米国では会社を立ち上げたら、最初にサインアップすると言われる「Hubspot」。同社が提唱する「インバウンド手法」のメリットと、マーケティング、CRM、営業支援などをまとめたオールインワン型の強みについてHubSpot Japanの伊田 聡輔氏に聞いた。
消費者はもはや企業の情報を信頼していない
2002年にボストンで設立されたHubSpotはマーケティング・CRM・営業支援などのツールをSaaS型で提供するソフトウェア企業だ。現在は世界に8箇所の拠点を持っており、日本法人は2016年に設立されており、ほとんどが電話やTV会議を用いたインサイドセールスでビジネスを拡大しているという。
HubSpotが提唱している「インバウンド手法」は、企業側が提供する情報と消費者が求める情報と大きなギャップが生じているというマーケティング的な課題意識から生まれている。「たとえば、Googleで企業を検索すると、広告のリンクと企業サイトのリンクの2つがだいたいトップに来ます。どちらも同じリンクなのに、広告リンクってなんとなく避けますよね。これって企業が送りつける情報に、買い手が抵抗感を感じている現状を表していると思うんです」と伊田氏は語る。
一方で消費者が信頼を置くのは、むしろ口コミや知り合いの紹介など。そのため、HubSpotのインバウンド手法では、買い手がほしい情報を適切な形で提供し、プロモーター(推奨者)に転換させるというコンセプトに立脚する。消費者のシグナルを企業側がきちんとキャッチし、それに合わせて提供する情報を変え、売り手側と買い手側の情報のギャップをなくしていくのがインバウンド手法の価値だ。
そしてインバウンド手法を実現するためのCRM、マーケティング、セールス、カスタマーサービスをオールインワンで提供するのがHubSpotだ。
フルセットのCRMツールを無償化した効果とは?
HubSpotのスイートにはCRMツールの「HubSpot CRM」、マーケティングツールの「HubSpot Marketing Hub」、セールスツールの「HubSpot Sales Hub」、カスタマーサービスツールの「HubSpot Service Hub」などが含まれており、ユーザー規模にあわせて「Starter」「Professional」「Enterprise」を導入する。これらのツールを利用することで、消費者を惹きつけ(Abstract)、信頼関係を築き(Engage)、そして満足させる(Delight)というインバウンド手法の一連のサイクルを高速に回すことが可能になるという。また、CMSの機能が搭載されているのもユニークだ。「見込み客を得て、商品を買って、ハッピーカスタマーになって、また新しいお客様を呼ぶみたいないわゆるカスタマージャーニーをオールインワンで提供するというコンセプト。多少盛った表現ですが、SalesforceとMarketoとWordPressを合わせたツールですかね」(伊田氏)。
特筆すべきなのは、昨年このうちCRMツールを無償化したことだ。まずは無償でCRMを使ってもらい、ほしい機能を持つソフトを規模に合わせて購入するというフリーミアムモデルを採用している。「昨年始めたばかりで、ずいぶん思い切った施策だと個人的にも思いましたが、チームで使っているうちの1/4は有償版に乗り換えてくれています」(伊田氏)とのことで現時点ではうまく機能しているようだ。
マーケターに人気の「INBOUND」というプライベートイベントでは、今年もHubSpotのさまざまな機能強化が発表されている。「組織構造が複雑なエンタープライズに向けたやや機能が欠けていたので、成長してもそのまま使い続けることができなかった」(伊田氏)とのことで、各ツールの強化とともに階層化組織や複数通貨への対応、シングルサインオンなどEnterprise版の強化を実施した。また、動画対応を強化し、HubSpot上で作成とホスティングが可能になっている。
初めて使うCRMから成長しても使い続けられるスイートに
HubSpotサービス開始当初から、メインの顧客はB2Bのスタートアップだ。伊田氏は「米国のスタートアップはまずHubSpotにサインアップして、顧客や取引先の情報を登録するところから始めます。獲得したリードに対してメールを送りたいとか、サイトでのお客様の行動になんらかのアクションをかけるといった、いわゆるマーケティングオートメーションの機能が欲しいと考えたときに、われわれの有償サービスをご購入いただくというパターンが多いです」と語る。
スタートアップの成長とともにツールの利用も深化し、資金調達してより成長を志向するためのコンテンツマーケティングを進めたり、獲得したリードを精査して、より売上に貢献する施策を打つといった場合に有効活用されているという。
日本ではすでに700社という顧客を得ており、日本法人の陣容もすでに20名以上に拡大している。今後の方向性について伊田氏は、「顧客管理、営業、サービスまで含めて、インバウンド手法を認知させていきたい。その上で、それを実現するのであれば、HubSpotが最強という位置づけになりたいです」と語る。
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