ネット通販でおなじみのAmazonは、8月29日よりスマートフォンでQRコードを表示するだけで、実店舗での代金支払いができるキャッシュレス決済サービスを開始した。ECサイトで使われているAmazon Payの実店舗版である。Amazon.co.jpのアカウントを持つユーザーなら誰でも、Amazonショッピングアプリで表示されるQRコードを使って、飲食店や美容院などで代金の支払いができる。サービス開始時点での対応店舗は数十店舗だが今後急激なシェア拡大が予想される。実店舗での決済はタブレット端末を使用して行なう。そのタブレット端末の提供はAmazonと競業関係にあるNIPPON Tablet社によって行なわれる。
コネクテッド・コマースによるチャネルの垣根を超えた購買体験を実現
サービス開始に先立って8月28日に行なわれた記者説明会では、Amazon Pay事業本部 本部長の井野川氏とNIPPON PAY代表取締役社長 兼 CEOの高木氏が登壇し、サービスの概要やメリットの説明、利用シーンのデモンストレーションなどを行なった。
そもそもAmazon PayとはAmazon以外のECサイト上で、Amazonのアカウントを使って商品代金の決済ができるサービスだ。
今回の実店舗でのキャッシュレスサービスは、Amazon Payの目指す「コネクテッド・コマース」という取り組みの中のひとつ。デバイスや場所を問わずにAmazon Payを使った決済を行なうことで、利用客に対してより良い購買体験を提供する。導入店舗からすると、Amazonのアカウントを持つ客を自店舗の客として取り込みやすいメリットがある。しかも素早いキャッシュレス決済で商品を買いやすい環境が構築できる。
中・小規模店舗や個人商店に安価でAmazon Payを導入するNIPPON Payの戦略
実店舗でのAmazon Payの普及には、店舗側の対応が必要不可欠。決済に使用するタブレット端末は、NIPPON PAY社の100%子会社であるNIPPON Tablet社が提供する。NIPPON PAY社はAmazon Payの公式認定制度「グローバルパートナープログラム」のパートナーであり、決済ソリューションを提供する企業である。その子会社のNIPPON Tabletがタブレット端末の提供を行なうという形だ。
NIPPON Tabletは、中小規模店舗や個人商店などの120万店以上にものぼる「レジ未更新市場」を開拓する戦略を立てている。決済に使用するタブレット端末が無料レンタル可能で、しかもAmazon PayとNIPPON Tabletの同時申込で決済手数料が2020年末まで0%になる。また2019年からは売上金が翌日に入金されるサービスも提供予定だ。
カード決済や電子マネー決済を導入したくとも、対応端末の購入費用や決済手数料が足枷となっている中小規模店舗や個人商店には垂涎の条件と言ってよいだろう。
新規アプリのインストール不要という垣根の低さがキャッシュレス普及のカギか?
QRコードを使ったキャッシュレスの決済サービスは決して目新しいものではない。中国のWeChat PayやAlipayは世界中に普及し始めているし、日本国内でもLINE Payや楽天ペイ、Origami Payなどがサービスを提供している。そんな折、ショッピングアプリを起動しさえすれば利用できるAmazon Payは利便性もさることながら、過剰なポイントサービスなどによる経済圏形成がないため公共性が高く、キャッシュレス普及への貢献度が高いといえる。利用可能店舗の拡大に期待が止まらない。
関連リンク
Amazon Pay公式サイト
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