米国流では通用しない、日本的なカスタマーサクセスの手法を模索
そもそも服部氏がフォトシンスに加わったのは、1年3ヵ月前。当時はスタートアップということもあり、サービスはリリースされているが、最低限のサポート体制を整えるのが精いっぱい。顧客の声を定量的に広い、改善のサイクルを開発と連携するという部分までは回っていなかったそうだ。そこで、服部氏は、カスタマーサクセスチームの立ち上げに着手した。
部門ごとに縦割りの組織が前提では、連携がうまくいかず、効果が上がらないケースもあるが、スタートアップは、新しい取り組みが受け入れられやすく、少人数のため部門感の垣根がない。フォトシンスも、立ち上げ当初から社内の抵抗がなく、スムーズに各部門と連携して取り組むことができたそうだ。
また服部氏がカスタマーサクセスチームの設置を手掛けるのは、2社目だった。初めての立ち上げでは、米国流のカスタマーサクセスの手法をそのまま適用しようとして、うまくいかないこともあったという。その経験を活かし、フォトシンスでは、日本人の行動に合わせたアプローチを心掛けている。
たとえば、米国人に比べて、日本人はあまり感情を表に出さないため、ウェブの問い合わせやアンケートでは、ユーザーの本音を拾いにくい。不具合を感じていてもサポートに問い合わせをすることなく、静かに解約してしまう。いわゆる「サイレントカスタマー」が非常に多い。
だがサイレントカスタマーの抱える課題は、クラウドのデータから利用状況を分析することで、ある程度、導き出せるという。服部氏のチームは、データから得られる仮説をもとにサイレントカスタマーへの対策を立案し、直接訪問することで潜在課題の掘り起こしと顧客ケアを重視している。
IT系のサービスは、ウェブを介して顧客とコミュニケーションをとるのが一般的だ。対してアナログな顧客対応は、時代に逆行しているようにも見えるが、IoTでの顧客データ分析が加わることで、様相が変わってくる。
「高速で仮説を立てて、すぐにアクションがとれるのがSaaSの強み。ユーザーが離れてしまう前に対策が打てるように、スピード感を大事にしています」(服部氏)
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