上野優華、いい音で録っていい音で聴く!!
80万円の真空管マイク「U67」で特別録音、そしてサプライズも……!?
伝説となったノイマンの真空管マイクを試してみる
まずはマイクについて。代表的なメーカーは、日本で言えば、ソニーやオーディオテクニカ。海外ではシュアやAKG、ゼンハイザーなどがあります。メーカー名を聞いて「あれっ!?」と思った読者もいるかもしれません。そう、どれも高音質なヘッドホンの開発で評価を得ているメーカーばかりです。
前回の記事でも少し話題が出たように、マイクの構造はヘッドホンやスピーカーの構造ととても近いものです。違いは、入口と出口、つまり電気信号で揺らしたダイヤフラム(振動板)で「音を出す」か、この振動を電気信号に変えて「音を記録するか」という点だけです。方式についてもヘッドホン同様、ダイナミック型やコンデンサー型があり、特性などに違いが出ます。音圧感があってしっかりとした表現、あるいは音の細かな部分までとらえる繊細な表現など、エンジニアは用途に合わせて適切なマイクを選択しているのです。
そんな世界のマイクメーカーの中から、今回の企画のために用意したのが、ドイツ・ノイマン(NEUMANN)の「U67」というマイクです。
ここで少しU67について紹介します。ノイマンは現在ゼンハイザーのグループで、スタジオの標準機種と言える、高級コンデンサーマイク「U87Ai」を製造しています。このU87シリーズの前身であり、1960年代に旋風を巻き起こしたのがU67です。
伝説の真空管マイクとも言われるU67。支持された理由は、音のニュアンスを繊細にとらえ、声も楽器も対応できることに加え、3つの指向性が選べ、ローカットフィルターを持つなど当時のマイクとしては高機能かつ汎用性が高かった点です。
かつては「U67を持っているから、このエンジニアに頼む」こともあったようです。また、米国のエンジニアで、グラミー賞を20回以上受賞したアル・シュミットは「もし1本しかマイクを使えないならノイマンのU67を使う。もっとも汎用性の高いマイクだから」という言葉を残したそうです。アル・シュミットはイコライザーをほとんど使わず、マイク選択とセッティングで音作りをすることで知られています。
U67の製造は1971年に終了しました。1993年に一度「U67S」として限定再発売されましたが、その血脈は途絶えていました。しかしビンテージマイクとして今でも好んで使うエンジニアも多く、メンテナンスを重ねながら、30年、40年の歳月を経て使い続けているスタジオもあります。
そして2018年10月。そんな伝説のマイクU67が復活しました。価格は80万円(税抜)と超高額ではありますが、再設計された電源部を除いて、1960-1971年当時と同じ仕様で、手作業のはんだ付けなど作り方も当時を忠実に再現しています。最適な特性を得るため、真空管(EF86管)も専用の測定設備で慎重に選別されているそうです。
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