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「北海道だからこそ挑戦できた」実験の背景や現状、将来のビジョンをカタクラフーズに聞いてみた

天然物に負けないAI・IoT活用サクラマス陸上養殖実験

2018年11月30日 09時00分更新

稚内のサクラマス陸上養殖は既存の養殖とは一線を画す

 なぜ稚内で実証実験を行なうのか。無論カタクラフーズがそこに本社を持ち設備を持っているからだが、それだけが理由ではない。サクラマスは養殖が難しい魚種で、特に水温管理には細心の注意が求められる。水温が20度を超えてはならないというのが、サクラマス養殖の常識だ。

現在は実験段階ということで100匹規模の養殖が行なわれている

 「本州ではサクラマスの陸上養殖がすでに行なわれていますが、寒い時期に限られています。川で稚魚を捕獲し、海水で半年間、寒冷期だけ養殖して出荷するのです。しかし稚内なら、今年の猛暑でも水温は最高23度。20度を少し超えてしまいますが、それでも約7割のサクラマスが夏を越せました。つまり稚内なら半年ではなく、通年での養殖ができる可能性があるのです」(猪股氏)

 天然のサクラマスは川から海に出て、1年間回遊した後、産卵のために川に戻ってくる。半年間の養殖では、小ぶりなサクラマスしか出荷できなかったが、稚内なら1年間養殖し、天然物に負けないサイズのサクラマスを出荷できる可能性があると考えたわけだ。

 海水を汲み上げ、一時貯蔵して砂を落とし、水槽に流し込む。あふれた水は貯水槽や海へ還元される。これらに使われているのは、閉鎖した肥飼料事業で使われていた設備を流用したものだ。海のすぐ近くにあるため、豊富な海水を使って”源泉掛け流し”方式で養殖しているのも、今回の実験の特徴のひとつだ。他地域で行なわれる一般的な陸上養殖では、海水を濾過して循環させることが多い。

 「海水をそのまま流し込めるので、プランクトンなど天然の栄養素も取れるというメリットもあります。反面、海の状況がそのまま水槽に反映されてしまうので、海が荒れている日は水槽の水もにごりが多くなります。色々な意味で、自然に近い姿での養殖なんです」(猪股氏)

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