『新潟日報』から10回もので「食」についての短期連載のお話をいただいた。新聞のコラム連載は、『朝日新聞』の夕刊で3年半もやらせてもらったことがあるが、独特の文体があると思う。400文字とか500文字とかそんな感じなので、ツイッターほどではないが省略形の表現になる。
新聞で「食」といえば、『美味しいんぼ』の「究極VS至高」みたいな感じで、海原雄山の喋りみたいな文体で書きたくなったりもする。あれは北大路魯山人の文体模写だと思うので、それはおそれ多い気もするが(ちなみに、私がアジア食を中心に食べ物写真をFBにあげると、たまに「いいね」をくれるのは魯山人ゆかりの辻留の女将だったりするのだが)。
新潟日報は、事実上県に1紙しかない地方紙で発行部数も43万部もあるそうだ(ABC公査)。だから、私が、新潟県人だからというようなことが執筆依頼の理由ではないようだ。食べ物で私にコラムのお話があるとするとカレーかもしれない。私が編集長をつとめていた『月刊アスキー』編集部では、毎晩のように麹町アジャンタのカレーが食されていた。そのことが頻繁に誌面にも登場していて業界ではそれなりに知れ渡っていたからだ。
あるときいつものようにアジャンタでマトンカレーを食べていると、少し離れた席から若者が寄ってきて「アスキーのエンドウさんですね?」と聞いてくる。スプーンを止めて、「ハイ」と私。「富山県に住んでいて毎月『月刊アスキー』を読んでいました。就職して東京に住むようになって、今日、アジャンタでマトンカレーを食べたことで読者としてまっとうできました」と言ってその若者は席に戻って行った。
もっとも、食べ物については書きたいことはほかにもたくさんある。いまや秋葉原にもある青島食堂については、1970年代に長岡の宮内駅前にあった頃から食べていると先輩面してみたい。飯田橋ハライコの冬限定ソーセージや仕事で毎年でかけた台湾の魯肉飯の話も書かないわけにはいかない。連載の第1回は、「シン・ゴジラと新之助」なんてタイトルの原稿を送ったのだが(新之助は話題のお米の名前)。
新潟日報で食べ物の話が書けたら、あとは上野のタウン誌『うえの』に書かせてもらえたら本望だ(コラムは自由で楽しい)。上野で思い出した。1本だけここに先出しさせてください(新潟日報さんすいません)。こんな調子の話を書かせてもらっているという例としてである。
「殻付きマカダミアナッツを割る方法」
海外旅行が好きな人は、同じところに何度も出かけたりする。私の場合は、それは香港である(数十回は出かけている)。そんな香港好きな人たちの間で、ここ1年ほど人気の土産が「殻付きマカダミアナッツ」だ。
マカダミアナッツは、外皮が硬くクルミ割り器を使っても簡単には割れない。一説には、殻付きマカダミアを割る最良の道具は水道管などの塩ビパイプを切断する専用工具だそうだ。ところが、話題の香港のマカダミアは殻に一個一個ノコギリで一定の切れ目が入れてある。何かを挟んでひねるとカパッと割れるのがちょっとした快感だし、すき間からまぶされた岩塩(?)が絶妙なバランスで旨い。
上野アメ横のナッツ専門店小島屋でこの香港風は「おいてないか?」と尋ねてみた。すると「これですか?」と出してきて「うちでも入れたくて仕入れルートを探している」と言われた。餅は餅屋! いまのところ、香港の正隆行や金鳳涼果というお店で買える。
連載は、12月14日から来年にかけて掲載される予定になっている。今日、無事第1回が掲載されたらしい。新潟のみなさん、読んでねー。
遠藤諭(えんどうさとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。雑誌編集のかたわらミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』など書籍の企画も手掛ける。アスキー入社前には80年代を代表するサブカル誌の1つ『東京おとなクラブ』を主宰。『カレー語辞典』(誠文堂新光社)に名前で項目が立っているカレー好き。著書に、『近代プログラマの夕』(ホーテンス・S・エンドウ名義、アスキー)、『計算機屋かく戦えり』など。趣味は、文房具作りで今年1月、Kickstarterのプロジェクトで195%を達成して成功させた。
Twitter:@hortense667Mastodon:https://mstdn.jp/@hortense667
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