説明するように努めました。その結果、1年前に比べて解約率は下がり、顧客満足度も上がっています」(服部氏)

 従来は、契約後に製品が届き、不明点等があれば顧客から電話をもらっていただけだったが、カスタマーサクセス立ち上げ後は、製品が届くタイミングでコンタクトを取り、導入時の支援、利用状況に応じてサポートやプロダクトの改善などを行なっている。こうした丁寧なコミュニケーションを続けることによって、「所詮ベンチャーのサービスだから……」という顧客側の猜疑心を解きほぐし、信頼へとつなげている。顧客がファンになり、新しい顧客を紹介してくれることもあるという。

 「スタートアップだからといって、思考が停止してはダメ。IoTやSaaSなど横文字の新しいテクノロジーはもてはやされるけれども、それを届ける先のお客様は、“入退室の管理をしたい”、“セキュリティに不安を抱えている”といったアナログの課題を抱えている。それを解決する技術であることを、いかにわかりやすく、平たい言葉でお伝えするかが大切です」

 服部氏のこのようなカスタマーサクセスに対するスタンスは、フォトシンスへの参画で新たに生み出されたものだ。では、どのような背景がそこにはあったのか。

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