上位機譲りの技術で中高域のひずみが劇的に減った
OBERONシリーズが「抜けのいい声」を実現できる秘密は、ウーファーとツィーターのつながりの良さである。特に中高域のひずみの少なさは、直径29mmと大きなソフトドームツィーターの採用に負うところが大きいようだ。
このサイズは上位機のEPICON、RUBICON、OPTICONなどと同様。ソフトドームツィーターは通常25mm程度の直径で、ZENSORの26mmと比べても大きい。
ツィーターは高域を担当するユニットであるため、どの周波数まで高音が伸びるかに関心が行きがちだが、実際に担当するのは中域~高域であり、耳が敏感に反応する中音域も担当する。口径が大きくなると、低い周波数帯の再生時に余裕が出る。つまりツィーターとしては低い音域の音を少ない振幅で実現できる。結果、ひずみの低減につながるわけだ。
これに加えてボールピーストップにソフトフエルトの吸収剤を装着するなど、不要な音の反射を防ぐ仕組みを取り入れている。ここはある意味セオリー通りとのことだが、低価格製品では省かれることが多く真面目な作りであることの証明と言えそうだ。
高域についてもZENSORの22~23kHzに対して、32kHzまで伸びており、可聴域を大きく上回る、30kHz付近までほぼフラットな特性が得られるという。
同時にウーファーに関しても高い帯域のひずみを抑えている。ここも上位機のノウハウを取り入れている部分で、力強い低域を出しつつも重量増によって高域の沈みを抑える4層巻のCCAWボイスコイルや、電流の飛び込みで生じるひずみを抑えるSMCマグネット・システムなどを採用した。
低域をしっかりと出すためには磁気回路の強化が必要だ。OBERONでは、通常2層巻のボイスコイルを倍の4層巻にした。ただここで問題となるのが重量増だという。コイルの巻を倍にすれば力が増して、低域の再現は有利になるが、4層巻にするため電線の長さを増やせばインピーダンスも上がってしまうため、実際には線材の太さも倍にする必要がある。つまり「層の数が2倍なら、重量も2倍」ではなく、「4倍の重量増」になってしまうそうだ。その悪影響として「低域は出るが、上(=中域)が沈むユニット」になってしまうという。
そこでDALIではCCAWという銅被膜のアルミニウム線を使用している。銅に比べて比重が1/3程度の素材で、4層巻にした場合でも銅の1/2程度(つまり2層巻の2倍)程度の重量に抑えられる。
加えてSMCという「鉄と同じ磁気特性を持つ」が「電気を通さない」素材を粉末にしてウーファーのボールピース(マグネットの中心にある筒状の部品でここにボイスコイルを巻き付ける)の一部に塗布している。場所としてはボイスコイルの内側部分で、磁気回路内部で発生する磁気変調や渦電流を低減する効果があるという。ここもひずみを減らすための工夫で、300~400Hzの帯域で最大6dB程度の3次高調波歪の抑制ができたという。
スピーカーシステムとしてみた場合、1kHzの帯域で3次高調波歪が10dBも低く抑えられた。このあたりがスッキリと見通しのいい音の実現に貢献している。
なお、DALIの代名詞でもある、色のついた振動板=ウッドファイバー・コーンの成分もシリーズによって異なるそうで、OBERONではだいぶ暗い茶色になっている。リアバスレスポートは外側だけでなく内側にもアールが付いたもので、片側だけのものより、バスレフの風切り音を下げる効果があるが、ここも金型を新規に起こして制作した。
DALIはユニットの自社開発ができるブランドだ。OBERONの改善に関しては、ZENSORの世界的なヒットにより、同社の持つノウハウをコスト的な制約のある下位機種に落としていけた点が大きい。製造は、ZENSORの生産に合わせて立ち上げた、中国の自社工場で行う。
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