演奏の興奮とニュアンスが伝わる
Sparkの聴きどころは、このトレーラー映像でもピックアップされている、5:30付近からの展開。ピアノ・ドラム・ベースの“鬼気迫る、掛け合い”が続くが、普通のヘッドホンでは、ベースとバスドラムの音が混濁しがちでなかなか再現が難しい。
私物のULTRASONE「Signature DXP」が手元にあったので、試しに聴き比べてみた。低域がよく出るSignature DXPの音が、なんだか軽い調子でもの足りなく思える。ベースやキックが鳴っているのはもちろん分かるし、十分満足できていた音のはずなのだが、音の立ち上がるタイミングやアタックの強さ、音程感までハッキリわかるSignature エアモーションと比べると不明瞭に感じてしまう。
Signature エアモーションがスゴイのは、普通のヘッドホンではおそらく感じ取れない、リズムの合間に入れてくる、ベースのちょっとしたテクニックやニュアンスまでも再現している点だ。ここが音楽的な引っかかりになって、セッションを演出していたのだという発見があった。
また同じ低音でも、ベースの広がる範囲とキックの広がる範囲は異なっており、その描き分けも明確だ。Sparkは、ややもするとピアノとドラムの掛け合いのように聴こえてしまうが、このセッションの醍醐味はベースも交えた三つ巴の戦いなのだと気付く。
一方、ハイルドライバーらしさを感じたのは、ハイハットやシンバルのリアルな音色だ。これもトレイラー映像に入っているが、楽曲では6:30前後から後に注目。金属的な音色が、周囲と混じらず、際立って聞こえる。“くもり”や“なまり”とは無縁のもので、極めて明晰に空間に立ち上がる。反応が速く、歪みの少なうハイルドライバーの効果が表れているのだろう。
前述のSignature DXPや、SENHEISERの「HD 800 S」と聴き比べてみたが、この音もなかなか再現が難しいようだ。普通のヘッドホンでは、シンバルの音が平板でつぶれた感じになったり、鈴のように芯のない鳴りになってしまうかもしれない。
Spark×Signature エアモーションのサウンドは、圧倒的な低域の上にこういったディティールが積み重なった、“絶対的なリアリティ”を感じさせるものだった。細かく書き始めればきりがないが、ひとことで言えば、音というよりも演奏を目の当たりにした体験が得られるものだ。セッションが実施されているスタジオの中に、プレイヤーと至近距離でいるような錯覚に陥る。
偶然選んだソースだったが、「Signature エアモーションはこのSparkを再生するために作られたのでは?」と思ってしまうほどのはまり具合だった。
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