本連載は、Adobe Acrobat DCを使いこなすための使い方やTIPSを紹介する。第75回は、先日発表されたAcrobat DCの新機能について紹介しよう。
25年目を迎えるAcrobat Document Cloud登場以来の機能強化
2018年10月2日、アドビが「Adobe Acrobat DC」の新機能を発表した。タブレット向けアプリの大きなバージョンアップとAdobe Document Cloudを共有サーバーとして利用したクラウドでの共有レビュー、ウェブ版を含む各端末のUI統一、「署名用に送信」機能を電子サインサービス「Adobe Sign」に統一と大きなバージョンアップが目白押しだった。
新機能発表会では、日本でDocument Cloudのマーケティングを担当している同社Document Cloud マーケティング執行役員 北川和彦氏がAcrobatについて紹介した。
「Acrobatは今年で25周年になります。大きなマイルストーンとしては、2008年にPDFを磯(国際標準化機構)に譲渡したことがあげられます。3年前には、Document CloudということでAcrobatプラスAdobe Signでドキュメントワークフローのクラウドソリューションを発表しました。今回の発表は、その時以来の大きな新機能の追加になります」(北川氏)
北川氏は昨年まで15年間アメリカで働いていたそう。その経験から、日本はアメリカと比べると自分で時間をコントロールしながら働いている人が少ないと感じているという。アドビは「DESIGN Your Workstyle(働き方をデザインしよう)」をコアメッセージとしており、自分で時間をコントロールするのが重要だと考えているとのこと。
「新しいDocument Cloudで意識を改革していただいて、効率的に業務を進め、パーソナルな時間を楽しんでいただきたいと思っています。今回の新機能はこのあたりにぴったりくるものになっています」(北川氏)
コラボレーションや生産性を向上させる新機能
続いて、同社ドキュメントクラウドマーケティング プロダクトマーケティングマネージャー 昇塚淑子氏による新機能紹介が行なわれた。
「既存のDocument Cloudを構成する個々の製品やサービスがより整合性を持った形で緊密に連携することで、組織のコラボレーションや生産性を向上させるようになっています。今回、主な機能強化はモバイルとデスクトップのAcrobatになっています。われわれは、この機能強化により、PDFに対して抱いていた認識を刷新できると考えています」(昇塚氏)
1つ目の機能強化は「場所やデバイスの制約から解放」として、タブレット向けAcrobatアプリが大きく強化された。従来は最近使用されたファイルのリストが表示されていたが、新しいAcrobatのタブレット版では、「ホーム」タブが追加された。上部には、自分に送られている閲覧・レビュー依頼が表示されている。見逃さずにボールを打ち返せるので、仕事を円滑に進められるようになる。また、最近使用したファイルの一覧はリスト表示に加えて、サムネイル表示にも対応。ファイル名だけではわからない時に、ビジュアルで内容を判断できるようになった。
PDFの編集をタップすると編集モードに入るが、従来のようにテキスト部分が編集枠で囲まれないようになった。これからは編集したい部分をタッチすることで、編集枠が出る。また、入力済みのテキストを編集するのは簡単だったのだが、新たなテキストを入力するのはタブレットアプリではできなかった。それが、「テキストの挿入」から新規入力できるようになっている。地味だが、とてもありがたい機能だ。ちなみに、この機能はスマホアプリではオフになっており、端末を検出してわざとオフにしているとのこと。小さい画面で操作するのは難しいから、という理由のようだ。
2つ目が、クラウドベースのレビュー。従来からAcrobatは「注釈用に送信」機能で指定したサーバーを利用してレビューできたが、今回の機能強化でクラウドでも行なえるようになった。
「ツール」から「レビュー用に送信」もしくは右側に並ぶ「共有」アイコンから招待するユーザーと期限などを設定して、送信するだけでOK。Document Cloudのサーバーを利用して、複数人で文書のレビューが可能になる。PC版、タブレット版、スマホ版はもちろん、ウェブ版でも操作できるので、社外の関係者とも気軽にコラボできるようになった。
レビューはリアルタイムに行なわれ、複数人で同時に作業することも可能。文書業務の効率が格段に向上する。
3つ目は「境界を越えたコラボレーション」ということで、Document Cloudの主要なコンポーネントであるデスクトップとモバイルのAcrobat、ウェブのDocument Cloud Webの3つが、整合性のあるUX「ドキュメントハブ」を提供するようになった。どこで作業してもシームレスに操作できるのがメリットだ。特に、ウェブ版のDocument Cloud Webが使いやすくなっている。
加えて、承認プロセスが「Adobe Sign」と呼ばれるようになったという。従来、Acrobatの承認機能は「署名用に送信」という機能名だったが、「Adobe Sign」にブランドが統一された。Acrobat DCのフローに署名プロセスが組み込まれたことで、デバイスを問わず電子サインを活用できるという。
元号の変更にもスムーズに対応できる
2019年5月には元号が変更され、10月には消費税率の変更される予定で、多くの企業で利用している文書の修正が必要になる。大量の文書が散在しているうえ、探し出して修正して複数人でレビューするというフローをこなすのは困難を極める。しかも、消費税率はともかく、元号は直前にならないと公表されない。
Acrobat DCなら、どんな紙文書もスキャンしておけば検索できるし、多彩な編集機能で簡単に修正できる。今回紹介した新機能で、手軽にクラウドレビューすることもできる。保管場所も不要で、データの活用度も格段にアップする。ドキュメントワークフローに課題を感じている企業は、まずAcrobat DCの導入を検討してみてはいかがだろうか。PDFの閲覧ソフトというイメージが抜けない上司がいるなら、本連載のバックナンバーをお勧めしてほしい。
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