週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

バーチャルYouTuberを実際に始めようとして気が付いたこと

2018年09月10日 09時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集● ちゅーやん

 株式会社ドワンゴが運営するライブ配信・動画メディアのプラットフォーム「niconico」のプレミアム会員数が2018年6月末時点で200万人まで下がった一方で、これまで実施してきた「既存の基本機能改善による『画質・重さ 完全解決』」という“守りの施策”から新しい“攻めの施策”のフェーズへ移っているということは前回の記事で紹介したとおりです。

 その攻めの施策のひとつがいまライブ配信や動画メディアのプラットフォームで注目されている「バーチャルライバー(バーチャルYouTuber/vTuber)」と呼ばれるバーチャルキャラクターによるライブ配信が可能な仕組み。

 ドワンゴは、株式会社インフィニットループと共同で「バーチャルキャスト(Virtual Cast)」という「VR空間でバーチャルキャラクターに変身して、誰でも気軽にライブ・コミュニケーションできるサービス」を展開しています。

バーチャルキャストには高性能なPCとVRデバイスが必要

 「バーチャルライバー」と呼ばれるバーチャルキャラクターによるライブ配信は、VRデバイスを使うものと、iPhoneなどのスマートフォンを活用するものに大きく分類されます。

 ドワンゴが展開するバーチャルキャストは、前者のVRデバイス「HTC Vive」や「Oculus Rift」「Windows MR」を利用します。

 WEBサイト内にある「はじめてのバーチャルキャスト」ページによれば、「HTC Vive」でこの仕組みを実現するには下記の「VIVEが推奨するシステム要件」と「バーチャルキャストが推奨するシステム要件」を満たす必要があります。なお、バーチャルキャストは「Oculus Rift」や「Windows MR」にも対応していますが「HTC Vive」が一般的のようです。

Viveが推奨するシステム要件
(1)VRデバイス「HTC Vive」
(2)Viveを動かすための推奨スペックをもつパソコン
(3)ソフトウェア「Steam」
(4)ソフトウェア「SteamVR」
(5)Steamのアカウント

バーチャルキャストが推奨するシステム要件
(6)ソフトウェア「バーチャルキャスト」
(7)「(2)」に加え、「バーチャルキャスト」を動作させるためにWindows 10および64-bitバージョンのパソコン
(8)インターネットに接続できる環境(下り5Mbps以上・上り15Mbps以上を推奨)

 さらに、ニコニコ生放送のほか、YouTube Liveやツイキャス、Twitch、OPENREC.tvなどのプラットフォームでライブ配信するならば、バーチャルキャストから出力された映像をキャプチャー(取り込み)して配信するために「OBS Studio」などの配信ソフトが必要です。

 バーチャルキャストを動作させるパソコンでライブ配信を兼ねるのもいいですが、普段以上に高負荷が予想されるため、より高いスペックのパソコンが必要となるかもしれません。可能ならば、バーチャルキャストを動作させるパソコンと、ライブ配信をさせるパソコンは別々にするのが理想的です。

「リアル世界との融合」もより楽しい

 バーチャルキャストは自分でライブ配信せず、バーチャルキャスト上にあるほかの配信者のスタジオに乱入する「凸」という機能を使うことも可能です。ただ、基本的にはバーチャルキャラクターとバーチャル空間背景がセットになった映像を出力し、「OBS Studio」などの配信ソフトで取り込み、ライブ配信するほうが主な楽しみ方となるでしょう。

 さらに、このバーチャルキャラクターとバーチャル空間背景がセットになった映像をビデオスイッチャーなどへ取り込み、グリーンの幕の前に人が立つ映像をクロマキー合成で重ね合わせれば「リアルな人がバーチャルの世界に立つ」空間を創り出すこともできます。

 また、背景色をグリーンにしたバーチャルキャラクターの映像を出力して、合成で重ね合わせれば「バーチャルキャラクターがリアルな世界に立つ」という逆空間も可能です。

 ただし、「バーチャル世界で完結する」空間より「リアルな人がバーチャルの世界に立つ」「バーチャルキャラクターがリアルな世界に立つ」空間を創り出すには、VRデバイスを動作させるための知識やVRデバイスそのものの操作の知識、ライブ配信するための知識だけでなく、空間を重ね合わせるためのクロマキー合成のテクニックが必要です。

まだまだこれからの市場だからこそ今後に期待したい

 HTC ViveやOculus RiftのようなVRデバイスを活用したバーチャルキャラクターによるライブ配信の仕組みは、VRデバイスを購入するために5〜7万円程度の投資だけでなく、VRデバイスを動かすための高性能なパソコンを必要とするなどの大きなハードルがあります。そのぶん、腕を上げる、モノを掴む、モノを投げるなど動作ができ、バーチャルキャラクターの表現度が多彩です。

 その一方で、顔を傾けたり、ウインクしたり口元が動くなど表現度が少し制限されるものの、iPhoneなどのスマートフォン一台で手軽にバーチャルキャラクターに成りきれるライブ配信の仕組みも広がっています。

 前者のVRデバイスを活用したバーチャルキャラクターによるライブ配信はなによりも要件を満たすためのハードルが多いです。手軽さという面だけで考えれば、後者のスマートフォン一台でバーチャルライバーになれる仕組みのほうがVRデバイスを必要としないため一般の人たちも楽しめるものとして広がっていく可能性は高そうです。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事