仮想の身体で動画配信などを行う「ヴァーチャルYouTuber」(VTuber)に代表されるように、ヴァーチャルな姿のタレント「VRタレント」が活動を本格化している。岩本町芸能社が手がけるVRアイドルユニット「えのぐ」による、専用劇場でのライブなどは記憶に新しい。
そんな中、また新たなVRタレントが注目を集めそうだ。「時田麻衣」と名付けられたその女性は、ヴァーチャルでありながらもファッションモデルとして活動中。Instagramなどの写真(イラスト)での姿がメインだったが、神楽酒造の焼酎「天孫降臨」のCMに出演し、動く姿も披露された。そして、9月20日~23日に幕張メッセにて開催される「東京ゲームショウ2018」に出展されるVRコンテンツ「呪刻教室」にも出演予定だ。
この時田麻衣が、これまでのVTuberやVRタレントと大きく異なるのは、一般にも受け入れられやすいよう、アニメっぽさをなくしてやや実写に近いかたちで描かれている点。現在、2次元的な可愛さを持ったVRタレントがほとんどである中、リアルとの架け橋になるべく、より3次元に近い姿で描かれているのだ。
そして、リアルを再現するために、さまざまな分野のプロがアドバイザーとして参加している。今回は、時田麻衣を制作する株式会社Forces11の代表 仁平孝佳さんを交え、スタイリストの柏木作夢さんと暗闇ボクシングスタジオ「b-monster」を運営する塚田美樹さん眞琴さん姉妹との対談、振付師のMAYUさんと剣士の竹田秀玄さんによる対談を実施。「ビジュアル」面、「動き」の面、それそれでのヴァーチャルならではの利点、実現が難しい点、リアルを追求するために必要なもの、などを語ってもらった。
【対談】スタイリスト 柏木作夢 × 「b-monster」運営 塚田美樹・眞琴
──今回、スタイリスト&ボディーメイクということで、ビジュアル面での話が中心になりそうです。とてもヴァーチャル向きですよね。 仁平:そうなんですよ。実は、「b-monster」さんではストリーミングでプログラムが受けられる「STREAM MONSTER」というサービスがあって、そのパフォーマー(トレーナー)として時田麻衣がぴったりだなと思っています。
塚田眞琴:STREAM MONSTERのお客さんを増やすために、そこにしか存在しないパフォーマーとして時田麻衣さんは適任だなと考えています。b-monsterはお気に入りのパフォーマー目当てでやってくるお客さんも多いのですが、時田麻衣さんがそうした人気パフォーマーになるといいですね。
──リアルなプログラムを伝えるツールとしての役割ですね。
仁平:しかも、いつでもシフトは入れられるし、疲れることもありません(笑)。
柏木:リアルを伝えるツールという点では、スタイリングの世界でも役立ちそうです。僕は衣装を作るときに二次元に近づけたいということがあります。デザインするときは女性像を思い浮かべて作るのですが、頭の中では二次元なんですよ。しかも、僕は男性なので、女性には自分が着たことがない服ばかり着せています。ということはその時点ですでにヴァーチャルなのかなって思います(笑)。
──VRタレントはスタイリングしやすいってことですね。
柏木:実際に誰かのスタイリングするとき、イメージに合う衣装が見つからなければ自分で制作してしまいます。ヴァーチャル上だとイメージしたままの衣装を着せることができるので、新しい可能性がありますね。面白いと思います。
塚田美樹:ヴァーチャルでしたら、完璧なモデルを作れますからね。人間が対象だと、どうしてもその人の特徴を生かしたりなくしたり、といった作業が必要になってきます。
──逆に、そういう特徴というかコンプレックスを作って、それを克服するためのファッションを教えたり、ボディーメイクを教えたり、といったことに使えますね。
塚田眞琴:ヴァーチャルだから、昔は太ってたとか、昔は猫背だったといったコンプレックスを作って、それを現在は克服していますというストーリーも作れますね。
塚田美樹:見ている方が共感できるものがあれば、より身近に感じますよね。
仁平:コンプレックスを持っている人をサポートするツールとしてVRタレントを使うってことですね。それは面白いと思います。もうひとつヴァーチャルとしての利点としては、新しいファッションとかグッズを試しやすいというのもあります。時田麻衣に服を着せたりグッズを持たせたりして、ヴァーチャル上で試して反響を見るってことはできます。b-monsterさんなら、トレーニングプログラムを試してもいいと思うんです。それで人気があったものを実際にプログラム化するとか……人間の代わりになるツールという位置付けで使ってほしいですね。
塚田美樹:b-monsterでは、パフォーマーに「プレデビュー」という試験があって、会員のみに公開しています。それを見ると、そのパフォーマーをそこからみなさん応援してくれるんですよね。当初は、「パフォーマーはかっこいい」というイメージを持たせたかったので、初期のころの姿を見せないほうがいいかなって思っていたんですけど、見せることで人気が出たことは驚きでした。時田麻衣さんも、「かっこいい」がコンセプトなんですけど、そうしたプレデビューを経て、パフォーマーになるといいかもしれないですね。そうするとよりリアル感が増して、パフォーマーとして人気が出るかもしれないです。
仁平:ヴァーチャルは完璧なものになれますけど、ただ完璧ではダメで、そこまでの過程が大事ってことですね。
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