今回、発表されたiPhone XSとiPhone XS Max、いろいろと取材を進めると、あらためて「アップルのすごさ」を感じる。もはや、「iPhoneを超えるスマホは誕生しないのではないか」という、ちょっとした恐ろしさを抱くほどだ。
何もiPhone XS Maxで20万円近くする値段のことを言っているわけではない。
アップルの「もの作り」、いや「仕組み作り」において、同じレベルで戦えるメーカー、プレイヤーはいないのではないかという気がしてならないのだ。
CPU、画像信号プロセッサ、OS、アプリと
すべてを垂直統合で提供できるアップル
では、アップル・iPhoneのなにがすごいのか。
端的にいって、アップルはiPhoneを「垂直統合」でつくっており、もはや他メーカーでは真似できない領域まで突き進んでいる。
アップルはiPhone向けの半導体「A12 Bionic」を自社でデザインしている。このA12 Bionicはスマホ史上初の7nmであり、電力効率の高さと業界最高クラスのパフォーマンスを両立している。
また、画像信号プロセッサ(ISP)やビデオエンコーダーもアップルが自社でデザイン。さらに写真や拡張現実アプリなどに使われるニューラルエンジンの処理も自社でコントロールしている。
たとえば、カメラから入ってきた被写体情報をニューラルエンジン、CoreMLで処理し、背景をぼかすといったことを、すべてアップルが開発したiOS 12のなかでできるのだ。
これが、他のAndroidメーカーとなるとこうはいかない。
もちろん、OSはグーグルが開発したAndroidだし、半導体はクアルコム「Snapdragon」がメインだ。それぞれがどんなに優秀であっても、これを組み合わせ、高いパフォーマンスを発揮させようと思うと、なかなか苦労するというのだ。
かつて、あるAndroidメーカーの人に話を聞いたのだが、その人は「うちはカメラの画質に自信があるが、AndroidのOSがアップデートされるたびに、画質の調整をする必要があり、それがとても大変。チップセットなどの組み合わせが変わることで、毎回、試行錯誤を余儀なくされる」とぼやいていたことがあった。
業界標準的に半導体はクアルコム「Snapdragon」だが、サムスン電子にはExynos、ファーウェイにはKirinという独自の半導体が存在する。その点において、この2社は他社に比べて、一体的に開発できるだろうが、OSはAndroidに任せっきりになるだけに、どうしても「ハードウェアと処理エンジン、ソフトウェアの一体開発」ができない状態にあるのだ。
自社開発の半導体で差別化するiPhone
そのことによる進化はまだまだ序章に過ぎない
ここ最近のスマートフォンの開発競争は、もはや行き着くとこまで行き着いた感がある。
ディスプレイは有機EL、カメラは2つ、画面の大きさは6インチ超、AIを用いた画像処理やユーザーインターフェースなどなど。スペックや機能を並べると、iPhoneもハイエンドなAndroidも違いはないように思える。
また、見た目のデザインも、各社ともホームボタンをなくし、フレームレスな筐体で、ノッチにフロントカメラを内蔵するというのが一般的となってきた。家電量販店のスマホ売り場で、各社のフラグシップモデルが並んでいても、どのメーカーのスマホかまったく見分けがつかない有様だ。
そんななか、アップルは昨年からGPUを自社開発に切り換えるなど、半導体で他社と差別化するという決断を下した。いまから1年前、iPhone Xを発表したとき、ティム・クックCEOは「iPhone Xは次の10年を見据えた最初のデバイスだ」と語った。
まさに、スマホの競争軸は「半導体」であり、自社開発の半導体と自社開発のOSを組み合わせることで、他社には絶対に真似のできないデバイスで勝負を挑んでいるのだ。
グーグルがクラウド上のAIで差別化を図る中、アップルはiPhoneというデバイスにこだわっている。
今回発表されたiPhone XSとiPhone XS Maxは、「iPhone、次の10年」が語られてから1年が経過したばかりのデバイスであり、これは序章に過ぎない。この先、iPhoneの「中身」の進化はまだまだ終わることはないだろう。
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