2018年9月21日、ベーシックの主催により、「働きかた2.0 -組織力・人材育成の観点により副業のメリットと課題-」が開催された。副業(複業)解禁元年とも言われる今年。副業を支援する企業として多くの知見を持つ登壇企業4社の発表内容からは、その実態と社会の変化に伴って求められる企業の変化を得ることができた。
持続的成長のための、イノベーションを生む多様性のある組織作りが必要
イベントは前後半に分かれ、前半は各社から事業紹介と副業に関する見解・分析が発表された。主催のベーシックからは同社の執行役員 CHROとして企業の働き方改革のコンサルティングを行ないつつ、リデザインワーク代表取締役でもある林 宏昌氏が登壇。そのほか、副業支援事業を行なう3社からビザスク 事業法人部 岡部 菜津子氏、ローンディール 後藤 幸起氏、コデアル 代表取締役 COO 愛宕 翔太氏が登壇した。
まず、ベーシックの林氏は“時代の変化”を取り上げ、なぜ今回組織力・人材育成の観点から副業を考えるべきか問題提起する。林氏は大きな時代の変化として「企業の寿命が短くなっている一方で、個人の労働者としての寿命は長くなっている。ここから、企業も個人も従来の働き方から変化する必要が分かる。1社で勤め上げるのではなく、少なくとも2~3社変わっていかないといけない時代に変化した」と話す。
こうした変化に加え、今後はAIの登場や更なる価値観の多様化なども、企業と個人の労働者のあり方に影響する。個人は複数の仕事を経験するたびに、職場や仕事内容に対応した学び直しが前提の働き方へシフトする必要があるし、企業は持続的成長を促すためイノベーションの起こりやすい環境づくり=多様性のある組織作りが求められるのだ。
「社員の過剰労働を助長するのではと副業・兼業を禁止する企業も多いが、これからは個人が自ら働き方を選ぶ時代でもある」と、林氏はそもそも従業員に対するマネジメントの考え方を変革する必要性を語る。企業にとって副業・兼業の解禁は、優秀な人材の確保やイノベーションの創出や企業ブランディングなど、多くのメリットをもたらす。新しい時代の働き方は、企業と個人がそれぞれに自立してメリット・デメリットを理解し、より対等な関係性の構築が進んでいくのかもしれない。
“日本的”労働の考え方を、新しい働き方の時代に合わせアップデート
企業間レンタル移籍プラットフォーム「LoanDEAL(ローンディール)」を運営するローンディールからは後藤氏が登壇。
企業間レンタル移籍とは、大企業の人材をベンチャー企業に出向させ、育成する仕組みだ。イノベーション人材、次世代リーダーの育成を目的に活用され、既に経済産業省やパナソニックなどで導入事例を持つ。
大手企業から出向した社員たちは、不足の多い環境であることが多いベンチャー企業で、その富んだ経験を存分に発揮する。その一方で、組織化されていない中でマルチタスクをこなすことによるスピード感や広い視野を得、正解がない中で自分で考える力や行動力・突破力を身につける。この過程は、自分の組織やそこで得られる能力を客観的に見つめる機会にもなる。
後藤氏曰く、「自分の能力を発揮できる場所は他にあるのではないかと考えることをきっかけに退職を考える従業員は少なくない。レンタル移籍を通じて物差しを得ることができれば、それが“隣の芝生は青い”だけなのか自ら考えることができる」と、レンタル移籍には人材育成以上の意味付けが可能だ。
LoanDEALは『日本的な人材の流動化を創出する。』をミッションに掲げているが、ここでいう日本的とは、長期的な能力開発、組織への愛着、また古巣に戻る美徳などを指す。
従来の社内に閉じたローテーションや、転職でしか叶わないキャリアチェンジや挑戦は、画一的なキャリア形成しか生まない。この課題から現在新しい働き方が求められているわけだが、LoanDEALは日本らしい労働の考え方を生かしながら、新しい働き方・人材育成の実現を目指している。
人が仕事に合わせるのではなく、仕事を人に合わせる時代へ
ハイスキル人材の複業プラットフォーム「CODEAL(コデアル)」を運営するCODEALの愛宕氏は、働き方の多様化している背景として3つの要因を語る。労働力の減少、インターネット環境の充実による働く場所の自由化、そして専業主婦が減少し、共働きが一般化したことだ。
他の登壇者の発表内容からもあるように、様々な社会的な要因により、もはや今後企業が多様な働き方に対応することは必須とも思える。ここでコデアル社が提案しているのは、事業フェーズごとに異なる事業課題に合わせて、タッグを組む相手を変化していくことだ。
愛宕氏は6000社のマッチング実績から得た知見から、「これまでは人が仕事に合わせて変化する時代だった。今後は個人によって仕事や働き方を変える時代になる。事業フェーズによって事業課題は変わっていくが、そのフェーズの課題解決に経験や強みを持つ働き方の人材を採用していくことで、生産性は上がるはず」と語る。
副業で得られる社外の客観的評価が、現職の仕事のモチベーションアップに
ビザスクは、ビジネス知見を持つ個人とそれを求める企業をマッチングするサービス「ビザスク」を運営する。ビザスクが、利用企業に提供するものとしては“企業の求める専門知識や知見を持った個人への1時間単位のインタビュー”だ。これをスポットコンサルと呼んでいる。
現在、新規事業開発のための効率的な調査などを目的に利用されているようだが、最近では「働き方改革」の動きを受け、組織改革のためのインタビューニーズも増えているようだ。元々はCtoCサービスだということもあり、飲食店の自営業者などの中小ベンチャー企業の事例も多くある。
同社の岡部氏によると、個人にとっても大きなメリットがあるという。
「個人の方にとっては、スポットコンサルを通じて自分の1時間に対価を得る場に臨むことで、ご自身のスキルの棚卸しの機会にもなり、大きな気付きをもたらすケースが多い。また、副業のハードルは一般的に高いものだが、スポットコンサルは1時間から始められるという時間の短さや、すでに培ったノウハウの提供であることから、手軽に始めることができる」
また、従業員が副業を始めることで、興味が社内から社外へ移り退職につながることを懸念する企業は少なくない。しかし、岡部氏曰く、インタビューを通じて自分の仕事や業界へ、第三者が強く興味を持っている場を経験することで、むしろ現状の自分の仕事へのモチベーションを得る方も多いようだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります