全社でサイボウズの「kintone」を導入し、ノンプログラマーも含めた社員自らが積極的に業務改善を進めているメルカリ。最近は複数のWebサービス同士を連携する「Zapier」を導入することで、作業の自動化を加速させている。今回はリーガルでのkintone導入事例について話を聞いてきた。
業務改善ツールとして根付いてきたkintone
メルカリのkintoneとのつきあいは古い。さまざまな手段で行なわれてきた各種申請を統一し、急成長と採用ラッシュを支えるコーポレート部門で抜けや漏れがないようにkintoneが導入されたのは創業から日が浅い2015年。以来、情報システム部にあたる社内ITチームの支援の元、多くの部署がいろいろな形でkintoneを利用しており、業務改善ツールとして定着している。
もっとも先行して導入した経理では、立て替え申請や支払い依頼などのアプリを作成しており、各部署の請求書をkintoneに登録し、タイムスタンプをプラグインで押印したPDFとともに承認フローを動かしている。また、総務では入社や退社のタスクを管理したり、名刺発注、備品発注、オフィスのイベント利用などさまざまな業務フローがkintoneで管理されている。
そして、今回紹介するのはリーガルの事例だ。リーガルでももともと捺印管理にkintoneが利用されていたが、社員がkintoneを直接利用する頻度は低かったという。そこでkintoneと社員が普段から使っているSlackを連携させ、より効率的に使おうというのが今回の事例になる。
メルカリ リーガルの伊田愛久美氏は、今回のkintone導入の背景として「リーガルへの依頼がGmailやSlack、JIRAなどさまざまな形でやって来るので、それらを細かく追うのが大変になってきました。ちょうど人数も増えて、契約書の件数も昨年に比べて5倍近く増えたので、これは一元管理しなければ見落としが出てしまうと思いました」と語る。
Zapierの活用でkintoneのコメントをSlackに
伊田氏が協力を依頼したのが、メルカリ ソフトウェアエンジニアの根本 征氏だ。根本氏は、サービスや社内業務の自動化を担当するエンジニアで、開発者に向けたテストの自動化や社内の生産性を上げるためのツール導入を進めている。根本氏は、「kintoneのよいところは情報ややりとりが一元化されるところ。でも、社員は毎日kintoneを直接触っているわけではないので、普段コミュニケーションツールとして使っているSlackとどう連携できるのかが鍵でした」とのことで、kintoneとSlackの連携も含め、作業の自動化を実現するために利用しているのがZapierだ。
2017年から導入している自動化ツールのZapierはトリガーとアクションを組み合わせることで、Webサービス同士を連携させるワークフローの機能を提供している。IoT系サービスと連携させて日々の生活を便利にしていこうというIFTTTに対して、ZapierはWebサービスを連携して、作業を自動化しようというコンセプト。「海外サービスとの連携も多く、kintoneもZapierとの連携もサポートしています。kintone標準で作れないワークフローも、昨年対応したWebhookを利用することで実現できます」と根本氏は語る。
具体的には、kintoneにコメントに追加されると、Slackのチャンネルに通知される。「通常だと誰に宛てた通知なのかわからないのですが、今回の連携ではkintoneのメンションからメールアドレスを取り出して、Slackにメンションを付けて投稿します」(伊田氏)とのことで、大量の投稿でも自分に関係するコメントだけを確実に抽出することができるようになっている。
現場でクラウドサービスを試行錯誤できる自由な社風
メルカリではZapierやkintoneを全社で活用している。「性善説」を重視する社風もあり、社内のITを担当するチームに利用申請すれば、すぐにアカウントが払い出され、現場で試せるという環境だ。こうした中、ノンプログラマーを含め、250名以上のメンバーが400以上のワークフローを作成し、日々の作業を自動化しているという。
根本氏は、「Zapierのよいところは、コードを書かないノンプログラマーでも簡単にワークフローが作れ、きちんとメンテナンスできるところだと思います。会社も業務もどんどん変わっていくので、ワークフローも変えなければならない。こういうときでも、エンジニアに頼らず、現場で作業を自動化できるのがメリットです」と語る。
業務部門の伊田氏も、「メルカリもビジネス分野ごとのグループ会社ができ、リーガルも分野ごとに担当が分けられるようになりました。こういった変化があっても、各担当者がZapierを使って自らワークフローを変更できます」と語る。急成長するメルカリのビジネスを支えていたのは、kintoneやZapierといったクラウドサービスに加え、現場で試行錯誤できる自由な社風があった。
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