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F1レッドブル・レーシングの快進撃を支えるAT&Tのインフラ

1レースで400GBのトラフィック

 F1のエントラントであるレッドブル・レーシング。今シーズンはトラブル続きではあったがそれでも3勝挙げ、先日開催された日本グランプリでも3位表彰台と4位に入るなど好調だ。

 そんなレッドブル・レーシングの戦略を支えているのはAT&Tが用意するネットワークだった。AT&T(含AT&Tジャパン)はレッドブル・レーシングのイノベーションパートナーとしてインフラを提供している。

今回お話を聞かせていただいたレッドブル・レーシング テクニカルパートナーシップヘッドのZoe Chilton氏とAT&Tジャパン 代表取締役社長 岡 学氏

 F1の現場はそれこそコンマ数秒を競っており、それはコース上だけでなくピットでも激しい情報戦が繰り広げられている。レッドブル・レーシングでは車体には100のセンサーを搭載し、タイヤの空気圧を始め、シャシーの状態などF1マシンのありとあらゆる情報がリアルタイムにピットへと送られてくる。このスピード感に対応するために、レースシーズンを通して3万回の設計変更をし、レースとレースの合間には約1000回の設計変更を行なっているという。

 F1マシンを駆って戦うドライバーが注目を集めがちだが、(F1に限らないが)数多くのチーム関係者がそれぞれの役割を担っており、不要な人はひとりもいないのだ。

イギリスのファクトリーともリアルタイムで情報共有

 レッドブル・レーシングではサーキットだけでなく、本国イギリスのファクトリーにある「オペレーションセンター」にエンジニアが常駐しており、すべての情報はピット内だけでなくイギリスのエンジニアにも瞬時に共有される。そのため、1レースでやり取りをするデータ容量はなんと400GBにも上る。もちろん、ただ共有されるだけでなく常時データを解析し、ピットへフィードバックすることもある。たとえば、チームの戦略を組み立てるチーム代表のクリスチャン・ホーナー氏や、チーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューウェイ氏にサーキット全体の情報や、マシンのトラブルなどをすぐに伝えたりもする。

 コース上とピット、そしてイギリスのファクトリーとのやり取りに遅延は許されない。一瞬の遅れがその後の遅れすべてに繋がってしまうからだ。いまやF1はクルマやドライバーが速いのは当たり前、大事なのはその先なのである。

 そんな重要な役割を担っているのAT&Tのインフラだ。AT&Tはアメリカの通信キャリアであり、最近はタイム・ワーナー社を買収したことでも話題になった。日本法人のAT&Tジャパンはおもにエンタープライズ向けのビジネスを行なっているので、あまり耳にする機会はないかもしれない。

レッドブル・レーシングとAT&Tの関係

 レッドブル・レーシングとAT&Tのパートナーシップは2011年から続いており、ネットワークインフラやVPN、スタッフ同士が使うインスタントメッセンジャー、そしてデータセンターなどを提供している。これらの通信機器は、チームと一緒に世界のサーキットを移動しており、その都度インフラを用意しているというから驚きだ。

 通信に求められるのはデータの転送速度だけではない。もっとも重要な情報漏洩もAT&Tの技術で守られている。ピットとイギリス間はAT&Tが容易するVNPにより、セキュアかつ高速なネットワークを実現しているという。

 中国グランプリではセーフティーカー導入により、レース展開がガラっと変わったのだが、ピットに入るか入らないかという決断を10秒ほどでしないといけないシーンがあった。このときにイギリスのエンジニアがタイヤの特性を調べ、ピットインしたほうがいいと提案。チームはピットインを選び、ソフトタイヤに交換。それまで中盤グループを走っていたレッドブル・レーシングは、このおかげで一気に上位に躍り出て、最終的に優勝できたのだった。

 ネットワークが一瞬でも止まったり、ラグあったりすると即敗北に繋がるシビアな世界で、レッドブル・レーシングとAT&Tはただのパートナーではなく、それぞれの技術をサーキットに集結させ、ともに戦っている戦友なのである。

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